5) 転生したら女の子だった件・2
半年過ぎた。
この世界の太陽、マジで容赦ねえ。
アマンダは手の甲で汗をゴシゴシ拭って、ぱっと飛ばす。
ニヤリと笑った。
日焼けで白い肌が完全に隠れた。これで完璧だ。
昔はただの飾りだった手。
今じゃゴツゴツしたたこができて、力強くてしなやか。
埃っぽい交易村の通りを、ズンズン歩く。
手にはリンゴの籠。
腹減ったから?
んなわけねえ。
これ、最強のカモフラージュだ。
どこでも行けて、なんでも聞ける。
元検事補佐の頭脳は、情報ガンガン吸い込む。
値段、噂、借金の絡み、裏のバトル。
全部頭の中でキッチリ整理。
この世界、一生続く裁判みてえだ。
そして俺は、転生した瞬間から――
この裁判をガンガン進めてる。
――いきなり。
鍛冶屋の近くで、切ねえ泣き声が響いた。
人がワラワラ集まってる。
真ん中には、村中のジジイ、オルデン。
対するは顔真っ赤にした製材所のボス、ガート。
「泥棒ジジイ! 金どこやった!?」
ガートがぶっ壊れた鉋機を指して吠える。
「誓うよガート、俺は直そうとしただけで……壊れちまったんだ! 金なんかとってねえ!」
オルデンの声、ガタガタ震えてる。
群衆がザワザワ。
強い方の味方につく。
――いつもの群れのルール。クソ不公平。
そのとき。
「彼、本当のこと言ってるよ」
静寂をぶち破る声。
みんな一斉に振り返る。
金髪で華奢、リンゴの籠持った少女。
ガートが鼻で笑う。
「アマンダ? ママのとこ帰れよガキ。お前の出番じゃねえ」
アマンダはズイッと一歩前へ。
赤い目で壊れた鉋機、ガートの顔、オルデンをサッと見回す。
これはただのケンカじゃねえ。
事件だ。
「この鉋機、中心軸がすり減って自然に壊れた。
オルデンが最後のトドメ刺しただけ。
悪くねえよ」
ガート、一瞬固まる。
でもすぐ胸張って反撃。
「じゃ金はどこだ! 五枚の銀貨!」
「取ってねえって。
お前、昨日賭けサイコロで全部溶かしたろ。
製粉所の納屋裏、日没後。
バッチリ見ちゃった」
――シーン。
ガートの顔、真っ白。
誰かに見られてるなんて想定外。
ましてや熱病後に急に賢くなった、この静かなガキにブッコまれるなんて。
「て、てめえ……嘘だろ……」
目にビビった獣の色がモロバレ。
「古の神々が聞いてるよ、ガート。
お前の斧にかけて、俺が嘘ついてるって誓える?」
偽りの誓いは鉄が火で焼かれるって、村の言い伝えだろ。
ガート、完全に折れた。
ブツブツ呪いながら後ずさり。
話はそれで決着。
オルデンが鉋機を直す。
ガートは借金の話、なかったことに。
脆い「真実」が、一瞬だけ勝った。
夜、帰り道。
村の長老が追いかけてきた。
顔がマジで深刻。
「アマンダ」
「お前、熱病以来……変わったな。
目が見えすぎてる」
胸の奥がキュッとなる。
怖くねえ。
次の事件前の、いつものゾクゾクだ。
「問題が起きた。
家畜が盗まれた。
隣村に続く足跡がある……
でも、なんか単純じゃねえ。
お前の目が必要だ」
アマンダは黙って頷く。
心臓の奥――いや、もっと深いところ。
ヤマダ・ライトの魂が、ドクドク高鳴る。
興奮だ。
複雑な事件を解き明かす、あの味。
正義の味。
「明日、見てくるよ、長老」
シンプルに答えて、家に向かって歩き出す。
風が金髪をバサバサ揺らす。
表向きはアマンダ、エレナの娘。
でもこの華奢な体に詰まってるのは、鋼の意志と頭脳。
俺はただ生き延びたんじゃねえ。
戦場を見つけた。
剣じゃなく、言葉と観察力で戦う。
スカート履いた検事。
運命の皮肉、クソ苦えけど、ちょっと甘い。
「いいぜ、世界」
唇に薄く笑みが浮かぶ。
「見せてみろよ、どんなもんか」
その瞬間――
どこか遠く、別の場所で。
誰かが、同じ言葉を呟いた。
『――見せてみろよ、どんなもんか』
地面が、わずかに震えた。
この未知なる物語の旅路に、
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何卒、宜しくお願い申し上げます。
……次の章へ、ほんの少しだけの間。
どうか、そのままでいてください。
すぐに、約10分後にお届けします。




