32) 静かな殺戮(しずかなさつりく)
馬車、移動式の要塞オフィス。
森の道、スムーズに進む。
車内、疲れとイラつき。
ムード、漂う。
ランデル公爵、赤い木材のシート。
ピカピカ、磨き上げ。
ドスン、背を預ける。
窓の外、松の木。
チラチラ、流れる。
ぼーっと、眺める。
「いまだにわかんねぇ。」
声、低く唸る。
「なんで俺が、わざわざ辺境男爵どもの集まりに顔出さなきゃなんねぇんだ?」
隣の連れ、グチる。
「3時間、牧草地の2マイルでガタガタ。ペン一振りで終わる話。首都から出るなんて、アホらし。」
向かいの席、騎士。
旅装の鎧、しっかり。
顔、シワ。
何十年もの奉仕、刻む。
ゴドフリー卿、公爵の衛兵隊長。
長い付き合いの親友。
「政治ですよ、閣下。」
ゴドフリー、疲れた笑み。
「たまには顔、必要です。自分たちの公爵、忘れてないって。見せてやらないと。命令書より、熱血バカどもの頭、冷やすんですよ。」
「熱血バカ、ね…」
ランデル、フッと笑う。
自信と皮肉、いつも満ちた顔。
一瞬、マジで真剣。
「時々、思うんだ。」
声、低くなる。
「この国、全部、でっかい熱血バカの塊。いつ爆発しても、おかしくねぇ。父上の命令…最近、意味わかんねぇ。税金上げろ、交易は制限しろ。まるで、水よこせって喚きながら、川、せき止めてるみてぇだ。」
「宮殿、ムカデの巣窟ですよ。」
ゴドフリー、頷く。
「連中、首都の壁の外、見ちゃいねぇ。自分たちの汁でゴソゴソ。閣下、軍より、父上の座、奪ったほうがいいんじゃないですか?」
「まだ早ぇ。」
ランデル、暗い声。
ピシャリ、締める。
窓の外、灰色の空、切れ端。
じっと、見つめる。
「それが問題だ、親友。この『まだ』、長すぎる。感じねぇか? 空気、嵐の匂いだぜ。」
その通り。
比喩、だけじゃない。
マジで。
ひんやりした風、松の香り。
それだけじゃない。
かすかに、冷たい金属の匂い。
雨の前触れ。
『囁く短剣の森』。
ピタッ、静まり返る。
嵐、待ってるみたい。
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馬車、忠実な騎士の小隊。
道、狭くなる。
両側、ギッシリの茂み。
ゴロゴロ、岩。
待ち伏せ、ピッタリの場所。
ランデル、急に背筋、ピンッ。
ダルそうな雰囲気、消える。
跡形もない。
危険、嗅ぎつけたハンター。
ビシッ、緊張感。
「ゴドフリー…」
声、低い。
「感じます、閣下。」
隊長、音もなく剣の柄。
鋭い目、サッと岩場の頂上、睨む。
だが、遅い。
ヒュッ――葉っぱの擦れる音。
静かな whistle。
崖の上、細い鋼の矢。
ズバッ、先頭の衛兵、胸。
突き刺さる。
即死。
男、叫ぶ間もない。
グシャッ、鞍から崩れ落ちる。
その瞬間――
地面、湧き上がる。
岩の裏、木の影。
ドロと樹皮色の迷彩マント。
奴ら、一斉に現れる。
動き、音なし。
キレッキレ。
マント、紋章なし。
だが、武器、戦い方。
ランデル、一瞬でわかる。
帝国のエリート暗殺者。
「『深紅の爪』だ!」
ゴドフリー、剣を抜く。
ガッ、叫ぶ。
「武器を取れ! 公爵を守れ!」
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虐殺、始まる。
静か、効率的、容赦ない。
ランデルの従者――
勇敢、だが、奇襲、備えなし。
騎士、次々、やられる。
帝国の暗殺者、冷血。
雑草、刈るみたい。
護衛、切り捨てる。
メインの獲物、迫る。
ランデル、剣、握る。
馬車のステップ、立つ。
顔、恐怖じゃない。
燃える怒り、歪む。
一撃、また一撃。
攻撃、弾き返す。
剣、空気、裂く。
キラッ、死の弧。
だが、わかる。
敵、多すぎる。
戦い、じゃない。
屠殺だ。




