29) 闇に芽吹く光
一週間。
光と闇、絡み合う。
複雑なダンスのよう。
アマンダ、二つの顔を使い分ける。
その切り替え――彼女の最大の武器。
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フェニックスギルド。
薬草とオゾンの匂い。
無菌のホール。
アマンダ、そこでは「天才」。
ロレンツが見つけた、貴重で奇妙な存在。
「ひらめき」を提供する。
今、より巧みに。
地元の民話、魔術の要素、織り交ぜる。
異質さ、薄める。
軽い傲慢さ、距離感。
仮面をまとう。
風変わりな天才の評判、煽る。
だが、ロレンツ、気づき始める。
彼女の頻繁な「インスピレーションのための散歩」。
ある日、出口で呼び止める。
「アマンダ、君の影が長くなってるよ。」
目、探るよう。
「帰ってくるたびに、埃と…金属の匂い。君の『ひらめき』、その散歩と関係があるんじゃないか?」
(まずい。)
アマンダ、目を逸らさない。
「天才的なものはみな、汚れの中から生まれるんですよ、マギスター。」
軽く切り返す。
「どんな美しい花も、土から芽吹く。私はただ、新しいアイデアの土を探してるだけです。」
ロレンツ、彼女を解放する。
だが、その目に――
疑いの影。
(時間、足りない。)
彼女に不利に、動き始める。
影の中で:魂の塑形
毎日、アマンダ、倉庫に来る。
レオ、最初は猜疑の目。
鋭い、刺すような視線。
だが、次第に――
守勢、緩む。
アマンダ、「優しさ」を押しつけない。
ただ…一貫してる。
食料、きれいな水。
過酷な訓練で痛む筋肉に、シンプルな軟膏。
効果的だ。
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指導、厳しい。
だが、公正。
「恐怖はいいものだ。」
薄暗闇、無音の移動を練習。
アマンダ、言う。
「感覚を研ぎ澄ます。でも、君たちはその奴隷じゃない。支配者だ。君たちの恐怖は、敵の恐怖になる。」
エリスに、即座の成果、求めない。
時折、そばに座る。
静かに、関係ない話。
屋根を渡る風の音。
雨の匂い。
影の形、変わる様子。
(返事、期待しない。)
エリスに教える――
隠れたままでも、世界を感じること。
少しずつ。
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ある日、突破口。
レオ、複雑なバランスの訓練。
足、滑る。
木箱に激しくぶつかる。
アマンダ、何か言う前。
隅から、掠れた声。
使われていない、弱い響き。
「レオ…?」
衝撃の沈黙。
レオ、目を見開く。
固まる。
エリス、彼を見つめる。
虚ろな目に、亀裂。
小さな、かすかな――
心配の火花。
アマンダ、拍手しない。
微笑まない。
ただ、当然のように頷く。
「いいね。」
声、静か。
「これで、君が何のために戦うか分かっただろ。」
レオを見る。
「そして、君が守るべきものが何か。単なる妹じゃない。彼女の、戻りつつあるその部分だ。」
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その瞬間、すべて変わる。
レオ、燃えるようなエネルギー。
集中、鋭い。
訓練に臨む。
エリス、殻から少しずつ。
言葉、発しない。
だが、ジェスチャーで指示に応じる。
動きに、意識が宿る。
アマンダを、隠さず観察。
かすかな興味の目。
(戻り始めた。)
ある晩、訓練の後。
休息。
アマンダ、すぐには去らない。
木箱に座る。
一本のロウソク、炎を見つめる。
「もうすぐだ。」
突然、彼女の声。
「君たちに武器を渡す。単なる刃じゃない。…もっと大きな何かだ。」
目、二人を捉える。
「それは君たちを変える。想像もできないほど強くする。でも、代償――君たちの昔の人生、完全に死ぬ。君たちは幽霊になる。私のために動く影だ。それでもいいか?」
レオ、エリスを見る。
エリス、ゆっくり、だが確実に頷く。
アマンダから目を離さない。
「いい。」
レオ、固く答える。
選択肢、ない。
(だが、今、理由がある。)
アマンダ、頷く。
彼女の「柵」、ほぼ完成。
あとは「槍」を渡すだけ。
時、刻一刻と近づく。
アイロンヘイヴンの壁の向こう。
ランドール公爵、無知な最後の数週間。
謳歌してる。
(私の時、迫ってる。)




