厄介ファン
◇⬛︎⬛︎・代行者自室◇
「先輩なんか嬉しそうっすね? キモイっすよ」
「クフフ、顔に出てました? それはそうとして先輩にキモい発言…お仕置きですね」
「い、いやそれは…」
「やってしまった」と落ち込む後輩の黒の仮面を被った女性に対して同じく黒の仮面を被る男性が笑いながら話す。
「今日は良いでしょう、今はは機嫌がいいのでね」
「何かあったんすか?」
「いや〜、私は大罪の…いや暴食様の大ファンでしてねッ! 話せば長くなりますよ?」
またもや「やってしまった」と落胆する後輩だが、それはそれとして少し興味があるので話を聞くことにした。
いやどちらにせよ後輩に拒否権は無いのだがその返答を聞いた仮面の男は大きく笑い、過去のことについた話し出した。
「これはまだ神や悪魔が争ってた時代です。まだ貴女は存在していない時代ですね」
「そんな大昔のこと知りませんよ…え、先輩ってもしかして結構ご年齢を──」
「そんな昔の出来事なのですが」
仮面の女の言うことなど気にせず言葉を遮り話を続ける。
どうやら相当愛が強いようでその日は丸ごと暴食の話をしたと言う、流石に途中で後悔した仮面の女だが時はすでに遅く最後まで聞くしか選択肢は無かった。
本当に長いので要約すると昔の大戦で人間陣営に加担していた仮面の男は大罪になど興味は無く、ただその時は人間に興味を持っていたので参加したただの気まぐれだった。
だがその戦場で出会ったのは時には前線で人間を食い殺し、時には後衛に回って指揮を出す。
そんな彼女の姿を見てからは自分でも訳が分からないほど夢中になっていてその時のことは鮮明に覚えている。
そんな彼女と戦うのが毎日の楽しみだったが戦争は神側、つまりは本来自分が属するはずの陣営が勝ち悪魔は地上の下にある大地に封印された。
一部の悪魔や大罪はその封印を逃れたことを知って歓喜したがその約1000年後に彼女が同じ大罪にやって封印されたと言う情報が入り、再び落胆したがまたその600年後に神達が一斉に堕落、ならばと神に転移者を使った賭け事を提案。
当時堕落していた神々はそれを了承し数100年に一度開かれるお祭り騒ぎになった、そして神が完全に堕落し切った今の時代に親愛なる彼女が封印されたダンジョンに義体となりうる存在を転移させた。
『皆さまお目覚めでしょうか?』
そしてその今の時代に当てはまったのが蓮兎達だと言う。
「ぐぅ…ッ?! 終わったっすか!」
「おや、寝ていたのですか? これは初めから語り直さないとダメですね…えぇこれはまだ神と──」
「大丈夫っす!」
「そうですか? 聞きたくなったらいつでも言ってくださいね、仕事をサボることも許しましょう」
1日中語られて戦闘していたわけでも無いのに満身創痍な仮面の女はもう眠たかったが初めに言っていたことを思い出してその疑問を解消するべく、仮面の男に話しかけた。
「それで何で笑ってたんです?」
「私は暴食様は好きですがその義体となっている蓮兎くんにそれほど興味が湧かないのです。なので精神を壊してから暴食を私の支配下に置きたいッ! だから今保険として使っていた傀儡を派遣したのですよ、彼のお仲間を模ったね」
画面の下でニヤリと意地悪な笑顔を浮かべるがその笑顔は誰にも見られず終わった。
若干仮面の女は引いているが特にその後会話することもなくその場を後にし、自身の仕事に戻るよう言われ、嫌々仮面の女は職場に戻ったと言う。
◇オルグス大迷宮・87層◇
「百鬼夜行…? 百鬼…」
「バグでも起きてんのか?」
よく考えればそうだよな、外見、スキル、声、武器、魂全て同じな訳が無い。
魂は俺が食べたし、どうやって再現したかは知らないが触れて分かった。こいつらの魂は空っぽだ。
中身に何も詰まってない側だけの魂、そんなんじゃバグも起きるに決まってる、本来あるはずの肉体と魂のセットの片方が欠如しているんだからな。
「魂ノ採取」
カランッ
体力を削ったところで魂ノ採取を発動、そうすると傀儡はただの木版となってその空っぽの魂と共に消え去った。
「…鏡花が起きる前で良かった」
一応小音結界で音は殺してるが万が一起きた時はショック受けるだろうしな。
そう言う意味では傀儡が消えてくれて助かったのかもしれない。
「ん…どうしたの?」
そんなことを考えていると鏡花を起こしてしまった。
何事もなかったかのような笑顔をして2人で朝ごはんを食べる、要らぬ心配はさせたく無いし悲しむ顔なんて最も見たく無いからな。




