血の孤城
「威力は高い、だがその場から動かないならッ」
「劫火球──」
ジュバッ
縮地で距離を詰めた蓮兎になす術なく首を切断される王。
特に生き返るなどのギミックは見当たらず、そのまま次の階層に続く扉が開いた。
「…本当に終わり?」
「嵐の前の静かさとかにならなければ良いんだけどね、心配しすぎかな?」
「いや本当にそれになる可能性あるぞ、80層ボスなのに弱すぎるし」
魔法の威力は高いが連携がダメダメだし、もっと前衛と後衛で役割を持たせて補助魔法を使うとかさ?
それじゃ無くても劫火球以外の魔法で援護も出来ただろ、そんなに範囲と威力の高い魔法は前衛との連携で必要無い。
『本来より弱体化してる…? でも理由が無いよな、何故だ?』
暴食も理由は把握して無いか…
当たり前ではあるが残念だな、俺達の地上の知識やこのダンジョンの知識は暴食頼りになってるからな。
「まぁ素材を取って進むか、あと20層だけだし」
「うん! もう80層なんて早いね、蓮兎くんと合流したのは20層らへんだっけ?」
「そうだな、確か…14層かな?」
あの時とは見違えるほど強くなった、権能もそうだが俺自身の戦い方も変わったし…
性格はあれだが暴食には感謝してるよ、どうせこれも盗み聞きしてるんだろ?
『チッ、バレたか』
『結構一緒にいるんだ、舐めんな』
それより早く素材を剥ぎ取るか、魂の回収もしたいし…
百鬼夜行で質の良い魂は使うからな、次の階層で使ってみようかな?
「魂ノ採取」
◇オルグス大迷宮・83層◇
「百鬼夜行」
蓮兎は固有スキル百鬼夜行を発動、城の中を屍で埋め尽くした。
引き続き黒をベースとした城内は瞬く間に地獄と化し、新登場した吸血鬼の生き血を啜らせる。
「鏡花、トドメを頼む」
「悲しい愚者には制裁を!」
さすが吸血鬼だな、何度殺しても白魔法か心臓を完全に潰す以外じゃ完全には死なない。
百鬼夜行で心臓を仕留めるのは厳しいから俺たちは白魔法に頼ることにした。
「よし! レベルアップ!」
「最近俺はレベル上がらなくなってきたな…」
「それほどレベルが高いんだよ、良いことだ!」
まぁレベルが高いのは良いことだが経験値が分散するのは良く無い、俺は良いが鏡花のレベルが上がらないのは致命的だ。
ステータスアップにスキルポイントの獲得などレベルアップによる恩恵は大きい、それを受けられないとなると力の差が開いてしまうからな。
「血の槍!」
「黒域」
飛んでくる魔法は全て黒域で対処、媒体が血液だからなのか魔力を奪ってもその場で血となって飛散する。
こいつらの固有スキルに血液支配とか言う不穏なスキルがあるので血との接触には気をつけて戦う。
「鏡花、レベル上げだ。頑張れ」
そう言い俺は隠滅の霧を発動、自分の姿を消した。
「蓮兎くん?!」
「何をよそ見しているッ!」
血液でできた剣を使って吸血鬼が攻撃を仕掛ける。
だがその攻撃をひらりと避けた鏡花は零距離の白の爆風を発動し、自身には回復を、吸血鬼には致命傷を与えることに成功する。
「血の槍ッ」
吸血鬼は吹き飛びながらも魔法を発動するが、狙いの定まっていない攻撃など避けるのは容易く、そのまま魔法での追撃を許してしまった。
「かはっ!」
「ふぅ、1人で倒したぞー!」
鏡花の脳内にレベルアップのファンファーレが鳴り響き、ステータスが上がる。
時間は少しかかったが鏡花には十分な実力は持ち合わせているらしい、そのことが分かった蓮兎は再び姿を現して鏡花を褒めた。
「良くやったな、厳しそうだったら援護したのに」
「流石にこのくらい出来なきゃ足手纏いだもん! 固有スキルがなくても楽勝!」
鏡花は自慢するようにガッツポーズをする。
それを見て微笑んだ蓮兎は少しの間沈黙してから鏡花に話しかけて次の階層に進むため、足を動かす。
「あ、待ってよ〜!」




