地獄脱却
◇オルグス大迷宮・48層 大罪の祠入り口◇
「お、蓮兎君おかえり〜!早速だけど魔力補給してくれ〜!」
「おっけ、今やる」
合流して早々に魔力補給を済ませる。相当魔力が枯渇していたのか命の雫流れ落つるが破損しかけていた。あと少しでも魔力補給が遅ければ結界が完全に破壊されるところだったかもしれない。
「遅かったな、何かあったのか?」
「それが変な傀儡に喧嘩売られてさ、速攻片付けてきたけど少し時間食った」
「変な傀儡…愚者の間だっけ?あそこに居た人形さんとは違うの?」
「見た目は似てたけど少し違ったな、戦闘スタイルも戦力も」
鑑定眼は使っていないが固有スキルを使う気配も無かったし未所持なのだろう、流石にここまで成長すれば固有スキル無しには負けないぞ?多分だけど…
「それより早く毒ゾーンを抜けないとな、食事とかに支障をきたす」
あと早く権能の説明を安全な場所でゆっくり鑑賞したい!まだ一個前の権能【吸収】も使い慣れて無いのにスキルの追加が多すぎるッ
『ここから先はステータス強化が主になるから安心して実験してろ、70階くらいにならば【統合】を渡せるかもしれんし』
『スキルとスキルをくっつけられるやつか!スキル欄の整理をしたいから早めに欲しい…』
『んなら早く攻略進めるんだな』
現在の皆の実力を加味すれば本来70層まではそれほど苦戦せずに攻略が可能だろう、だが問題なのは神からのペナルティだ。50層以降のモンスター強化の倍率がどれ程なのか不明なのだ。
◇オルグス大迷宮・48層 出口◇
「やっと次の階層だぁ〜!」
蓮兎達は毒地獄を乗り越え、49層に続く階段にたどり着いたのだ。道中に毒無効のモンスターに追われたり、毒素が風になって領域内に無理やり侵入してきたり、魔力が枯渇したりと苦難を乗り越えやっとの思いで辿り着いた。
「新鮮な空気〜!多分新鮮だよね?でもここ地下だし…てかさっきまで毒地獄だったし…」
「細かいことは気にしないで良いだろ!少しの毒なら問題無いし。それは鏡花は素で状態異常耐性あるじゃん」
最近判明したのだが、鏡花の固有スキル慈愛の左手には自身に自然治癒能力強化、状態異常耐性が付与されていることが分かったのだ。スキルの説明欄には載っていない隠しスキルと言うやつだ。
「俺にもそんな隠しスキル無いかなぁ…最近出番無いよ?百鬼夜行」
「竜の死体操ったんだろ?十分戦力になるだろ」
「ワンパンしてたお前が言ってもなぁ…何だよあの蹴り、人が出していい火力じゃ無いだろ」
轟脚のことか、竜をワンパンなら45階層の事かな?確か葉竜とか言ったか、魔法攻撃力は高かったが防御力が低かったからな…ちなみにスキル獲得は無しだった。
「スキル獲得のためにも早くボス部屋行くかぁ!毒はうんざりだし、早く50層行って毒から解放されたい」
「50層と毒だったり…」
「そしたら鏡花に全フロア浄化してもらう」
「私?!」
雑談を交えながらも49層攻略がスタートした。
(これがアニメだったら一方その頃、とか入らんかな)
◇帝都ゲルバド・蓮兎達が召喚される前日◇
ここは帝都と呼ばれる軍事国だ。街は王に支配され、逆らった者は即刻反逆罪として斬首される程に支配が進んでいる国でもある。そんなこの国にも数十年に一度のイベントがやってきた。
「これより勇者召喚の儀を始める!」
今日は世界各国で勇者が召喚される英雄の日、各地で召喚された勇者は各々旅をし誰が始めに魔王を討伐するのかを競わせる事でその勇者の、そしてその勇者を召喚した国の名声を上げるための作戦でもある。だが国によって召喚できる人数はばらつきがあり、その召喚を務める巫女の魔力量に依存するのだ。
シュワァァン
王の広間に白い魔法陣が出現、そして淡く光ったと思うと次の瞬間には先ほどまで居なかったはずの人が立っていた。
「っ?!ここは…」
自身の視界が安定して初めに放った言葉だった。その男は世間的には美形に分類される顔立ちをしており、その無駄に豪華な服装を見るに金持ちなどの類だろう。
「混乱するのも良く分かる、だが今は我々を信頼して魔王討伐に勤しんでもらいたい。新たな勇者よ」
(信頼?魔王討伐?それに新たな勇者…)
勇者の男は頭をフル回転させ、答えに辿り着く。そしてその場で大きく体を反らせ、自分語りを始める。
「そうだ何故わからなかった?僕はこんなにもイケメンで、お金持ちで、ゲームやアニメ知識豊富で更にイケメンなのにッ!今まで普通扱いされていたのがおかしいんだ!そう、僕は勇者として世界を救い!世界から称賛される運命なんだッ!」
その場にいた皆は何を言っているのか理解できない様子で困惑をしているが、そんな事は考えずに勇者の男は再び話し出した。
「状況を察するに魔王を討伐する勇者が欲しい、そしてそのために僕を召喚したって事で良いかな?」
「な、貴様!王になんて口をッ」
「まぁ良い、下がっとれ」
王の命令を受けた兵士は不満そうに後退する。この国のルールで自身の命より王の命令優先などと言うバカげた法があるので王に逆らうなど何があっても不可能に近い、だがそんなことを知らない勇者の男は傲慢な態度を取り続ける。
「僕は勇者なんだ、早く最高級の部屋を用意したまえ!そしてとびっきりの美女を…そうだな、4人ほどよこせ」
「まぁ今日は疲れたであろう、今は部屋で休むといい。状況を察する能力が高くて助かったぞ」
王は勇者の男との会話が面倒になったのか男が望むものを与え、部屋に案内した。もちろん案内は王では無く兵が行ったので王は何もしていない。
「ふ〜ん、悪く無いな」
男は自身の部屋に到着し、観察をする。そして満足したのか笑みを浮かべながら喋った。
「ここから僕の物語スタートだ!」
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名前 千崎海斗
職業 勇者
性別 男
レベル 1
スキル 剣術C 魔術D 風魔法F 白魔法C 鑑定眼B 精力A 欲強化A
固有スキル 神怒 魅力眼
称号 転移者




