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大罪の追憶 壱

「俺が大罪になる前の話し、つまりは何千年か前の話だ」


◇????年前・冥界ノ大地(アビス)


「天使の軍が攻めて来たぞ──ッ?!」


仲間に警告をした下級悪魔レッサーデーモンは背後に迫っていた天使の1人に槍で脳天を貫かれ、絶命した。それを見ていた同胞と思われる悪魔達が命を捨てた突貫を仕掛けるのを横目に1人逃げる者が1人──


「命ある奴が勝ちなんだから突撃するのとかバカだろ」


その黒を基調にした服を着る女は皆が進む方向の逆に進み、天使達から逃走を図る。この時代はまだ悪魔は知能をあまり持たない種族で自身の命が惜しく逃げる者は少なかった。なのでこの女はある意味賢いと言えるだろう、結果的にだが天使、竜、悪魔、人間から成る戦争は現代には神、つまり天使が勝ったと言い伝えられている。


「臆するな!我々の勝利は決まっているッ!」


そう悪魔達を鼓舞しているのは七つの大罪が1人、憤怒を司るラースと言う悪魔だ。


「身分が偉いからって兵を捨て駒にしやがって、まずは自分が死ねよ」

「…そこの貴様、聞こえているぞ?」

「自分お手洗い行くんで後で良いっすかー」


黒を基調にした女は話を逸らし、前線を退けようとする。だがその嘘は見破られているのか憤怒ラースに凝視されている。


「乙女のお手洗いシーンそんなに見たいのか?憤怒じゃ無くて色欲を司った方がいいんじゃ?」

「…貴様、話がある。その分かりやすい嘘はやめてこちらに来い」

「お手洗い行かないと──」


シュッ


黒の女の嘘に呆れた憤怒ラースはその場を離れ、黒の女に接近する。そして本気で力を込めた拳を振り上げ、黒の女を殴る。


「急に何?喧嘩?」

「…私の拳を避けたか、貴様中々に強いな」

「あざーす」


気怠そうに返事をする黒の女とは裏腹に憤怒ラースは希望に満ち溢れた目をしていた。それは何故か、大罪の攻撃を受ける。しかも第3柱であり力に特化した自分の攻撃を簡単に避けてみせた相手など初めて見たからだ。そもそも大罪の攻撃を避けるなど上位悪魔アークデーモンは愚か悪魔王デーモンロードにすら不可能な芸当なのだ。もしそれが可能ならばその者の実力は魔王を遥かに超えた大罪の領域に足を踏み入れているかもしれない人材と言うことになる。


「貴様、私の部下にならないか?最近第7柱の暴食グラトニーの野郎がサボっててな、上手くいけば貴様の実力なら新たな大罪として名を馳せる事ができるやもしれんそ?」


悪魔によって個人差はあるが基本的にほぼ全ての悪魔が望むのは圧倒的な力だ。そして悪魔の中で最高峰、いや正しく最強の座に鎮座しているのは大罪の7人が相応しい、そんな力の象徴とも言える大罪になるなど一般の悪魔からしたら喉から手が出るほど手に入れたい称号だ。それを理解している憤怒ラースは黒の女が確実にこの提案を受けると確信していた。


「面倒だし断る」

「そうか、やはり大罪には憧れ──は?今断ると言ったか?聞き間違いじゃ無く?」

「もう一度言おう、断る」


その発言は憤怒ラースにとって思っても見なかった言葉だった。悪魔が大罪になれる機会を逃す?そんなの過去にも未来にも存在しないと考えていたからだ。現に過去に大罪の提案を断った者は居ない。


「ならないのなら殺す」

「優秀な兵を無意味に殺すなんてお前、兵の上に立つ者として向いて無いだろ?それほど賢く無い俺でも分かる」

「グッ…」


憤怒ラースは自分が指揮に向いていない事に気がついている。本人の戦闘スタイルは単独での突貫が主体で行われる為、集団戦には不向きなのだが自身の固有スキルの憤怒がそれを許さなかった。憤怒には効果は様々あるが今回は自身の兵に多大な付与効果をもたらす機能が大きいだろう。本来このスキルは過去の憤怒の大罪達が軍事指揮を主体として戦っていた事に由来されるが、その中で異端だった現在の憤怒ラースは指揮が突貫しか出来ず、絶望的なセンスの持ち主だったのだ。


「…貴様は私に説教できるほど指揮が上手いのか?」

「最近喰った奴が高ランクの指揮術持ってたし固有スキルもそんな感じだったからまぁまぁ出来るぞ」

「喰った?貴様、喰らった相手のスキルを己の物にできるのか?」


黒の女の固有スキルは悪食、その効果は禁止されている物や親しい者を喰らう事で発動するスキルだ。その効果は喰らった者のスキルを我が物にすると言うまさに暴食担当に相応しいスキルと言えるだろう。そのスキルを使い同族喰いと言う禁忌を犯したおかげでスキルのストックが山ほどあるのが今の黒の女の力に直結している。


「…やっぱり大罪になったり──」

「無理、面倒」

「ならばこの戦が終わるまでで良い、私と手を組まないか?報酬はそれなりに出す予定だ」


憤怒ラースは黒の女に手を差し出し、和解の合図をする。圧倒的力を持つ大罪に策略が組み合わさればまさに鬼に金棒、圧倒的な力で天使達を屠れるだろう。


「報酬は俺を貴族にする事だ、そうすれば兵にならなくて済むからな」

「分かった。これにて協力関係を結ぼうか」


黒の女は憤怒ラースと握手をし協力関係を築く、後にお互いが戦友として、同じ大罪として戦うとも知らずに2人は夜遅くまで天使を殺戮するための作戦を企てた。この2人が後に戦友として、同じ大罪として戦うのはまだ先のお話にだ。

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