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51話 蝕葉吹き抜けるは青嵐

◇オルグス大迷宮・35層◇


階層が変わっても景色の大きな変化は無くただ花が増えたのみだった。

唯一変わった点といえばヴァインドールを侵食するような彼岸花と似ている花が生えていることだけだろう。


「綺麗な花……頭飾りでも──」

「その花に触れるなよ」

「ッ?! 私今何してた?!」


花から発せられる花粉を嗅ぐと脳に侵食し自身から頭に装着させようとしてくる機能付きだ。

これによってヴァインドールを含む生物は全て頭に寄生花が装着され、その者の意思は無くなっていた。

どうやら人間の有効な様で効きは遅いが確実に皆を侵食していった。


「何か対策を練らないとな……弱い風を発生させて花粉を飛ばすか?」

「確かにそうしないと誰か寄生されちゃうかもね、私とか……」


ーーシュワァァン


歩きながら魔法構築を発動し、新たな魔法を生み出す。

低級の魔法程度なら特に苦労することもなく創れる様になっているのだ。

そして完成したその魔法の名は守護のそよ風(オートブリーズ)、効果は付与した相手の周りに弱風を発生させるだけのE級魔法だ。


「これで少しはマシになるだろ」

『随分扱いに慣れたんじゃないか?』

『だろぉ? 歩きながら色々やってるからな! 魔力抵抗を無視した錬成はまだ無理だけど……』

『錬成は確か熟練度が上がれば細かい箇所の手順は省略できるから精々頑張れ』


細かい箇所の省略?

そんなのできるのか!

解釈の違いってことだったりするのかな……?

ここも実験必須だな。どんどんやる事が増えちまうよ!

これじゃブラック企業顔負けの深夜作業始まっちゃうよ!


「今日中に40層到達するぞ〜」

「今日?! 流石に早いんじゃ──」

「こんな寄生花だらけで花粉も飛んでるクソ環境に居たいか?」


32層などは寄生花は存在していないかったのと自然が美しい光景が広がっていた。

だが現在の階層は寄生花が跋扈し、凶暴化したヴァインドールや動物達が襲ってくる魔境と化している。

こんな階層に長居したいと思う方がおかしいだろう。


「……嫌だな、早く攻略しよう」

「だろ? でも速度を上げすぎると守護のそよ風(オートブリーズ)が解けちまうからな……早歩きくらいなら行けるか?」


方針は決まった。後は仲間を信じて歩き続けるのみだ。

そして景色はやがて移り変わり39層に到達、その領域はもはや美しい自然とは真反対の魔境になっている。

緑が生い茂っているのは変わらないがその各所に寄生花があり、目に見えるほどの大量の花粉が視界を覆う。

ここまでの量だと色付きの霧が発生していると錯覚するレベルだ。

これだと守護のそよ風(オートブリーズ)に魔導王とフル詠唱をしなければ防げないレベルに達していて、魔法を解いた瞬間に酷い頭痛に襲われやがて寄生されるだろうの予想するのは用意なことだった。


「けほっけほっ!」

「大丈夫か? 鏡花」

「う、うん……少し体調が悪いけど問題は無いよ。定期的に白魔法で治癒してるから感染の恐れも無いと思う」

「それなら良いが……無理するなよ?」


この布陣でヒーラーを失う=死に直結する事になるだろう。

魔法で花粉を防いでいるとしても完全に防げるわけでは無く、定期的に白魔法で解除している事で感染を防いでいるのだ。

更にこの先に鎮座しているであろうこのボスに挑むにはバフと回復が必須だ。


(まぁ後は個人的な心配なんだけど……)


◇オルグス大迷宮・40層 ボス部屋前◇


今までの大扉で閉じられた部屋とは違い、水のカーテンで覆われたその部屋は蔓や木で作られたドーム状になっていて、中の様子を覗くと中央に女性の姿をしたヴァインドールと思わしき者が居た。


「確実にボスだろうな」

「だろうね〜」


先手必勝で攻撃を仕掛けるか?

いやでもまたギミックとか壊しちゃったら嫌だしな……

正面突破するか!入ったら鑑定眼で情報確認はするとして……

後はバフ掛けからの魔法で攻めるか?

近距離だと寄生花そのまま頭につけられそうだし。


「休憩は済んだか? バフ掛けてもう行くぞ?」

「は〜い! じゃあ私がバフ掛けるね! 精霊の煌めき(フェアリーグロウ)純白の戦鎧(ブロンガイア)

「んじゃ俺も、大地切り裂く怪鋭剣(グラウンドリーヴ)狂風纏う剣(テンペストエッジ)人之限度(オーバー・アクセル)


バフは十分、今できる最高の状態でボス部屋に入る。

そうすると先程までの花粉は更に濃くなり視界に異常を与えるほどの量──


「グルギャウッ!」


ーーブォォォォンッ!


一行と対峙するや否や即放たれたのは辺りの花粉を一掃するほどの青嵐(せいらん)だ。

ゆらゆらと先程まで揺らいでいた青葉は吹き飛ばされその姿を無くす。

そして一行は悟った。


「これ先制攻撃すれば良かったな……」

「グジャガァ!」


───────────────────────


名前 蝕葉の女王

種族 植物の王(ヴァインロード)

レベル 98

スキル 魔術S 風魔法S 花魔法A 黒魔法A 鉄壁A 強魔S 自然治癒A 自然魔力回復A 統率術S 指揮術S 空間把握C 心眼C 話術B 

固有スキル 王の命令 生命の息吹

称号 寄生狂華


42話の「嵐の前の静けさ」の嵐はここの事を表しています。決して忘れてたんじゃ無いですよ?ほら、ちゃんと青嵐ってタイトルにありますし

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