49話 基本的料理
◇オルグス大迷宮・32層夜◇
夜の帳が下りダンジョン全域が暗く覆われる。
この地下空間にも夜はあるようで動物達は寝静まり束の間の静寂が始まった。
「ヴァルガァ?」
「ヴァワ!」
ーーヒソヒソ
「とは行かないか」
「だね〜」
小声で話しているのは夜になった途端にヴァインドールが湧き始めたからだ。
どこかのゾンビゲームのような風貌をしているのでここがゲームの世界だと錯覚してしまうほどの規模で徘徊している。
(食料の確保は終わってるし飯を食べたいんだけど……錬成で部屋を確保するか)
ーービリリッ
青白い閃光が発生したと思われた次の瞬間には大木を削ってできた穴倉が生成されていた。
広さは十分なので一行はその穴倉にズラズラと入り、安全を確保する。
入り口は再度使用された錬成で塞ぎ最後に魔法で防音処理を施したら即興のハウスの完成だ。
「よぉし! 飯だ飯」
今回は肉、魚、野菜全てあるからな!
何を作るか、やっぱ魚使いたいし普通に焼くか?
でもそれじゃ味気ないような……
『やっぱ魚ならそのままが1番だろ、肉しか食べてなかった状況ならそれが1番沁みる、空腹と飽きは最高のスパイスだ』
『……お前良いことも言えたんだな』
『ぶちのめすぞ?』
何か案外良い野蛮人だったな。
んまそんなの忘れて料理だ!
やっぱシンプルが1番だし普通に焼くか!
早速薪の準備を──
「私も料理手伝う! 蓮兎君に任せっきりは良く無いもん!」
「別に俺は良いよ? 休んでもらってても──」
「手伝う!」
「わ、分かったよ。なら俺が魚捌くから焼いてくれる?」
鏡花の圧に押されて手伝わせてしまった……
でも何で急に? 本人に聞いても良いけど張り切ってるしお言葉に甘えた方がいいかな。
よし! 捌くの頑張るぞ〜!
(1人の女の子として女子力は磨かないとね! 料理はあまり得意じゃ無いけど……蓮兎君の胃袋ゲットだぜ!)
そんなことを考えながら鏡花は夜ご飯の準備を始める。
今回作る料理は簡単な物だがそれでも自身の好きな相手に振る舞う料理が増えるのは喜ばしいことなのだろう。
「食の知識も増やしたいな……何か方法は無いのかな」
『食なら俺に任せろよ、食を司る悪魔だぜ?』
『マジか! 流石暴食を冠するだけあるじゃん、頼りにしてるぜ?』
◇オルグス大迷宮・32層夜 1時間後◇
「こんなもんだろ」
そこに並べられた料理は魚を焼いただけのシンプルな物だが、転移してから肉しか食べてこなかった者達にはどれもご馳走に見えるだろう。
飽きとは空腹に並ぶ調味料になるのだから。
「いただきます!」
それを食べるとふっくらした身をしていて例えるならばホッケなどに近い味をしている。
調味料などは無いが素材の味が料理術によって引き出され本職の料理人にも負けないほどの味に仕上がっていた。
「美味しいよ! 単純な魚なのにこんなに美味いなんて……」
「スキルランク上げたのもあるかなどっちにしろ手伝ってくれたからだよ」
「えへへ♪そうかな〜」
2人の会話を邪魔しないように無言で食べ進める灯火と快、2人で言葉を交わしたわけでは無いがその心は「絶対に今邪魔をしたらダメだ!」と統一されていた。
これがチームワークというものだろうか、ちなみに他2人は今は早々に食べ終わり部屋の隅で休んでいる。
「食べたら明日攻略開始だからな」
「は〜い!」




