絶望
あぁ俺の見立てが甘かった。俺は元剣道部だったりラノベ知識とかあるからすぐに順応できたけど他のやつはそんな知識は無いし運動部だとしてもスキルの使い方が分からなければ死ぬだけだ。
「きゃっ!」
「鏡花?!」
鏡花が狼に追いかけられて走り回っていた。その腕からは鮮血が流れていて傷を癒す一刻の暇も無いのが見て分かる光景だ。
(せめて鏡花だけでも助けるッ!ぶっつけ本番だけど魔法発動!)
手に全神経を集中させて感覚で魔力を流す。発動するのは1番イメージがしやすかったFランク風魔法の風刃だ。
「風刃ッ!」
「ガルゥッ?!」
放った風刃は見事命中。餓狼は死角から放たれた攻撃に怯んでいるのでそのまま接近してから喉元を切り裂いた。
ビチャッ
「はぁはぁ…血が飛び散るのは慣れないな」
「蓮兎…君?」
「あぁごめん、大丈夫?怪我は治せるほど魔力残ってるかな?」
鏡花に手を向けて心配の言葉を掛ける。
「う、うん。蓮兎君は?」
「俺は大丈夫!まだ一撃も喰らってないからね。だから他の人の加勢に行って来る〜!」
「え?!あ、うん!行ってらっしゃい」
現在交戦してるのは快と神矢か…優先するのは友達一択!俺も人間なんだ、許してくれよ?
「風刃!からの魂ノ採取」
「ガルッ?!」
「グルル…」
「まずは2体撃破!」
快は気絶してるのか?死んで無くて良かった…あとは神矢を助けに行かないとな。
「ガルガァァァァァッッ!!」
「うるさッ?!」
突如現れた大型の小鬼族のような魔物が現れる。それは一目散に人を食い荒らして行きその大口が次に向けられたのは神矢だった。
「何だこいつ?!」
「ゴアッ!」
ギィィンッ
神矢の剣と小鬼族の錆びた大ナタが拮抗するが抵抗虚しく神矢の剣が割れ、拮抗が崩れる。
「神怒ッ」
本来は竜をも滅するほどの力を持った神の一撃は使用者の技量と武器の損傷により威力は大幅に軽減され小鬼族の肉を断つには至らなかった。
「風刃ッ!」
「ゴァ?」
よし!こっち向いた。神矢の体制が整うまで俺が時間を稼ぐ!このままこっちについて来いよ?
ブゥンッ スパンッ
動かすたびに風切り音が鳴るほどのナタをニヤリと笑いながら神矢の首に振り落とした。神矢の視点はぐるりと回り最後に見た光景は自身の頭の無い体のみだ。
「た、魂ノ──」
「ギャハッ!」
殴られた瞬間に視点がぐらつき目の前が真っ暗になった。俺は死んだのか?転移して異世界で第二の人生を歩む前にこんなところで…
『まだ生きたいだろ?俺が力を貸してやる』
死に際に聞こえた声は中性的な声をした人の声だった。頭の中に直接語りかけて来るような不思議な感覚だ。




