28話 痛恨の一撃
◇オルグス大迷宮20層 ボス部屋前◇
「この気配……もうあいつ復活したのか?」
『確実に代行者とやらが関係してるだろうな、本来はここまで早く無い』
「はぁはぁ……先に休憩しよ? 蓮兎君──うっ、吐き気が……」
「大丈夫か? 救助」
「ふぅ……少し落ち着いた、ありがとう」
自己暗示を掛ける魔法だけどやっぱ救助って便利だよな、人見知りを実質克服できるようなもんだし……
「そろそろ俺も動くかな〜! 俺1人で殺るから見といて良いよ」
「え? 流石に蓮兎君でもボス1人は……て、もう1回攻略してるんだっけ」
「そ、だから任せとけ!」
ーーギィィィ……
大扉を開けると最奥に鎮座している巨狼が現れる。
デジャブを感じる光景だが前回と違うのは蓮兎に新しい技が追加されたことだろう。
「鏡花、出来たらで良いからバフ掛けてくれ」
「分かった!精霊の煌めき&純白の戦鎧!」
精霊が煌めき純白の鎧を模した魔法が蓮兎を覆い包む。
その効果は固有スキル慈愛の左手により強化され本来はEランクの精霊の煌めきもAランク白魔法純白の戦鎧にも迫る勢いだ。
「魂の解放&大地切り裂く鋭剣&狂風纏う剣&神怒」
自身には魂の解放を、そして即興で作り出した足装備に他3つの魔法を宿す。
次は工房での暇つぶしで作った燃費最悪、しかし最強の魔法を発動する。
「神之命」
この魔法は自身の命……
いや厳密に言えば神の血だから血液か、まぁそれを消費して身体能力を大幅に向上させる魂魔法を始めとした黒と風を混ぜた複合魔法だ。
「維持するの辛いから早く決めるぞッ!」
「ガウワッ!」
両者戦闘開始直後に縮地を使用、すぐさま距離詰めをしお互い一撃で勝負を決める気だ。
片や黒魔法を混ぜた強靭な爪、片や支援魔法を使用した脚を構え互いの最高の一撃がぶつかり合う。
ーーゴォォォンッッ!!
互いの衝突により発生するのは黒色のオーラが混じった衝撃だ。
風を、光を巻き込みその威力は増減して行く。
やがて風圧が収まると見えたのは、互いの一撃が命中する瞬間だ。
「轟脚ッ!」
そう叫び脚と爪はぶつかり合う。
決着は一瞬で決まり脚が爪に触れると同時に剥がれ落ちて無力化してしまうほどの圧を放ちながら腕を貫通して頭に回し蹴りを喰らわす。
ーーブチッ!
「っ?!」
攻撃の反動で蓮兎の右脚が千切れることになった。
それもそのはず現在蓮兎に付与されている支援魔法は精霊の煌めき、魂の解放、大地切り裂く鋭剣、狂風纏う剣、神怒、神之命、天歩の計7個の魔法を宿しているのでその負荷に耐えられるはずが無いのだ。
ーーボトンッ
神に迫る一撃を受けた巨狼の頭は地に落ち自身の肉体が屠られるのを観察する事しか許されない。
やがてその頭は宙に浮かび上がり固有スキル堕トス者を発動す──
「させると思うか?」
「ガウッ?!」
足装備は壊れその足自体も千切れてしまったが神之命は自身に宿す魔法なので効果が切れることは無い。
それを利用し急接近からの権能の発動だ。
「いただきますッ!」
ーーガブリッ
巨狼を喰らうとその巨体を誇っていた体は魔力となって消え去り頭も次第に魔力に変換される。
「こいつの体魔力でできてたんか……暴食と同じ仮初の肉体ってことか?」
『本来より何十倍も早く出現したからな、肉体が不完全なんだろ。多分代行者とか言うやつが魔力を大量に渡して無理やり復活した感じだ』
轟音を轟かせながら始まり直後に決着がついた戦いは数人の驚く声と顔によって幕を閉じた。




