【嶺冰】
「あっぶな!」
触れたら終わりの攻撃なんだからそんなに広範囲はやめていただきたい、まだ支配されたこと無いからどのくらいまでセーフなのか分からないんだからさ?
「暴風穿風!」
「惨メナ肉塊──」
「させないッ」
ーーギィィンッ!
防御行動を取ろうとした女王の背後に回りレイピアによる刺突攻撃を試みたノエル。
だが女王はそれを血液を硬化させ纏わせた左腕で受け止めてしまった。
(あの位置なら女王の支配が……ッ)
ノエルが支配されるのでは無いかと心配して駆け出す蓮兎だったがノエルは冷静だった。
女王が追撃として放った血の槍が自身の体に触れる前にある魔法を無詠唱で使う。
「銀色世界」
「ッ?!」
ノエルが発動したのはオリジナルSランク氷魔法【銀色世界】、その効果は複雑な効果など持ち得ずただただ単純に指定範囲を凍らす魔法。
だがシンプルな分威力も範囲も桁違いとなっていて発動速度も極めて高い、その攻撃をモロに受けた女王は全身が凍りついた。
「このまま貫く──」
ーーパリンッ
だがその氷塊は虚しく音を立てて砕け散った。
圧倒的強度を誇っていても血液にさえ触れてしまえば支配権は女王にある。
つまりは「ただちに自壊しろ」と命令を下すだけで圧倒的な力を持っていたSランク魔法もただの氷になってしまう。
「なら魔法は使わなければ良い」
「ッ……!」
魔法を破壊されたと分かった刹那の時間にノエルは作戦を変更し物理による心臓の破壊を試みる。
あくまで今の目的はHPを0にする事だが心臓を潰すだけでは死に至らないのでただの弱点に過ぎない。
「ナイス時間稼ぎッ! 混沌喰らう使者!」
実体のある魔法は無理だと分かったなら実体の無い魔法で攻める!
魔法で顕現された2体の捕食者は対象を喰らう以外には考えず単独行動を開始する、なら俺は合間に魔法を使って女王の邪魔をするぜ?
ーーポタンッ
「紅染まる赫の花園」
血の雫が血に触れると即座に展開される花園。
手をかざすなどの動作も何も無くただ血が垂れただけで発動条件を満たしているようで、以前戦った時はそんな芸当は無かった行動に蓮兎は一瞬戸惑う。
「血槍之牢獄」
一瞬の油断はこの戦場において死を意味する。
蓮兎の左腕は血の槍が3本ほど突き刺さり、まもなく支配されることにな──
ーージャギッ!
「切り落とせば問題は無いよな?」
貫かれたと思った瞬間に蓮兎は自身の腕を切断した。
そして即再生し何事もなかったかのように戦線に復帰、そのまま応酬として暴風穿風Ⅱをお見舞いする。
「ッ……!」
女王の腕を貫いた暴風は唸り声を当てながら旋回し再び女王に向かって喰らい迫る。
だがそれに対抗する女王、肉の壁を即座に作成して唸る暴風に対処。
だがその程度では止まらないと言わんばかりに暴風は肉壁を食い破った。
「血槍之牢獄──」
「一芸しか無いのか?」
出力が高く魔力も膨大、一度触れたら終わりの攻撃を連続して放ってくるのは確かに脅威だ。
だけど俺も学習しないわけじゃ無い、そう連続で使ってたら対処法くらい身につけるさ。
「極小之終焉」
この魔法は終焉招く混沌世界を極小で発動させ威力の増幅を可能にした。
元々付与されていた効力は【消滅】で触れた物を全て無に帰す力。
それに上乗せされたのは高速飛行と精度の向上、魔力の削減が実現されている。
「魔力は有限、そんなに連発して良いのかぁ?」
「レント足場! 煽ってる暇無い!」
「急だな?! まぁりょーかいッ」
ーーズズズッ
ノエルの合図に合わせて蓮兎は地面に手を当てて錬成を発動、高台を作り出しノエルの足場を生成。
ノエルはその足場を使って加速し女王に向かって飛び立つ。
「銀色世界、纏え」
先程使用し、砕かれた銀色世界を今回は剣に纏わせる形で使用。
最早ノエルの獲物であるレイピアの面影は無く、鋭く巨大な氷塊が纏わりつき小さめの大剣のようになっている。
「さっきのお返しねッ」
「血槍之牢獄──」
「だから一芸じゃこっちも学ぶんだよッ」
遠隔錬成、吸収、黒域を蓮兎は同時発動し、女王の魔法から魔力を奪い【吸収】で血液を魔力に変換。
魔法の無効化をする。
ーースパンッ
ノエルは女王の首を切り落とした。




