地下崩壊
双方がぶつかり合うたびに地下は大きく揺れる。
その揺れは地上にまで及び、ルナルス樹海に住む生物は恐れ慄き尻尾を巻いて逃げ出した。
だがそんな事は微塵も気にせず双方の殴り合いは激化するばかりだ。
(そろそろ体が限界…ッ)
(そろそろ薬の効果で体が…ッ)
双方の体はとうに限界を超えている。
それでも動くのは薬の力なのかバフの力なのかは分からないがどちらも次の瞬間には命が絶たれてもおかしく無い状況になっていた。
バタンッ
「はぁ…はぁ…」
先に倒れたのは蓮兎だった。
今は他に膝をつけて跪いている状態となっていて、それとは逆にエルスは薬でほとんど飛んだ理性で蓮兎を見下している。
「君は中々強かったよ、人間の分際でこの神の薬に抗うなんてね」
「俺が人間…? ははっ何かの冗談かよッ!」
俺がぶっ倒れてるのは魔力が無いからじゃ無い。
単純に体の限界が迎えただけだ、魔力に限界は来てないし魔法の発動くらいはできるんだ。
「終焉招く混沌世界」
「これはッ?!」
過去に代行者が発動した領域内全てを消滅させる最凶最悪な魔法、それが混沌魔法【終焉招く混沌世界】だ。
「形成逆転だな、これで」
エルスは回避行動が遅れて下半身が消滅する。
「お、やっと倒したのかよ」
「暴食か、お前こそ遅かったな」
「検証も兼ねてたんだよ、それより何してたんだ?」
「地下に面白いのがあってな」
ここも地下なんだがな…まぁあとで視覚共有でもしてもらおうかな、いや〜権能を最大まで貰ったからなのか暴食との繋がりが大きいのか視覚共有ができるようになって楽だ。
「僕を疎かにするなよ人間…いや君は違うらしいね」
「残念ながら2人とも人間じゃねぇ、俺は大罪で蓮兎は混血だ。間違えんな」
「ははっ、あの人が喜びそうな種族だね、実験材料として」
エルスは生き絶えそうになっているがかろうじて口を動かしている。
それが時間稼ぎなのか最後の足掻きなのかは分からないが蓮兎は少しの談笑の後に殺害する事を決めた。
「僕を殺す気かい? 残念だね、時間オーバーだ」
「何を言って──」
ブォォンッ!!
その瞬間にエルスの体は思いっきり爆ぜた。
それと同時期にさらに地下、先程まで暴食がいた貯蔵庫や薬を打たれた肉塊達も爆ぜる。
◇ギルド宵の暴風・地下室 数分後◇
「ふぅ、ギリセーフかな」
「ナイス錬成、まぁ俺なら耐えられたけどな」
「うっざ」
エルスが爆ぜた瞬間に蓮兎は遠隔錬成を即発動して暴食と自信を咄嗟に守ったのだ。
「証拠隠滅ってことかな? 鑑定結果はあるけど実物が無いとなんとも…」
「あ、俺持ってるぞ」
「は、マジ?」
何この子優秀ッ!地下にいたのってそのためだったのか、面白いのあった的なのも言ってた気がするし…俺が楽しんでる間にそんなことを……
「てか早めに撤退した方がいいと思うぞ?」
「え、急に何でだよ」
「さっきの爆発で地盤が緩んでる、そろそろ崩壊するぞ」
何でそれを早く言わないかなぁ?!
急いで出ないとじゃんか!…あれ?体が動かないんだけど気のせいかな?
「…肉体の限度だもんなぁ、そう簡単には治らん」
「…俺死んだ?」
「死なないことを祈ってるよ、じゃあな」
「行くなよ?!」
めんどくさそうに暴食は蓮兎をおんぶして全力疾走で地下を抜ける。
道中には人が焼けた嫌な匂いが充満してるが暴食からしたらご馳走なのだろうか?
たまにお腹の音を鳴らしながら地上に脱出を果たした。
ダァァァンッ!!
脱出した瞬間にギルド【宵の暴風】のギルドハウスは崩壊、地下空間に建物は全て落ちて巨大なクレーターが出来上がった。
「ギリギリだったな」
「今日ほど暴食に感謝した日は無いな」
「いや俺一回蘇生してあげたんだが?」
確かに蘇生もあったか、中位小鬼族に一度殺されたんだっけか?
まぁそれはそれで良いか、まぁそれはそれで……
「切り替えて王都戻るぞ〜!」
「はぁ…面倒」
「んじゃおんぶよろしく」
「クソがッ!」
愚痴を言いながら暴食は蓮兎をおんぶして王都に戻った。




