勇者の証
ギィィンッ
戦闘開始から数秒、常に刃と刃がぶつかり合い激しい金属音を鳴らしていた。
大剣を使っている騎士団長だがバフを温和してるとは言え蓮兎のスピードに渡り合っているのはこの世界でも有数の実力者と言うことだろう。
「神怒ッ」
固有スキル【絶剣】に刻まれた神怒を使って騎士団長の持つ大剣を切り刻む。
そうすると剣は砕かれ得物を失った騎士団長は怯むと思われたが1つの魔法を無詠唱で発動した。
その魔法はAランク神聖魔法愚者降り注ぐ神の雫だ。
ジュワッ
(降り注ぐ中の一撃を受けただけで左腕が焼け落ちた? これが神聖魔法ってやつか、愚者に対して絶対なら耐性を持った魔法…あれ、俺の弱点判明した?)
流石に無策で行くのは怖いよな、ならば魔法で攻める?いや得物を失った相手も同じ作戦でくるか、なら神聖魔法を使える相手が有利…いや全力火力なら流石に勝てるだろうが問題はあまり起こしたくは無いからな。
思考を巡らせている間に騎士団長は戦闘体勢を止め、蓮兎に向かって歩き出す。
その姿は敵意など無くただただ歩いているだけだ。
「先程の無礼を許してほしい、まさか勇者様だったとは思いもせず」
「え、勇者…?」
「これほどの力を持つ者ならばSランク冒険者や国に仕えている者、ですが私の記憶が正しければそんな人はいない、ならば転生者や転移者と考えるのが自然でしょう」
俺が勇者…まぁ確かにSランク冒険者でも国の偉い人でも無いけどそんなこの世界って転生者とかメジャーなのかよ、驚く様子な無いし…
勇者って貴重な人材で魔王を倒すための英雄!とかじゃ無いのか?まだまだこの世界について知らないことは多そうだ。
「勇者…では無いけど転生者、いや転移者かな? その認識で合ってると思うよ」
「勇者様では無いのですか? 勇者だけがもつ固有スキル【神怒】を所持していたので勇者様かと」
この世界に来た勇者はみな同じスキルを得る、それは正しく神の一撃であり魔王を討つためのスキルだ。
だがそのスキルは何故か今蓮兎の手に渡り固有スキル【絶剣】に統合されている、だがその一撃は元のスキルにあった刀神の効果によって技としての保存がされていた。
「俺はただの錬金術師だよ、ちょっと訳ありでスキル持ってるけど」
「訳あり…いえ深くは追求しないでおきましょう、それより──」
「僕に逆らうなァァァァァ!風紋一閃ッ」
先程まで瀕死であった千崎は女騎士によって回復を施されていた。そして力を振り絞り蓮兎を攻撃、だがその足掻きは虚しく虚無に終わる。
蓮兎は攻撃を避けた後に拳に衝撃波を込めて千崎の顔面を殴った。
「くはっ!」
「手加減はしたけど…死んで無いよな? いや俺としては死んでもらっても構わないんだけどさ」
「…息はありますね、ですが起き上がるのに少々時間がかかるでしょう」
騎士団長は即座に千崎の生存を確認する。
その後は千崎を拘束、そして蓮兎はこの世界について話を聞き、騎士団長は蓮兎の素性を探った。
◇◇
「ふむ…貴方様がこの世界に来た理由は分かりました。ですがこの先どうするのですか? 行く当てはないのでしょう?」
「適当にぶらぶら歩いて蘇生の糸口探して…そんな感じかな」
「ならば私の国に…と言いたいですがお恥ずかしながら我が国は少々荒れていて」
帝都ゲルバドとか言ったか?まぁ明らかに絶対王政とかしてそうだよな、偏見だけど結構合ってるっぽいし、流石にそんな国に巻き込まれたくは無い。
すまん騎士団長さん改めジン・グガーラさん、鑑定眼で見てもスキルは見えなかったし隠蔽Sを持ってるのかな?
「なので王都セイクリッドはどうでしょうか、街も大きいですし貴方ほどの実力があればすぐにSランク冒険者にもなれる、そうすれば混血特有の差別も起きないでしょう」
「やっぱ差別はあるのか」
この世界では悪魔、人、神はそれぞれ激しく対立していて各種族は殆どがそのどれかに属している。
大罪はもちろん悪魔派、精霊は神派などの派閥争いがあるのだ。
「俺がいるから大丈夫だろ、大罪に喧嘩を売る愚か者はいないし」
「暴食お前力で解決しようとしてるだろ」
「…話し合いだぞ?」
「嘘つけ」
暴食が話し合いで解決するなんて思えない…ん?てかもう肉体あるからあだ名じゃ無くて名付けできるんじゃね?!
流石に魔力足りてるよね…?
『ギリ足りてるな、俺の弱体化も原因だろうが名付けの時の消費魔力が減ってる』
『今の俺でギリなのにそれで弱体化バージョンかよ…』
『まぁその王都って場所行ったらな、結構暴食って名前気に入ってるんだからな』
え、なんか純粋に嬉しい…俺のクソネーミングセンスが光る時だったのか!こうなると召喚術とかゲットして仲間増やしたい気もするけど…いややめとこう、早く鏡花を蘇生させるのが即決だろ。
『私のことも忘れないでよね?』
『うわビビった?! そうか、女王も助けるって話だったな』
「…? 何かありましたか?」
「あ、いえ何でもありません」
周りから見たら急にビクッとしたりリアクションしてる変な人になってしまった。
以外反省だな、まぁ兎に角ここから新しい人生のやっと開幕だッ!




