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慈愛の天使

「鏡花ッ!」


蓮兎は即座に走り出し鏡花の死体にたどり着く。そしてあたりの魔物を刀で全て切り刻み、鏡花の横に座り込む。

今も鏡花の胴体からは血が流れていて助かる未来はとてもじゃ無いが見えなかった。


ダメだこのままじゃ確実に死ぬ、俺が鏡花並みの白魔法を使えればまだもしかしたらがあるかも知らないが俺は白魔法を使えない…

暴食グラフェルや女王なら回復できたりしないか?!


『私も白魔法は専門外ね、それにそろそろ血が抜けるから意識も無くなるわ』


やっぱりワンチャンに賭けて魂の保護をするために【魂ノ採取】を発動した方が…


「蓮兎…くん?」

「鏡花?! 今応急処置を──」

「無理…だよ、もう…だから、最後…に──」


奇跡的に息を吹き返した鏡花は蓮兎の手を掴み、最後のスキルを発動する。

それは失った鏡花の固有スキル【慈愛の左手】の隠し効果の一つ、自信が愛した人に限り使用者の死亡時にのみ効果を発動する。

鏡花本人も知り得なかったが偶然発動したもの、その効果はスキルの譲渡だ。


シュワァァン…


淡い光が2人を一瞬包み、そして光は消える。そしてそれと同時に鏡花の瞳からも光が消失した。

それと同時に暴食グラフェルの封印が解け、会話可能な状態になる。


『おう戻った…ぞ?』


暴食グラフェルは状況を理解しておらず発言して少し経ってから理解した。そして「あれ、俺場違いじゃね、超場違いじゃね?!」と考え少しの間黙る。

そして蓮兎は静かに【魂ノ採取】を発動、鏡花の魂を保護した。


『スキル【慈愛の左手】が譲渡されました。副次効果で白魔法の付与…エラー発生黒魔法と白魔法は共存できません、新たなスキルを作り出します』

「新たなスキル?」

『代行者(分霊)の魂に刻まれた【混沌魔法】に白魔法を統合します。固有スキル【慈愛の左手】をスキル変化、暴食の権能、魂ノ採取と反応して作り替えられます』


スキルの作り替えとかエラー発生とか何が起きてるんだ?!俺は鏡花の死を拒むこともできず鏡花の形見となる固有スキルも獲得出来ないのか?


『固有スキル【慈愛の左手】を固有スキル【不死性イモータル】に変化させました』


名前 不死性イモータル

効果 魔力を消費して即死以外の外傷を全て再生します。魔力が足りなくなると魂を消費して発動も可能、その場合は質によって再生力が変化します。

常時発動型スキルなのでスキルの封印をされたとしても封印されず常に発動可能スキルです。


『えっと…元気出せよ、人はいずれ死ぬし…な? だから──』

『お前励ますの下手すぎな、あと俺はそんな絶望して無いよ』


女王の意思が消える前に言ってた蘇生可能発言、あれがあるからギリ保ててる。そのためには色々準備が必要だろうが今は速攻攻略して少しでも早くその状況を整える、だから今は悲しむんじゃ無くて蘇生できる可能性があることを喜べッ!


暴食グラフェル

『ん? 何だよ』

「流石に体限界だからじゃあな」

『…は?ってお前ここでぶっ倒れるなよッ!』


◇天界・代行者自室◇

 

「あ、先輩いた」

「遅かったですね、待ちくたびれましたよ」

「死んだ人に言われたく無いんですけど?!」

「そんなこともありましたね、過去のことです」

 

仮面の女はツッコミを入れようとしたが怒られるのが怖いのでやめることにした。そして代わりの質問を考え、それを聞く。

 

「そーいや死んだ時のペナルティってあるんすか?」

「分霊が完全に消滅したので能力値は下がりましたよ、五分の一程度ですが出力が下がりました」

「五分の一であの強さなんすか…」

 

自身の弱さを、いや仮面の男の規格外の強さに少し怯むが割り切って質問を続けた。

機嫌が良いのかいつもなら「無駄口を叩かないでください」などと反論してくる仮面の男だが今は心良く質問に答えている。

 

「まだ暴食グラトニーに固執するんすか?」

暴食グラトニー様、ですよ? まぁ良いでしょう、その質問の答えはもちろんイエスです。次は蓮兎君が完全に暴食グラトニー様の力を引き出して顕現させてからにしましょうかね」

「神様達怒ってますよ? 特に愛の神が私の賭けた相手を殺すな!って」

「くふふ、それは考えてありますよ。貴女は気にしないで私にでも罪をなすりつけてください」

 

案外優しいところあるじゃん、と感心している仮面の女は鏡花に傷つけられた体を労わりつつソファに座り込む。

今更だが仮面の女は掴まれていた左足は失い全身が傷ついている、そしてまだ自己崩壊アポトーシスの効果が継続しているのか治癒も困難な状況になっていた。

 

「権能使い過ぎたし欠損も酷い、暫くは活動出来ないかな〜」

「なら事務仕事でもしていただきましょうかね、それなら手を動かすだけで可能ですし」

「やっぱ先輩鬼畜だ〜」

「褒め言葉として受け取っておきましょうかね」

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