記憶53:紫と夢の人
組…一から六人
班…二,三組の集団
分隊…班の集合体
こっちと同じようなもの
夢の人は誰だったんだろうと考えるするが答えは出ない。むしろ逡巡して答えが出るのを拒んでいるのかもしれない。でもそれは私らしくないし答えを諦めるのは絶対にダメな気がしてついつい考えてしまう。何故あの人に固執しているのか分からないが、あの人を知ることは私が私であるために必要なことを知るのと同義だと感じてしまう。
本当に何故だか分からない。分からないけどあの人を求めるこの感情は恋みたいなものなのかもしれないが、私に同性を愛する癖はないし異性だとしても性交をしようとは思わない。外に出てきてから生殖について知ったけど私が行う実感は湧かなかった。
別のことを考えよう。その方が生産的だ。
軍事学園に通っている訓練生の身だが、まだ一年生で本格的な軍の演習に付き合ったことはない。研究所では部隊単位か個人の戦闘を目的とした訓練だったし、健康診断中は御空学園から出ることは出来なかったから軍の演習に混ざりに行く授業を見学したことはない。
二年生で軍の演習を見学する授業が一回あって、三年四年で本格的に軍の演習に混ざって本物の軍の空気感に慣れておく。卒業したらいきなり軍の中に所属させるのは困惑することも多いからって理由らしく、一週間前後は演習に参加して途中に出動命令が出された時には軍と一緒に出動するそうだ。
つまりは戦闘が最優秀を収めるくらいに出来ても多数の人間と同じ行動をすることには慣れていないし、私が所属している魔法科は集団行動を目的とした訓練があまりなく基本は組を作って作戦の規模が大きくなれば班になるくらいだ。安全に魔法を使える人間の数が少ないというのもあるが、魔法が暴走したときの被害を減らすために少数の遊撃隊として行動させる。
「何故私を呼ぶんですか?」
「一先ずは外に出てくれ。皆の前で話す」
テントの幕をめくった状態で言われて膝の上でカチャカチャと優しくいじっていた魔道具を置いて外に出る。ついでに靴もなかったから用意してくれた黒い大きめの軍用靴を履いく。上半身は施設から奪った白いシャツを着て下半身も奪った白いズボンを着ている。全身の服が身体のサイズに合っていなくて、魔道具を生み出した詰め物を靴に入れてズボンは紙の鎖をベルト代わりにしてずり落ちないようにしている。
軍の制服はその人のサイズに合った服が代わりを含めて何枚か支給されるが、全てその人のサイズに合った服が支給される。それに軍人は体力や筋力とかを常に鍛えていてガタイが良い人が多い。身長が低ければ溜め込めるエネルギーも筋肉も少なくて訓練では不利になる。
小柄な方が動きやすくて銃弾も当たりづらいという意見もあるが、私みたいに特殊な体質じゃないと人間の能力では小柄と大柄の違いは大柄のほうが優位な点が断然多い。それに協力動作をするときに身長が違うと余分な力が必要になるからやっぱり軍人には大柄の人が多くなるのは必然だ。
つまるところ私が切れる服がこの基地には一着もなくて、一番大柄な人の服を着ようとすればその人の服の首元の長さと私の肩幅の長さが同じかそれ以上で掛けることすら出来なかった。
「敵の破壊兵器が出現した。不完全な状態らしいが戦闘能力全くの不明。我々の目的は兵器の討伐だ。以降の説明は天堂副小隊長に任せる」
「それでは共有すべき内容を話していきます。まず兵器が出現した理由はテロ組織の職員に尋問中に隠し持っていた起動装置を押され地中深くの装置が作動したことで生み出されたものです。どこに隠し持っていたのか、どうやって信号を送ったのか、なぜ装置が作動できたのかなどの問題は先送りとするためこの場での処分はなしです」
「はい!」
「次に兵器の性能ですが、試験運用などもしていない構想を得て製造したばかりの未完成品に加え、賢者のみを使う兵器のはずが愚者も混ざっていることが確認できるため、性能に関する情報は皆無に等しく賢者と愚者の両方に類似する特徴を持っている可能性があることのみです」
愚者ならともかく賢者も入っているなら私の魔法の共鳴体に使えるかな。ただ使えたとしても共鳴はあまりしないだろうし、共鳴したところで私しか使えない魔力が充満して軍の隊員たちに迷惑をかける事になるだけだ。それなら私が呼ばれた意味ってなんだろうか。
「最後に作戦目標だが我々はあの兵器の行動を止めこの地帯の安全を確保することです。そのため作戦内容は周辺地域にこれ以上の影響が残らないものとなります。作戦の細かな実行案はこれから話し合うため森久保分隊長の分隊には今戦っている日比谷分隊長の分隊と交代して時間稼ぎを行ってもらいます」
「了解いたしました!」
「最長で二十分の時間を稼いげばそれで良い。それまでに作戦と立てて武器の整備と準備を完了させる」
「それと貴方たちにはこの人を連れて行動してもらいます。護衛対象ですが討伐に参加させるようなので守りながら戦闘を行ってください」
「質問があります」
「はい、どうぞ」
私も質問があるが内容は彼女と同じなので黙っておく。表情筋がピクッと動いたけどそれ以上は動かさずに心のなかでため息を付いておく。
多分母が珍しく強権を使って私を戦闘に参加させるようにしたんだろうな。出現の連絡を受けてから私を参加させる指示は時間的に厳しいから、もし施設の兵器と戦闘することになったら一番に参加させろとか命令したんだろう。施設の兵器じゃなくとも作戦の立案が必要な敵や私の肉体に関わることだったりで参させているのかもしれないが、どれにしろ部隊の皆の心は平穏ではないだろう。
「彼女は一体何者ですか。それを教えていただかなくては作戦を遂行することは困難です」
「それは残念だが教えることは出来ない。ただ、護衛対象でありながら戦闘に参加させるのは上層部から直接届いた指示であり、緊急の作戦でも参加させられるだけの戦闘能力と信用があることだけは言っておく」
「分かりました。では護衛の優先度について教えてもらいますか」
「基本的に護衛の必要はなく戦闘のみで構わないが、彼女が重症を負った場合は隊員一名を救助に当てること。つまりは最低限の連携を取るだけで十分だ。他の者もそうするように」
「「「了解いたしました!」」」
隊員に不満が出ること見越してか私の扱いについての命令も話していた。命令の仕方や内容の解釈も魔術科だったら一年の中に習うことだが、例のごとく魔法科は連携が少ないため二年か三年時に習うためまだ詳しく知らない。
今みたいに護衛対象の人間を入れての戦闘は少ないが、護衛だけだったら魔獣が暴れる地域から一般人を逃がしたり政府や企業の上層部にいる有力者を輸送したりするとことは多々ある。その時に護衛対象をどの程度守っていればよいのか、他の護衛対象とどちらを優先的に守ればよいのかなど細かな命令がある。
これは魔術を使う軍人が少しの個人差はありながらも同じ装備で同じ行動を出来るから選ばれている。魔法兵は個人差が大きいし訓練していても感情に左右されることは捨てきれないので護衛を任されることはまず無い。
さっきの例えで言うならば、魔獣が暴れまわったときに魔法兵は周辺の監視兵から連絡を取り合って新たにやってきた魔獣の討伐をしているだろう。現在暴れまわっている魔獣の討伐は魔法兵に倒させるのは危険があって、戦闘が破壊行為の許される場所で周辺に軍人を含めた魔法兵部隊の人以外がいない時だけだ。有力者の輸送はそれに加えて適宜対応できる力がないといけないから一辺倒になりやすくて統一性のない魔法兵には向いていない。
「お前も分かったか?」
「私はなんだって良いですよ。頼まれたからそれを倒すだけで、私は私の目的が達成できればなんだって良いんです。まあ、邪魔をしたら貴方たちでも蹴散らしますが」
兵士たちは明らかに敵意を向けてきているが私がどうこうできる問題ではないのだ。上からの命令なのだから黙って従えば良くて、戦闘中に後ろから刺すことをしなければ私はどうしようが構わない。
もし刺してきたらこの部隊と交戦状態になるかな。常識に疎い私でも侮辱されたらやり返すくらいはしたって良いはずだ。それが重なって交戦しようとも私が録音録画の魔道具を起動していれば証拠になる。偽造は軍本部に行けば直ぐにバレてしまうからやらないし、生き残った部隊員たちが嘘の証言をしようとも真偽を判別できる魔道具があるのだからこっちも直ぐにバレる。精度が悪い場合もあるらしいけど。
この部隊は特殊部隊っぽさがあるがそれでも私一人で制圧できる自信がある。今までだったら半々か私の分が悪かっただろうけど、ここの地下にはまだ魔素に変化していない魔力が大量にあるから引っ張り上げて使えば持続力も上がる。
まあ隊員がそんな事をしたら部隊ごと首を切られるだろうからならないとは思うけども、もしかしたらっていうことがあるからな。
「あぁ~森久保だ、部下たちが睨んでいるが気にしないでくれ。って言っても無理かぁ、ったくなんでこんな面倒な目に合うんだか」
「命令されたことを完遂しましょう。戦闘となれば集中して戦うでしょうから心配はいりませんよ」
「だよな、そうと決まれば出発だ。日比谷第二部隊への連絡は天堂副分隊長がやってくれたから到着したら情報交換の後に交代だ」
「「はい!」」
部下からの信用は厚いのかこの隊長の一声だけでさっきまでの視線は薄くなった。全く無いというわけではないけど自分の仕事をやるだけといった空気感で私情が漏れ出していたときよりも爽やかだ。私もこの方が戦う時に楽だから良い。
「全員配置につけ。使用魔術は速度上昇のみで走っての移動だ。二分ほどの同時戦闘と情報交換が終わり次第、現在戦っている部隊が撤退する。そこから作戦本部より指示によって行動を変更する。ここの対応は未決定なため臨時的な対応が求められるがお前たちならばやってくれると信じている」
「「はい!」」
「そして護衛対象のことだが...」
「私自身で説明します。貴方たちの指示には出来る限り従いますが、それは私が良いと判断した場合のみです。愚図な指示だと判断した場合には従いませんし、私がより効率的だと判断した場合には私から指示を出すこともあります。私は強いので心配の必要はありません。むしろご自身の身を心配してください」
折角隊長が和ました雰囲気が険悪になってしまったがまあなんとかなる。険悪さは嫌いだけれども正しい判断が出来ないされないのはもっと嫌いだ。私は私の目的を達成したいだけなんだから、今後関わらない人たちに敵意を向けられたところで影響はない。険悪さで一時の場の雰囲気が悪くなったとしても、私の中の正しさが揺らぐ出来事がある方が嫌のなのは誰でも変わらないと思う。
「あぁ~、出発するから全員魔術の準備!名前知らないからお前で呼ぶけどお前も」
「私は魔術を使わないよ」
「はぁ!なら何で戦うんだよ」
「取り敢えず走らないと戦闘している味方が大変だよ」
「あぁクソ!発動っ!」
この人は苦労人だなと思う反面その苦労の殆どが私によることが原因で申し訳なく思う。それでもやはり私は私の正義を貫きたいし公平さを失いたくない。
夢に出てきたあの人のことが頭から離れなれずにグルグルと頭の中を巡っている。それが母の腕に抱かれて心地良いような、身体が軋んで拒絶し吐き気がするような不思議な感覚に惑わされている。あの姉妹たちを倒したら答えにつながるヒントを得られる気がする。
まるで証拠のない推測だけど、隊員たちとの関係を判断するよりもよっぽど迷いがなかった。
やっぱりあの人は私にとって大切な人で、いつか知りたい人物だ
この部隊ではこんな感じ
小隊長、一人 副小隊長、二人
分隊長、各一人 副分隊長、各一人
三人一組、三組一班、四班一分隊
組の人数は部隊内の役職によって少し変わる(例.監視組
不満




