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オルカトゥルカ  作者: lien-sh
二学期
40/56

破棄

タイタン社機密実験施設所長。

それがわしの肩書で毎日人っ子一人こないような山奥で研究に明け暮れている。


この研究所に出された上の要求は簡単で戦争に使う人間の代わりになるクローンを作れというものだ。

そのために優秀な人間の遺伝子情報を精査し、より強い個体が生まれるものを見つける。

何千何万の遺伝子の中から研究に必要な遺伝子を抽出するのは流石に骨が折れたがまだはじめの一歩を踏み出しただけだ。


「くそっ、なぜ毎回毎回うまくいかないんだ!」


緑色の液体が詰まったカプセルがいくつも立ち並ぶがそのすべてのアラームが赤く点滅し細胞が耐えきれず崩壊してしまう。


データ上では安定した数値で成長しているはずなのにふとしとした瞬間、細胞同士の結合が無くなりただの肉塊となってしまう。


五回目となるこれも初回よりかは崩壊までのスピードが長くなっているがカプセル内の細胞が人の形になる前に崩壊していることには変わりない。

上は失敗するごとにいちいち呼び出してクドクドと文句と催促ばかりしてくる。


「所長提案があるのですがよろしいですか」

「何だ、わしは今忙しい。手短に答えろ」

「培養する細胞なのですが一先ず培養が簡単なものでノンハウを身に着けてから本命に移ったほうが良いのではないかと」


その研究員の意見は確かに試す価値があった。上からの小言は多くなるだろうが元々こんな研究を始めたのは向こうなのだから少しくらい無視したところでかまうまい。



保管しておいた細胞の中から強度の高いものを探し培養してみたところ、今までなら崩壊していた期間を過ぎても細胞が形を保ち順調に成長している。


単細胞から多細胞、魚、水陸両生類、四つ足の獣、猿、最後に人間と母親の胎内と同じ道筋を辿って人間という生物の形が作られている。

体重およそ3000グラムに達すると培養カプセルから取り出し、成長の記録と戦闘の訓練を行う育成棟で管理する。そういったことは専門外なのだが所長だから定期的に見に行かなければならない。


「O型の成長記録は順調に取れているかね」

「はい、これからの個体が戦闘に役立つ訓練と教育の方法を確立していっています」

「そうか、引き続き記録しろ」

「それと一つ。O型の中でも飛び向けて高い数値を出している個体がいます。原因は遺伝子の突発的な変異ではないかと考え調査しています」

「新個体に流用できるなら続けても良いができないなら無視しろ」


作成するクローンはO型に使われた遺伝子に別の遺伝子を組み入れて改造する方針に決定した。当初よりクローンの基礎能力が下がる恐れがあったが、それを危惧して肉塊を作り出すよりかは余程良い。




研究所のすべてを赤黒い肉塊が覆っている。幾度も操作した細胞の遺伝子はO型の遺伝子の片鱗さえもない、ただ戦闘のためだけに生まれる命を作り出すものになった。

これまではうまく行っていたし今回もうまくいくはずだった。

だが結果としてクローン暴走し、自身の兄弟姉妹ともいえるクローン共を吸収しながら肥大していった。

その速度は凄まじく、危機を知らせる警報がなったときには既に研究所から出ることは叶わなくなっていた。

外に助けを呼ぼうにもここは非合法な研究施設で、暴走したクローンを殺したとしても生き残った全員が刑務所送りにされるだろう。


他の職員もどうにか脱出しようと肉塊に向かって火や電撃、溶解性物質を浴びせているがたいした効果はなくすぐに回復してしまう。

錯乱しているのか考え付かないだけなのか外と連絡を取ろうとしているものがいるが電波は暴走したクローンに邪魔されて通らないらしい。


「貴様ら!研究データを外部メモリに保管しろ!そうすれば我々がここでしてきたことは無駄ではなくなる!」


私が一括すると職員共は呆けた表情を見せるがすぐに動き出しメモリを探しに行った。暴走したクローンの自重で研究所の壁のひび割れは大きくなり、揺れが起こるたびにボロボロと剥がれ落ちていく。

配線系統も壊れて電灯は光らなくなり、僅かに残ったものも明滅を繰り返している。


身も知らない人間がわしらの研究を続け評価されるのは腸か煮えたぎるような思いだが、このまま何も残らず死んだらわしの人生は何だったのかと思ってしまうだろう。


「助けは、まだ来ないのか」

「そうですね、緊急事態なのは、伝わっていると思うのですが」


クローンの暴走から半日が過ぎ職員の精神も限界に近づいていた。非常用の光があるとはいえ閉ざされた空間すべてを照らすには足りない。


それに呼吸できる空気も少なくなってきているのか徐々に息苦しくなる。争う気概も起きず皆がただ呆然と死ぬのを待っていると建物が大きく揺れた。


「なんだ」

「今までの揺れとは違う」

「た、助けが来たんじゃないか!」


そうかもしれない。現にその揺れが起きてから暴走したクローンが仕切りに動き、この建物が放火する速度を早めているからだ。

攻撃が続けば暴走したクローンは倒れるかもしれないが、それでわしらが無事な保証はどこにもない。だが何も起きずこのまま窒息して死んでいくよりかはずっと良い。


「早くしてくれ」


その瞬間視界の全てを焼き尽くすように白い光が照らした。


・・・・・


「目標。取り込まれた建造物ごと焼却しました」

「ご苦労。帰還して良い」


突如山奥に現れた謎の赤黒い肉塊。その討伐命令が下り向かわせた場所は、大手企業が所有する土地だった。

そこにある建造物が飲み込まれたため焼却攻撃の命令が降りたが、なぜ救助活動もせずそんな命令を下したのかなど不可解なことが多く、同僚との話の種になるのは自然なことだった。


「なぜろくに調査もせず証拠も残らない焼却攻撃になったんですかね」

「上からの圧力があったって話だ。隠したいことがあったんじゃないのか」

「しっかし討伐したあいつも見たことない奴だったから、そういう研究でもしていたんですかね」

「そうだな、なにせあんな『魔獣』なんて見たことないからな」


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