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オルカトゥルカ  作者: lien-sh
一学期
3/44

記憶3:明来の魔法授業

 大前提として魔力とは原始的な単細胞生物に至るまでのすべての生命が兼ね備えているエネルギーのことだ。

 魔力は無意識から生み出され無意識に溜め込まれ、意識で指向性を与えることで操ることができるが、そうしたところで魔力そのものが何の性質も持たないから意味がない。


 魔道具は魔力を操って魔術を発動しているんじゃないかとなるが、あれは魔力そのものが現象を起こしているわけではなくて、意味が焼き付けた回路に魔力が流れることで魔術として発動する。

だから魔術は人の魔法や汎用の魔法と呼ばれる。


 高級品だが日常にある一般的な魔道具は義務教育の中で使い方を教わるが、それ以上となるとこういった学園で教わるほかない。そもそも魔術を発動させるための魔道具の使用制限を解除するのにこの学園が発行する資格が必要で使えないし、平和に過ごしていてそれ以上の魔術も使わない。


 それと亜来が魔力を水で例えるとそのままでは味がしませんが、わたしみたいに変質すると味が付く。魔術はただの水を加工して味を付けていると分かりやすく例えてくれた。

こういった例を出すのは私には出来ないから凄いと思う。


 話がそれたが魔法は普通は何も性質を持たずただ無意識に保有されている魔力を、才能を持つものが強い想いを抱いたことによって変質し、その強い想いに応じた性質を獲得した魔力の使い方をいう。


 魔力に炎の性質が加わったならその魔力は熱くなったり燃えているように見えたりするし、人によって火のイメージが異なるから温度や延焼のしやすさが違う。物体以外にも守るや伸びる斬るといった動作、寒いや煩い眩しいといった状態の性質を獲得することもある。


 獲得できる性質は一人一つが普通だが稀に二つや三つも性質を獲得するものもいる。

 それに獲得する意識に年齢は関係なく、百年以上生きた人が獲得した例もあるくらいだ。


 そして魔法の発現するほどの強い思いはいくつかに分類されていているが、亜来は夢型と呼ばれる最も安全なものらしい。


 夢型の名称は胎児の夢と呼ばれる論文からきていて胎児の夢を解説するには荷解き程度の時間じゃあ到底足りないから割愛した。


 それでなぜ最も安全かというと発現に本人の強い思いが必要ではないからだ。

 何でも細胞は原初の生命が誕生してから数多の進化の歴史を辿り今現在の私たち人の体に至るまで全ての記憶を覚えていて、普段は無意識の中でじっと息を潜めながら私たちの行動に影響を及ぼしているが、突然その記憶が鮮明になり魔力を変質させる。


 滅多に起きることがなく前回確認されたのは九年前でその前となると十九年前と聞けばその珍しさが分かる。しかも暴走の危険もないから他の型で発言した魔法よりも様々な場所で安全に使えるから、卒業したら軍に所属するつもりだそうだ。



「あとはここの講義で詳しく習うと思います」

「うん、ありがと。それで開けた段ボールはどこに置くの」

「横瀬さんが説明してましたが寮の裏に置き場があるそうです」


 なんだかんだ言って亜来の説明は分かりやすかった。

 魔術の例えも知っていた私にとってもすんなり理解できるものだったし、教材を渡すんじゃなくて丁寧に教えてくれるのも亜来らしかった。軍に入るよりも母みたいな講師や教師とか教育者になる方が道としてあっている気がする。


 まあ本人が軍に入りたいんだったら止める資格は私にないけど。


「もうそろそろ日が暮れる頃だから寮の食堂で夕食を食べようか」


 雲が茜色を帯びて辺りの景色が徐々にぼんやりと溶けていく。互いの顔も夕日でよく見えないから急いで寮に戻る。


 食堂で夕食をもらうと空いていた席につき食べ始める。

 今日の献立は入学式だからか豪華で豚カツとステーキから選ぶことができて、亜来はステーキとパンを選んで私は豚カツとご飯を選んだ。


 脂が程よく乗った豚カツはキャベツと一緒に食べると油を吸ってくれて食べやすい。ご飯は噛めば噛むほどに甘みを増してそこに味噌汁を加えて飲むと、二つが合わさった旨味と汁の暖かさで思わず頬が緩む。


「うまい」


 亜来はステーキを一口大に切り分けて丁寧に口に入れている。他のポテトや人参ブロッコリーなんかも汁をこぼさないし、付いてきたパンのバターも均一に塗っている。

 私だったら塗らずにそのままパンに乗せて一口二口で食べてしまう。



「そういえば紫の魔法はどういった性質なんですか」


 私たちふたりとも食べ終わってこれから片付けに行こうとしたタイミングで亜来が話しかけてきた。

 ああ、魔法の授業をしてくれたけど魔法の性質や使える魔術は知らないままだった事に気付いた。でもどうしようか。この場で教えても問題ないけど、気が進まない。


「私も亜来の魔法は知らないから二人共魔法を発動できる時に答え合わせをしようよ。私たちは魔法科なんだからいつまでも秘密にできる訳じゃあないし」

「ならまた後で魔法の答え合わせをしましょうね」


 本音っぽく誤魔化しながら部屋に戻って、少し遊んでから寝た。

 遅くまで遊んでいると品行方正な亜来に迷惑がかかりそうだし、明日も寝坊して遅刻になったら目も当てられないから。

 だから今日は早めに眠って明日に備えることにする。


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