第6話 作戦会議
私たちは、リビングのような空間で作戦会議をすることになった。部屋の中央には木製のテーブルがあり、その上には幾つかの書類と、香り高い湯気を立てるカップが並べられている。
「どうぞ」
ジュリが、私たちに紅茶のようなピンクと朱色の中間のような色をした飲み物を差し出す。ローズヒップティー? というやつなのだろうか。カップを受け取ると、ふわりと甘酸っぱい香りが鼻をくすぐった。多分、イチゴっぽい味がするのだろう。
「ありがとう」
私が礼を言うと、ジュリは小さく頷き、静かに部屋を後にした。階段を上がって2階に行ったことからみて、彼女は会議に参加はしないようだ。
「さぁて、じゃあ始めようか」
ダチュラがそう言うと、カルロは無言のままカップを口に運び、紅茶をひと口啜った。
「.....んで、何から話す?」
カルロが私に視線を向ける。その表情には、わずかな探るような色が混じっていた。
「まず、この世界について簡単に説明するよ。それから、君をここに連れてきた方法について話そう」
私は小さく、こくりと頷く。
「まず前提として、世界というのは一つじゃない。君が生まれ育った世界。この世界。君たちの世界で言うところの――世界線、という概念が近いかもしれない。その世界の境界を越えて、君をここに呼び寄せたのがカルロの能力だ」
「の、能力?」
思わず聞き返した。アニメや漫画でよく見るような、あの類の話だろうか?
「そう。魔法とは少し異なるが、この世界には生まれながらに特殊な力を持つ者がいる。大なり小なり、それぞれ違った特性を持つがね」
「つまり、カルロはその...能力者……ってこと?」
カルロは静かに頷き、また紅茶を啜る。
「能力というのは、その人の才能や性格に強く影響される。そして――」
ダチュラはそこで少し言葉を切り、私を真っ直ぐに見つめた。
「...私は『予言者』と名乗っただろう? そう、私の能力は未来を視ることができる」
「未来を……?」
「ただし、確定した未来ではない。あくまで“起こりうる”未来の一つを、だ。精度は最大で60%といったところだけどね」
60%...それは高いのか、低いのか……。
いや、でも.....
「未来を視るなんて、とっても便利な能力だと思うけど」
「.....そう思うかい?」
ダチュラの口元がわずかに歪む。
「未来が見えたとしても、それが変えられるとは限らない。むしろ、知ってしまったがゆえに選択肢が狭まることもある。本来の未来より悪い結末を迎えることだってある。だからこそ、慎重に使わなければならない能力なんだ。安易には使えない」
慎重に使うべき力。そう言われると、ただの便利なだけの能力とは違うように感じる。
「それで、君に話すべきことがもう一つある」
ダチュラは静かに言葉を切り出し、私をじっと見つめた。
「君をこの世界に連れてきた理由だ」
その言葉に、思わず息をのむ。
「……確か、王を倒すとか、そんな話だったよね?」
曖昧な記憶を手繰り寄せながらそう言うと、ダチュラは小さく頷いた。
「そう。でも、ただの王じゃないよ。この世界には、間もなく”魔王”が訪れる」
魔王――。
まるで物語のような言葉に、現実感が薄れる。だが、ダチュラの表情は真剣そのものだった。
これはフィクションではないと言うことが、ひしひしと伝わってきた。




