第26話 アザミの咲かせた運命
”ダチュラが死んだ”
それが脳にこびりつく。
何度振り払っても、何度否定しても、頭の奥で木霊し続ける。
――私のせいで。
守るために死んだ。
命を落とした。
アザミの胸を、ひび割れるような痛みが貫く。
喉の奥が熱い。胃の中が焼ける。
「……ちく…しょう……!」
カルロの背中を殴った。
それはまるで、何の手応えもない虚空を打つようだった。
こんなことをしたって、ダチュラは戻らない。
それでも――この痛みの行き場がない。
――もし、あのとき私が。
――もし、私がもっと強かったら。
――もし、私がダチュラの選択を拒めていたら。
……そんなこと、いくら考えたって無駄だ。
わかってる。
でも。
「なんで……私なんかのために……っ!」
搾り出すような声が雨に溶ける。
答えなんてない。
耳鳴りがする。血の匂いが鼻を刺す。
体の中にまとわりつく罪悪感が、息苦しいほど重い。
ダチュラと出会って、まだ数日しか経っていない。
それなのに、こんなにも苦しいのはなぜだろう。
彼女の言葉も、仕草も、温度も、何もかもが胸にこびりついて離れない。
「なんで……」
知らなければよかった。
出会わなければ、こんな思いをせずに済んだのだろうか.......。
でも、もし出会っていなかったら――
.......ジュリちゃんだっているじゃないか。
どうせ守るならあの子を.......。
爪が食い込むほど拳を握った。
ダチュラがいた場所に目を向ける。
でも、何もない。
ただ雨が地面を打ちつける音だけが響いていた。
喉が詰まる。
息ができない。
吐き気がこみ上げ、カルロが駆け抜けた地面に吐瀉物が落ちた。
震えが止まらない。涙が焼けるように熱い。
――もう、触れられない。
何が雨で、何が涙なのか――もう、わからなかった。




