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欠落者  作者: 喜國 畏友
喪失編

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第24話 守るべき名

 最近は、いっつも似たような夢を見ている。

 薄暗いところに一人で立っている。

 静寂の中、影がゆっくりと濃くなり、やがて視界を覆い尽くしていく。

 そして…‥


 痛みがある。鋭く、熱く、そしてどこか遠い。

 腹のあたりが濡れている。じっとりと、生ぬるい。雨だろうか? いや……違う。血だ。私の血が流れている。

 指を動かそうとする。動かない。息を吸おうとする。肺が重い。喉の奥が焼けるように苦しい。

 

 誰か……アザ…‥ミを…..。

 

 口を開こうとする。声が出ない。喉が詰まる。まぶたが重い。

 ……寒い。

 はぁ.....もう、いっか。 

 意識が、ふっと、闇に落ちた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺は、何をしている?

 たった今、ダチュラが死んだ。

 

 今回の失敗は、全部俺の責任だ。

 胸の奥が締めつけられる。だが、それを嘆く資格は俺にはない。

 だから、作戦失敗も、相棒の死も嘆いてはならない。


 アザミ。


 ダチュラへの手向けがあるとするのなら、きっとコイツを守ってやることだ。

 

 それに、コイツは巻き込まれただけだ。

 元はと言りゃあ、コイツには何の関係もない。

 それなのに、命を賭けている。


 だから.....


 俺が、死んででも、コイツだけは.....

 絶対に守りきる!!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 どうして、私はいっつも"何か"を失うんだろう。

 別に、幸せや贅沢を求めてるわけでも、特別な人間にもなりたいわけじゃないのに。

 ただ、平穏に、好きな人と過ごして生きたいだけなのに。普通のことなのに。

 

 なんで、こんな"欠落者"(異常者)に奪われ続けなきゃいけないの?


 考えがぐるぐると渦巻き、視界が歪む。

 それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。

 

「おい、行くぞ」


 カルロの声が響く。

 彼はすでに駆け出していた。さっきよりも頻繁に能力を使っている。

 最初からそうしていれば……


 いや、違う!!


 カルロは、悪くない。

 誰も悪くはないんだ。



 なぁ……ダチュラ、お前ならこんな状況をどう切り抜けた?


 答えはない。だが、俺はもう迷わない。

 お前の意志は、俺が背負う。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 其れは、逃げた二人を静かに見つめていた。

「.....まぁ、いっか」


 死の神は、死んだダチュラの方へと視線を変える。


 其れは、ダチュラの亡骸へと手をふっと伸ばしていく。


 そして.......。



「ちょっと、待ったーーー!!!」


 声の轟音と共に、何か跳んでくる。


 オレンジがかった朱色の髪が夜風にさらさらと靡く。

 端正な顔立ちに、鋭い眼差し。鍛え抜かれた体躯と相まって、誰が見ても強い戦士であることが伺える。

 

 それは、"欠落者"も同様であった。


 ——名を、イグニスという。

 

「今日は、忙しいな」

 死の神は、ぽつりと呟く。


「そこの人.....死んでるな? お前がやったのか!」

「あぁ、そうだ」


「っ! そうかよ!!」


 次の瞬間、イグニスは地を蹴った。

 燃え上がる闘気と共に、戦いの幕が上がる。

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