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欠落者  作者: 喜國 畏友
運命、決戦編
175/222

第165話 予兆の酒杯

「なあよぉ、ダチュラぁ」


 くぐもった声に、ダチュラはゆっくりと顔を上げた。

 そこには、酒に火照ったような頬をした小太りの男——タイトがいた。


「ん?

 なんだい、タイト」


「お前ってよ、どうやってあいつらに勝つつもりなんだ?」


 タイトの問いに、ダチュラは一拍置いてから静かに息を吐いた。


「……まぁ、手短に話すとね。アザミがいなければ、私たちはもうとっくに勝っていたはずなんだ」


「そんな、アザミって奴が運命を変えるようなことしたのか?」


 タイトが目を細める。


「確かに、彼女は直接的には運命を変えていないよ」


「あぁ?」


 タイトの語気がわずかに荒くなるが、ダチュラはどこ吹く風といった様子で笑みを浮かべる。


「時間は、嫌でもたっぷりあるんだ。

 ゆっくり話そう」


 そう言って手を挙げ、店員に酒を注文した。


 間もなくして運ばれてきたグラスが、カタンとテーブルに置かれる音。

 タイトは、それを一息に煽る。


「.......で、どこまで話したっけ?」


「アザミは、直接運命を変えてないってところだ」


「あぁ、そう。

 そうだった。そうだった。まず、アザミがいて一番運命が変わっちゃったのは、エーデルと“王守(おうしゅ)四柱(しちゅう)”が主に手を組むことだよ」


「その変の説明はいいんだよ!

 無駄だ。そのへんは知ってる」


 苛立つように、タイトがテーブルを軽く叩いた。

 同時に、二杯目の酒が運ばれてくる。


 グラスを握りしめ、彼は再びごくりと喉を鳴らすように飲み干した。


 ダチュラは、肘をついて頬杖をついたまま、じっとタイトを見つめていた。

 その視線は、何かを測るように静かだった。


「じゃあ、なにを話してほしいのさ」


 タイトは、酒精に煽られたかのような鋭い目つきで、ダチュラを睨みつけた。


「お前......なんか、隠してることあんだろ」


「例えば?」


 淡々とした口調。だが、その裏にある緊張は、確かにタイトにも伝わった。


「そうだな......

 例えば、——近い将来に、俺が死ぬこととか」


 ダチュラの瞳がわずかに見開かれる。


 その一瞬の反応が、何よりも雄弁だった。

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