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欠落者  作者: 喜國 畏友
運命、決戦編
172/222

第162話 お誘い

 場の空気が、一瞬、静止したように感じられた。


 扉の前に立つレイスの影が、細く長く延びている。


 フィンの問いに、レイスはほんの少し間を置いて——


「……三光(さんびかり)の武は、もういないの」


 ぽつりと、呟くように言った。


 その言葉が意味するものを、すぐに理解できなかったのか。

 エーデルもカルロも、わずかに眉をひそめたまま、動かない。


 レイスの声は、どこか淡々としていた。けれど、その奥に潜むものは、深く、重く。


「死んじゃったの。弟子の私が、燃え残った刀身を拾いに行った。……あの人らしい最期だったよ。綺麗な背中だった」


 沈黙が、場を支配した。


 誰も、すぐには言葉を継げなかった。


 ただ、レイスの口元に浮かぶ笑みだけが、哀しみによって引きつっているのが、誰の目にも明らかだった。


「……誰にやられた?」


 フィンが、低く問う。


 それは、戦士としての問いだった。

 仲間を失った者同士の、ただ静かな確認。


「私もよくは分からない。けど......この前国を襲ったみたい」


 レイスの答えは、ひどく静かだった。


 しかしその言葉を聞いた瞬間、エーデルが椅子を蹴るようにして立ち上がった。


「間違いない!

 ダチュラと一緒にいたあの“剣士”か!」


 エーデルが言い終えると、カルロが低く息を吐いた。


「アイツ……マジにバケモンみてぇだな……」


 フィンもまた、深く眉をひそめた。


 レイスが言う。


「あぁもう、“三光の剣豪”は、あいつの手の中よ」


 その一言で、誰もが理解した。


 すでに、“賊”は......

 ——一人の人間が、絶対に手に入れてはいけない力を手に入れてしまったことに。


「それで、話ってのは?」


 レイスが小さく笑って言う。


「ふふ、もちろん。

 一緒に、あいつを殺そうって誘いに来たの」

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