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欠落者  作者: 喜國 畏友
喪失編
12/222

第11話 ある異様な男について

「.....なんだよ、アレ?」

 そんな大きすぎる独り言を呟いたのは、イグニスという顔立ちの整った好青年だった。端正な顔立ちに、鋭い眼差し。鍛え抜かれた体躯と相まって、誰が見ても強い戦士であることが伺える。


「...(わか)らない」

 独り言に返答するのは、その美しい容姿を観れば息をするのを忘れるほどの絶世の美少女である。名をセリーヌといった。


 彼らが、"王"に下された命令は、"荒地の魔女"という厄災の死の確認であった。

 "荒地の魔女"は、北の荒地、すなわち国の二割近い面積を支配していたという。

 その間、"王"は被害を恐れ、誰も踏み入ることが許されなかった。


 しかし、ようやく彼女の討伐(とうばつ)が報告された今、その真偽を確かめるべく二人は魔女の館へと足を踏み入れたのだ。


 だが、"荒地の魔女"の住んでいたとされる館まで辿り着ても、彼女の死を確認できるものはなく、代わりに彼らの目の前にあるものは、その城の前であぐらで大きな野良犬を焼いて不味そうにクチャクチャと音を立てて喰らっている異常者であった。

 

 あぐらをかき、大きな野良犬を焼いている。

 滴る油に炎が弾け、獣臭さと焦げた匂いが辺りに充満する。

 その男は、焼け焦げた肉を不味そうに咀嚼し、クチャクチャと嫌な音を立てていた。


 不気味だった。

 異様だった。


「お前は、なにをしている? 一体何者なんだ?」

 イグニスは己の内にある不気味さを懸命に隠して(ことば)を発した。

 セリーヌは、状況を理解しようとすることに心血を注いでいた。


「あ゛ぁぁぁ」

 彼は、返答はしなかった。

 (けだもの)のように唸ることと威嚇することしかしなかった。

 ギラついた目でこちらを睨む。

 唾液が口の端から垂れ、牙のように鋭い歯が露わになった。


「彼は、話すことが出来ないんじゃないの?」

 セリーヌが自分の考えをイグニスへと述べた。


「いきなり、襲ってくるって可能性はあるか?」

 淡々と返す。


「さぁ、どうでしょう。威嚇してくるくらいだし...でも、放置はしないんでしょ?」

 イグニスの方を見ながら聞いた。


「あぁ。本国に持ち帰る」

「襲われないかしら?」

 セリーヌは不安げに言葉を発した。


「その時は、問題ないよ。セリーヌ。俺はこの国で最強だから」

「あっそ。でも、この人は本国の人じゃなさそうよ? それに、最強ってのは殴りあいの話でしょ?」

「まぁ、剣を握らせて最強なのは、あの"三光(さんびかり)"だからな。流石に英雄の継承者に勝つのは無理だ」

「でも、私あの人苦手なのよねぇ」


 この異様な男が、何を秘めているか──

 まだ二人は知らない。

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