第10話 能力
「だから、最初の私たちの目的は"王"を殺す。.....暗殺することだ」
ダチュラは、私の目をじっと見つめて言った。
でも…..…。
どうやって?
というか、"王"を殺すって、テロ行為とか反逆行為と変わらないのでは?
それって悪いことに加担するってことで.....。
椅子を引き、思わず立ち上がる。
「どうやって!?」
思ってたより声が出てしまった。
しかし、次の言葉は、鋭く静かだった。
「俺が殺る」
その言葉を発したのは、隣にいるカルロだった。
「あなたにそんなことできるの!?」
「できるね」
「は? どうやってよ!」
反省していだ、声量は変わらなかった。
しかし、カルロの答えは依然として変わらない。
「俺なら、できる」
答えになってない。
まるで話にならない。
「大丈夫。彼は空間を操る能力者だ。暗殺なら出来るだろう」
と、ダチュラが口を挟む。
「.....それも予言ってやつ?」
「...私は、自分の能力柄、勘はかなり当たる方なんだ」
勘って.........。
とても信用できない。
しかも、人殺しなんて.......。
「アザミ。任せろ」
カルロは力強く私にそう言った。
彼の表情には、迷いや不安の色は微塵も感じられない。ただ、静かで、そして強い決意を感じる。でも、いやだからこそ.....。
「.....分かった。二人を信じるよ.....でも.....二人の能力の詳細を教えて」
「かなり、太々(ぶて)しい野郎だな。まぁいいか、俺の能力は──」
「異次元へ出入りすることができる。これを利用して、瞬間移動に似たことができる。お前をこっちへ連れてくるのにも使ったやつな? んで、距離が遠ければ遠いほど消耗も激しい」
どこにでも行けちゃうドア的な能力なのか。
「知らない場所とか行ったことない場所にも行けるの?」
「おう。だが、この前みてぇな世界線を飛び越えるのは、消耗とか、そういう次元の話じゃねぇ。寿命削る技だからな。ぶっちゃけると、多分お前連れてくるのに、寿命50年か60年くらい使った」
その言葉を聞いて、絶句することしか出来なかった。
「.....そこまで...して.....」
私は、カルロを誤解していたのかもしれない。
ただ、嫌な奴だと思ってた。
「ふふふ。彼はツンデレだからね」
ダチュラがまた口を挟む。
まるで、カルロを何とも思ってないように。
「.....ちょっ.....待ってよ」
「アザミ。それは、カルロを侮辱することだよ」
ッ.....!!
「さぁ〜て、私の能力を大発表だね ♪」
「予知夢を見ることができるよ〜。断片的なビジョンとして現れることが多くてね、具体的な映像とかぁ〜音とか感覚として感じる場合も結構あるかな。見た未来を回避することも可能。だけど、超大変。毎日みることが出来るわけではないかなぁ。制度は大体60%くらいかなぁ〜」
「ん.....凄い能力だ...ね」
「ちょっ.....絶対カルロと比べてショボイって思ったでしょ!?」
そうゆう訳ではないけど.....
「二人とも、能力系の漫画とかアニメならチートレベルで強いね」
ふと思ったことを口に出す。
「まぁ、確かに私たちの能力は使い勝手、いい方だよねぇ〜」
「だな」
そう言い、二人とも美味しそうに紅茶を飲んでいる。
ふと、思う。
「ねぇ。私が能力を使えるようになることって無いの?」
「それは無いよ」
うわ、即答で断言か。
でも、だとしたら私ってどうやって世界救うんだろう?
「...そうなんだ」
「うん。生まれ持つ才能みたいな感じだからね。こっち生まれじゃなきゃ可能性0だね」
そっか。まぁいっか。痛いのと嫌だし。
そんなことを考えながら私も紅茶を飲んだ。
......これ、結構美味しいな。
◇ ◇ ◇
†
カルロ 能力 『転移者』
人類がまだ世界を歩む手段すら持たぬ時代より、この星に満ちていた法則を操り、空間そのものを支配する能力を持つ。
†
道を断つ壁も、広大な距離も、彼の前では意味をなさない。
空間とは絶対ではなく、繋げることも、断ち切ることすらも可能。
一歩踏み出せば、そこに道が生まれ、一瞬の閃きで戦場すら塗り替える。
時間よりも速く、距離を無視し、ただ己が望む場所へと至る。
──それが、空間という概念を超越する逸脱の存在、『転移者』である。
◇ ◇ ◇
†
ダチュラ 能力 『予言者』
人類が夜空を仰ぎ、未来を占おうとした遥か昔から、この星に流れ続ける因果の糸を読み解き、運命を見通す能力を持つ。
†
過去は絶対ではなく、未来は定まっていない。
しかし、世界に刻まれた無数の兆しは、すべて「あるべき結末」へと繋がっている。
見えざる流れを識り、まだ起こらぬ事象を知り、あらゆる可能性の中から「最善」を選び取る。
それは祝福か、呪いか。
彼女が見通すのは、希望か、絶望か。
──未来とは未知ではない。ただ一人が、すでに視た光景なのだから。