これからの平常は?
男の友人も登場させてみました
「じゃあ、ここで一旦お別れだな。頑張って勉強して来るんだぞ」
「うん、お兄ちゃん。それじゃあね~今日も早く帰ってきてね~」
二人で家を出て、学校へと辿り着き、各々の教室に向かう為、そう言って妹と別れ、自分の学年の玄関へと辿り着くと、
「九重君、先日は助けて頂きありがとう御座いました」
「あ~、え~っと?橘さん」
「やっぱり、同じ声ですね。あの時初対面だと思ったのに、最初っから橘さん、とそう呼んで頂いてたので、あの後、スタジオの中でマネージャーのお姉さんにお伺いしたら、内緒でと教えて頂きました」
「あ、あ~、そういえば、自分で言ってたね、橘さんって、そうか~。俺としては数日前に告白しに行った相手としての印象が残ってたから、ついつい名前を呼んでたのか。以後気をつけないとね。まあ、今回のは自業自得か。で、その事で何か?」
「いえ、あの時は男性二人に詰め寄られて、怖かったので、後で考えると、碌にお礼も言っていなかったので、ちゃんと、お礼を言おうと思いまして」
「ああ、そんな事、気にしなくていいんだよ。自分が助けたくてした事なんで、別に女性に恩を着せようなんて思ってした事じゃあないからね」
「いえ、それでも私は危ない目に合わずに済みましたから。本当にありがとう御座いました」
「うん、それじゃあ、キチンとお礼は伺いました。で、それだけでいい?」
「あ、え~と、言葉だけでなく、お礼にご飯でも、ご馳走させてもらえれば嬉しいんですけど、駄目でしょうか?あ、でも、それ程、裕福でもないので、ファミレス位しか行けないんですけど・・・」
「ふふっ、まあ、別に食べるとこはファミレスでも良いんだけど、うち、今、妹と二人暮らしで、妹が食事を作ってくれてるんで、自分だけで食事に行く事は出来ないいんだ」
「え~と、でしたら、妹さんもご一緒に。それも、お二人が行ける日取りで構いませんので」
「う~~ん、そういえば昨日の夜、妹が言ってたっけ、話を聞いてみたいって。なら話してみるか。
え~と、橘さん、今すぐ返事は出来ないけれど、妹に聞いてみるよ。橘さんに告白を勧めたのも、その妹なんだ。で、振られた事も勿論報告したんだけどね、もう脈はないか、聞きたいなんて言ってたから、食事に行くか聞いてみるよ」
「ホントに?ありがとう、九重君、それじゃあ、返事を待ってるよ。あ、それと、これからは、何時でも普通に話し掛けてね~」
そう言って足早に去って行く彼女と入れ替わるように、
「お、おい、今、お前、橘さんと話してた?それも親し気に?」
「おはよう、颯太。何、朝から騒いでるんだ?」
「いやいや、何冷静な態度で返事してるんだよ。今の橘さんだろ、三姫の」
「うい~、おはよ、お二人さん」
「おはよう、拓也」
「で、なんで、こいつ雄叫びあげてんの、朝から?」
「馬鹿、お前今来たから、さっきの見てないんで、そんな事言えるんだよ。こいつさっき、橘さんと話してたんだぞ、あの橘さんと。俺たち、女性に縁のない三人組なのに、一人だけ勝ち抜けしようとしてるんだぞ、それが叫ばずにいられるか」
「馬鹿はお前だよ、颯太。聞いてるだろう、こいつ、先週、三姫全てに告白して振られてるの。たぶん可哀想だから、会ったついでに、挨拶でもしたんじゃないのか?」
「あ、そうか。そういえば、そうだったな。優しい橘さんの事だ、そういう理由なら納得だ。いや~疑って悪かったな、わが友よ」
「なあ、拓也。こいつ、友達だっけ?」
「いや、俺も、常々疑問に思ってたんだ。友達の枠に入れて良いのか」
「あのな~お前ら、それは、言い過ぎだろう?一年の時から一緒に過ごした仲なのに」
「過ごしたのか?」
「いや、覚えはないが?」
「おい、俺泣いても良いか?」
「ま、軽い冗談はここまでにしておくか、なあ、拓也」
「そうだな、九重」
「でもよ~、お前だけ相変わらず、名字呼びだよな、皆から」
「それは仕方ないぞ、颯太。こいつの名前、有名人と一緒だからな。街中で名前なんて呼んだ日には、注目集めまくるもんな」
「それもそうだな、可哀想に。九重」
「いや、別に名字でも困ってはいないが」
「おはよう、九重君、国吉君、金城君」
「あ、お、おはよう御座います、副会長」
「お、おはよう御座います、小笠原副会長」
「おはよう御座います、小笠原さん」
「先週は済まなかったな、いい返事を返せなくて」
「いいえ、自分でも妥当だと思っているので構いませんよ。こちらとしても妹に言われたから、などと、正直失礼な事をしたと、反省しているくらいですから」
「で、その事を抜きにして頼みがあるのだが、聞いてもらえるかな?」
「え~と、もう直ぐ授業も始まりますので、今すぐというのは」
「ああ、そうだな。では、良ければ放課後、生徒会室にでも顔を出してもらえないだろうか?」
「先週呼び出しに応じて頂きましたので、俺も応じさせてもらいますけど、生徒会室ですか?」
「ああ、そこが一番目立ちにくいからな」
「そうですか。それでは放課後、寄らせて頂きます」
「ああ、待っているよ」
そう言って立ち去る、彼女を見送りつつも、自分達三人も教室へと急ぎ、その途中で、
「なあ、やっぱり小笠原副会長も、橘さんと同じだと思うか?拓也」
「そうじゃないか?なあ、九重」
「う~ん、振られた以外、心当たりないからな~、正直判らない」
「「だな」」
「でも、三姫のうち、二人も朝から声掛けて来るとか、ラッキーだな、今日は」
「そうなのか?正直その気持ちが判らないんだが」
「おまえ、馬鹿なの?告白までしといて。それに三姫なんだぞ、あの二人。この学校の三大美女なの、声掛けられたら、ラッキーに決まってるだろ」
「だそうだぞ、拓也」
「いや、俺に振られても、返事は返せないぞ、九重」
「残り一人も、声掛けてきてくれたら、パーフェクトだな」
「自分の事でもないのに、何でこんなに盛り上がってんだ、颯太の奴」
「判らない。いきなり叫び出す奴だからな」
「お~い、まださっきの事言いだすのか?また俺を泣かす気か?」
「「また?泣いたところを見てないが?」」
「二人して、俺を虐めて楽しいのか?」
「虐めてはいない。揶揄ってるだけだ」
「なお悪いわ~~」
楽しく読んでいただけたら幸いです。