放課後の出来事
今日まで主人公が登場できませんでした。申し訳ありませんです。
「小笠原さん、いらっしゃいますか~」
「本当にいらっしゃたのですね、橘さん。どうぞ中へ」
「お邪魔しま~す。わ~、生徒会室の中って、こういう感じなんだね」
「こういう感じが、どの様なものかは判りませんが、ずっとこの備品で過ごされてるみたいですね」
「やっぱり、普通の教室の机をくっつけて、並べた場所じゃなくて、何か高級感ある机と椅子だね」
「ああ、そういう事ですか。確かにこの部屋にある机や椅子は、普通生徒が使っている物とは違いますね。で、本日のご用件は何だったのでしょう?」
「あ~、え~とね、実は・・・・」
「すいません。小笠原様はいらっしゃいますか?」
「友染様、ドアを開けて入られる前に、声はかけて欲しかったな」
「あら、私としたことが、申し訳ありませんわ。まあ、橘様もいらっしゃったのね。尚更、申し訳ありませんわね」
「え~と、友染さんも、小笠原さんにご用があったのですか?では、私は出直しましょうか?」
「いえいえ、先に来られている橘様を追い返すようなことは出来ませんわ。それに私のは大した用事という程の事ではありませんので、お気遣いなさらないで下さい」
「ですが、学園で人気のお二人が揃われるなら、私は邪魔でしょうから」
「何を言っておられるのです?人気と言えば橘様もではありませんか。同じ三姫と皆様に言われているみたいですし」
「とんでもない。お二人みたいに皆が憧れる高嶺の花には近寄りがたいという、庶民感覚の人達に何故か人気があるだけで、お二人とは比べられる程のものではありません」
「そんな事を仰るなら、私なんかも、家柄と容姿だけで憧れられてるだけですわ。そんなに差はないと思います」
「いえ、かなりの男子生徒がお二人に告白なさってると聞いてます、友達から」
「それを言うなら、橘様。貴女が一番告白数が多いと、私は聞いておりますよ。まあ、そんな事も去年一年間で、粗方終わり、今年になってからは、お互い殆どないみたいですが。ああ、この前此処にいる三人に告白した方は、いたようですが」
「ああ、九重君ですか?あんまり顔も良く知らなくて、成績だけは優秀って友達からは聞いてましたが、印象的に、直ぐ断ってしまいました」
「そうですわよね、人の第一印象は大切なもの、幾ら成績が良くても、告白に身なりさえ整えて来られない方は、私もどうかと思いましたわ」
「あ~、それに関しては私も同意見なのだが、話が進まないので。橘様、先程言い掛けた話なんだが、どういう事だろうか?」
「え~と、友染様もおられるので、言い難くはあるのですが・・・」
「まあ、私には聞かせられないお話しだということですか?」
「いえ、友染様という事ではなく、本来は誰にも言えないというか・・・」
「ですが、言ってもらわないと、返事も返せないのですが、橘様」
「ですね、小笠原さん。え~とですね、実を言うと、生徒会に、全校生徒の名簿みたいなものがあれば、見せて頂きたいな~、と、そう思いまして。駄目でしょうか?」
「確かに行事や交流を円滑に行う為、生徒名簿はありますが、理由も聞かずはいどうぞ、と見せられるものではありません。個人情報の観点からも、生徒会メンバーでさえ、火急の要件、虐めや不登校の関係性などを、調べる時以外は、見ない様にしている物ですので」
「そ、そうなのですか~、では、閲覧は無理そうですね。諦めるしかなさそうです。失礼しました」
「まあ、そう言わず、理由を話されては、橘様。それ如何では小笠原様も見せて下さるかもしれませんわよ」
「で、ですが、口外無用の約束をしてますし」
「私達も口は堅いです。それに、私達に無闇に話し掛けて来られる方もおりませんし」
「私も、次期生徒会長として、生徒の秘密を漏らす事は無いと誓えるが、それでも理由は言えないかな?」
「え~と、そうですね。お二人は男性に興味はなさそうなので、大丈夫かもしれませんね」
「まあ、橘様。男性に関しての調べものですの?貴方の好きな方ですの?」
「私の好きな方と言うか、皆の好きな方と言うか・・・」
「どういうことですの?皆の好きな方で、何故生徒名簿なのです?」
「実は私の姉が最近そこそこ売れだした、メイクアップアーティストをしてまして、つい先日念願かなって、レンさまを担当したんです」
「「待って、レンさま~~?」」
「レンさまって、あのレンさま?橘様」
「あの雑誌やテレビに出られている、あのレンさまですの?」
「ええ、多分そのレンさま、だと思いますが、お二人もご存じなのですか?」
「もちろんですわ。あの方を知らない女子高生が居たら、見てみたいものですわ」
「ああ、そう言われればそうですね」
「それで、橘様のお姉様が、メイクを担当されたのが、どうかしたのですか?」
「いえ、あまりに家で自慢する物で、仕返しも兼ねて、姉の名前を出して、一目でいいから本人を見ようと、スタジオに行ったんです」
「「それで?」」
「スタジオに着く前に、変な男性二人に絡まれて、攫われそうになりました」
「「だ、大丈夫でしたの?」」
「そこで、颯爽とレンさまが現れて、助けてくださいました。本物の王子様でした」
「それ本当の事なの?空想とか妄想とかでなく?」
「はい。なにせ、そのあと関係者以外出入り禁止の、スタジオの扉を開けて、中に入れてくれましたから。で、レンさまのマネージャーさんと言われる、従妹の方とお話する事が出来たのですが・・・」
「「出来たのですが?」」
「う~~、言って良いのかな~、他言無用なのに」
「「早く続きを、橘様」」
「で、助けられた時に、初対面のはずなのに、私の事を橘さん、と呼んでた事が気になって、聞いてみたんです」
「レンさまが、橘さん、と、そうお呼びになられたのですか?」
「はい。なので、聞いてみたら、実はレンさま、この学園の生徒だと仰られて、でも、なんか昔、酷い出来事があったらしくて、下手に詮索したら、すぐに転校するわよ、と念を押されて」
「「え~~~、レンさまが此処の生徒~~。見掛けた事ないのですけど~~」」
「ですよね、私もです。ですけど、お姉さんから念を押されましたので、私が一クラスづつなど、確認して回ったりしたら、目立ちますので、そういう事も出来ませんので、名簿でこっそりなら、バレる事もないかと、そう思ったもので」
「さあ、お二人とも、何をなさってるの。その名簿で早くお調べしましょう。三人で調べれば、見逃すはずはないでしょう」
「そうですね、小笠原様、良い判断です。さあ、調べますわよ、橘様」
「あの~、お二方。男性に興味はなかったのでは?」
「「レンさまは、別です」」
「あ、そうなのですね。・・・・相談したの藪蛇だったかも」
「橘様、手が止まってます。ブツブツ言ってないで、早く」
「あ、はい、判りました」
楽しく読んでいただけたら幸いです。