事件の後は
帰宅するのです。
「あ、あれ、あなたは?関係者以外は入れないはずだけど」
「レ、レンさまに開けて頂きました。あ、あの~、メイクの橘を呼んで頂けないでしょうか?」
「メイクの橘さんね、ちょっと待っててね」
「は、はい」
そうして、少し待つと、
「あれ、彩、どうしてこんなところに?」
「こちら、お知り合い?橘さん」
「はい、妹の彩です。それでどうしたの、あなた」
「お、お姉ちゃん~、怖かったよ~~」
「ちょ、ちょっと、ホントにどうしたの?」
「橘彩さん、どうしてここに?」
「あ、も、申し訳ありません。理由ですね。そ、それはその~、私がレンさまの大ファンだと知っているのに、姉が昨日、散々、明日はレン君とお仕事~、レン君とお仕事~と横で自慢してたので、それなら姉の名前を出せば、一目くらいは本人を見れるんじゃないかな~と、スイマセン」
「ああ、そういう事。で、何で泣きそうに?」
「そ、それが、すぐそこまで来た時、変な男性二人にからまれて、連れて行かれそうになってしまって・・・」
「な、彩、大丈夫だったの?その男たちは?」
「それが、その時、レンさまが突然現れて、助けてくれたんです。初めは二人いたんで、レンさまに食って掛かってたんですが、簡単にあしらってくれて、それで、姉の事を話したら、案内してくれて、お姉さんと一緒に帰った方が良いって、ドアを開けて下さったんです」
「そ、そうなの、彩?レン君が助けてくれたの?」
「ああ、確かに、彼なら出来るでしょうね。なにせ、空手と合気道の有段者で、他にも色々やってるから。でも、あんまり、人と関わりたがらないのに、良く助けに入ったわね」
「そ、そうなのですか?幸さん」
「うん、ちょっと、前に酷い事があってね。結構知らない人には冷たいというか、人嫌いというか・・・」
「え、そうは見えなかったんですけど?」
「仕事の仲間はね。ちゃんと礼儀正しいし、誰彼構わずという事じゃ~ないから。でも、外で、でしょう?」
「あ、はい。でも、私にもそんなに冷たい感じはしませんでした。でも、あ、あれ?」
「どうしたの、彩?」
「私はレンさまの大ファンですから、すぐ判ったんですけど、レンさまは私を知らないはずなのに・・・」
「「知らないはずなのに?」」
「男たちに、その子は知り合いだ、と。それも私を橘さんって、呼んでました。私名乗ってもいなかったのに。どうして?」
「ちょっと聞くけど、彩さんって、高校生?」
「あ、はい。近くの蔵森学園の二年です」
「あ、納得したわ。あなた高校で結構有名?」
「有名かどうかは、判りませんが、知ってる人は多いと思います」
「じゃあ、やっぱり間違いないわね」
「さ、幸さん、一人納得しないで下さい。どういうことです?レン君のマネージャーなのは知ってますけど、それが何で、それだけで理由が判るんですか?」
「ええっと、妹さんの前では言いにくいんだけど・・・」
「この子、こう見えて口は堅いですよ。義理堅いし」
「はい、絶対口外しません。絶対です」
「まあ、もとは、彼自身が口を滑らせたのが原因だし、仕方ないか。彼ね~、同じ高校なの、彩さんと」
「「ええ~~~、高校生なんですか~~、それも同じ高校~~」」
「姉妹きれいにハモったわね。まあ、驚くのも無理ないか」
「で、でも、うちの高校でレンさまなんて、見掛けた事ないですよ。在籍してるなら今頃、女生徒が大騒ぎしてるだろうし」
「あ~、仕事忙しいから、休みがちだしね。目立たない様にしてるらしいから。それより・・・」
「は、はい。な、なんでしょう?」
「今聞いたからって、あまり詮索しない事。良いわね。じゃないと簡単に転校しちゃうから」
「え、そうなんですか?」
「言ったでしょう、前に酷い事があったって。一時期人間不信になりかけたくらいだから。なので、判った?余計な事はしない事」
「は、はい、判りました」
「宜しい。では、橘さん、仕事も終わってるみたいだし、二人で帰っていいわよ」
「「は、はい」」
「あ、二人とも橘さんか。じゃあ、萌さんね。でも、妹さんもね。お疲れ様」
「「お疲れ様でした~」」
スタジオでそんな一幕があった後、自宅に辿り着いた本人は、
「ただいま、さくら」
「お帰り~、お兄ちゃん」
「言葉より先に、笑顔で手を差し出さなくても、ちゃんと預かって来てるよ、ほら、これだろ」
「あ、ありがとう、お兄ちゃん。わ、表紙からお兄ちゃんじゃん。この刊もバカ売れ間違いなしだね」
「いや、俺が写ってるからって、それで売れる訳じゃないと思うけど」
「何言ってるのお兄ちゃん。写ってるから売れるんだよ。間違いなく」
「いや、まあ、さくらがそう言うなら、そうなんだろうが、今日仕事先の帰りに、一人と会ったぞ」
「一人って?」
「ほら、さくらが選んで告白させた、三人の内の一人。橘さんだっけ、彼女と」
「へ、どういうこと?」
「なんか、今日の俺のメイク担当の方の妹だったみたいで、お姉さん訊ねてきてたみたいだ」
「そ、そうなの?それで?」
「それでって、変装してないんで、気付かれる事もなく別れたよ」
「あ、そうなの?」
「うん。という事で、さくら手作りの晩御飯をお願い」
「了解。じゃあ、お兄ちゃん、手を洗って席に座ってて」
「ああ、頼んだよ、さくら」
などと、仲の良い会話を兄妹で交わしているのでした。
楽しく読んでいただけたら幸いです。




