始まるのは告白後
面白い話になるかは判りませんが、宜しくお願いします。
「病弱、陰キャのあんたが、沙織さまに何の用?」
「そうよ、こんなとこに呼び出して、なに様のつもり」
「あ~、え~っと、君達は、なに?」
「成績だけは優秀だけど、学校休んでるのは、家でガリ勉の為って本当かも。考えれば判りそうなのに、馬鹿なんじゃない?」
「沙織さまを人気のない処の、男が待ってるとこに、一人でなんて行かせられる訳ないでしょ」
「ああ、そうなのか。思いつかなかったよ。友染さんも普通の生徒と、同じ様に考えてたんだが、違うんだな」
「当たり前じゃない。我が校の誇る三姫のお一人なのよ、普通の訳ないでしょ」
「で、何の様なのよ」
「え?要件も望月さんに話すの?友染さんにじゃなくて?」
「私にでもいいわよ、どうせ碌な話ではないんでしょうけど」
「いや、安達さんでもおかしいと思うけど、まあいいか。友染さん、友達からでいいので、お付き合いください、お願いします」
「「は~ぁ?」」
「あんた馬鹿なの?家に鏡あるの?自分の容姿見て、釣り合うと?」
「無謀にも程があります」
「あ、あの~、九重さん、ですよね?何故私に告白を?」
「「沙織さま、応える必要はありませんよ」」
「いえ、お断りするにしても、理由くらいお伺いしておこうかと」
「お優しいのですね、沙織さま。で、どんな理由なの?」
「いや、うちの妹から、勧められて。友染さんなら釣り合うんじゃないか、と」
「「は~ぁ、あんたの妹もおかしいんじゃない?あんたじゃ釣り合う訳ないでしょう」」
「では、特別好きな所がある訳ではない、と?」
「はい。なので、お友達からお願いしたいと、そう思いまして。友達関係を経験すれば、良いとこ悪いとこ判るかな~と。今の生活では、接点がなさ過ぎて、どんな方なのか判りようがないので」
「男女の交際ではなく、お友達付き合いがしたいと、そう仰るのですか?」
「いいえ、出来れば最後はお付き合いしたいと思ってます」
「そうなのですね。男女交際ならお断りなのです。友達を分け隔てた事はありませんので、友達としてなら普通に話し掛けてください。御用はそれだけですか?」
「はい、そうです」
「でしたら、私はこれで失礼しますね。優奈さん、陽菜さん、戻りましょう」
「沙織さまは、ああ言われたけど、友達としても、なれなれしく話し掛けて来ないでね。クラスの皆から勘違いされると困るから」
「ほんと。身の程を弁えて欲しいわ。あんたなんかが付き合えるわけないでしょ、陰キャのくせに」
そう言って、三人そろってその場を後にする後姿を眺めながら、
「まあ、そうだよな~、今の姿なら、俺でもそう思うもんな~。よし、しょうがない、そのままを報告することにしよう」
と、一人呟きながら、自身もその場を立ち去るのでした。
で、自宅に辿り着き、玄関のドアを開けると、期待に満ちた顔の、仁王立ちで待ち構える妹の姿が。
「お兄ちゃん、どうだった?友染さん、つきあえそう?」
「いや、いつも通り、見事に振られたよ。まあ、俺でも、今のまんまじゃ、無理なんじゃないかと思うぞ。せめて前髪くらいは何とかしないと・・・」
「それは絶対だめ~~」
「そうは言っても・・・」
「お兄ちゃん。お兄ちゃんがキチンとしていったら、立場が逆になっちゃうよ。容姿だけで選ぶような人と付き合いたいの?」
「そうは思わないけど、交際を頼むのに、これはあんまりじゃないかな~と」
「あまい、お兄ちゃん。もう地元での中学生活を忘れたの?あれを繰り返す気?」
「忘れてないし、そんな気はないけど・・・」
「じゃあ、今のままね。私としては容姿にこだわらず、ちゃんと中を見てくれる人じゃないと、安心できないもん」
「いや、ま~、妹のお前には、当時かなり迷惑かけたから、言いたいことは判るけど、もう既に三人ともに断られたぞ。いっそ本当に中身だけを見てくれるような子を別に探すか?」
「それも、絶対にだめ~~。いい、お兄ちゃん?彼女を探すのは、普通の生活に戻るためだよね?」
「ああ、もういい加減、このスタイルでいるのも、大変だし、変装なんてしなくていい生活を送りたいと、そう思ってるぞ」
「じゃあさ、お付き合いして、普通に戻った時、その辺にいる子を彼女ですって言って、他の女性が納得するとでも?私の方がましだと、詰め寄られる未来しかないじゃない、昔みたいに」
「いや、ま~、そうなんだけど・・・」
「彼女ずらして纏わりつく子や、ストーカーまがいの子、家にまで押し寄せてくる子なんて、もういらないの。なので隣にいて、ああ、この人ならって人を、彼女にしないと、お兄ちゃんに未来なんてありません」
「でも、お勧めの三人は、さっき言ったように、既に振られたぞ。どうするんだ?」
「う~ん、こうなったら、しばらく様子見かな~、三人のうち、誰か気が変わるかもしれないし」
「そんな事は無いと思うけど、まあ、しばらくはこのまま様子見だな」
「三人に告白したのもじきに伝わるだろうし、あんまり告白繰り返し過ぎて軽く見られてもいけないもんね。よし、しばらくは静観といこう、お兄ちゃん」
「判った。で、着替えたら、バイト行ってくるから」
「了解。あ、幸さんに新刊貰ってきて~~」
「出来てたらな。じゃあ着替えてくるよ。で、後は任せた」
「は~い、ご飯用意しとくよ」
「ありがとう、助かります。愛おしい我が妹よ」
「も、もう、お兄ちゃん、そんなこと、職場で他の人に言ったら駄目だよ。職場では変装してないんだから」
「そんなこと、他の人に言う訳ないだろ」
「じゃあ、許す。終わったら早く帰って来てね」
「了解」
そう話して、二階の自室に戻り、着替えを済ませると、ガレージから出したバイクに乗り込み、目的地へと向かうのでした。
読み手が少なかったら、続かないかもしれません。御免なさい。