八重樫くん(2)
先週のイジめは酷かった、靴とカバンをプールに捨てられてビショビショにされたのだ。
私はスカートと見せパンも脱いでブラとショーツだけになる罰ゲームをした。
もちろん絶対に触らないように警告はしたけど。
八重樫くんはちょっと危ないくらいギラギラな感じでガン見していた。
大丈夫だろうか?
35歳素人童貞になってしまうコースは回避できたとしても性犯罪者になってしまうコースになってしまったら意味がない。
次の週はトイレの個室にとじこめられて外からホースで水をかけられたらしい。
私からするとカバンを捨てられるよりマシかと思ったけど、八重樫くん的にはこっちのほうがショックが大きかったみたいだ。
「八重樫くん、私はもうこれ以上は脱げないから別の恥ずかしいことをするわ」
「八重樫くんとキスする」
「でも八重樫くんが嫌だったらこれはやめるけど」
「嫌じゃない」
「即答ね、そんなに私とキスしたいんだ」
「したいです」
「正直すぎるよ八重樫くん。」
「それじゃあキスするけど恥ずかしいから目をつぶってくれる?」
八重樫くんは目をつぶって、ひょっとこかタコみたいに唇をとがらせている。
別にそんな口しなくてもいいのに、可愛くてちょっと笑ってしまった。
私は八重樫くんの頭のうしろに手をあてて少し顔を傾けるようにして唇と唇をちょっとだけ触れる程度にあわせた。
罰ゲームだからもう少し強くしたほうがいいかしら?
そう考えて、それからムニュっという感じで唇を押し付けた。
私の唇のうえで八重樫くんの唇が押しつぶされるような感じだ。
男の子の唇って思ったより柔らかいのね。
「はい終わりよ八重樫くん、感想はどう? 先週の嫌な気持ちは相殺された?」
「うん全部相殺された」
「あたり前よ私のファーストキスなんだから」
「えっ、そうなの?」
「えって八重樫くんは私をどんな女だと思ってるのよ初めてに決まってるじゃない」
「ごめん」
「つまり私はこれから一生どれだけ生きても八重樫くんのことを忘れないと思うわ」
「なにしろ私のファーストキスを奪った男なんだからね、今まで生きてきたなかで一番恥ずかしかったわ」
「ごめんなさい」
「八重樫くんが謝ることはないわ、でも君は私の唇を最初に奪った男になったわけだから、引き籠りとかは絶対に許されないわよ」
「わかった、絶対ならないよ」
「それからこれをあげるわ」
私は新しいカバンと教科書一揃いを八重樫くんに渡した。
前の週にイジめられてビショビシヨで使い物にならなくなった教科書で先週は授業を受けていたようだから。
玲子さんに頼んで買っておいてもらったのだ。
八重樫くんは感動して目がウルウルしていた。
ちょっとかわいい。
次の週、また教科書を取られそうになって八重樫くんはそいつに殴りかかった。
「その教科書はダメだ、殺すぞこの野郎!!」
逆に数人の男子に取り押さえられてタコ殴りにされているところに先生がやってきて大騒ぎになった。
八重樫くんは口の中が切れたのか歯まで真っ赤で吸血鬼かゾンビみたいだった。
男の子たちは全員停学処分になった。
退学にはならなかったけれど、大人の解決ということだろう首謀者は転校していった。
それで八重樫くんへのイジめは終わりになった。
「八重樫くん、私のうちにきて」
「えっ、もうイジめられてないけど。。。」
「最後にタコ殴りにされたでしょ、見ていて怖かったわ」
私の部屋で八重樫くんは完全に固まっていた。
タコ殴りは酷すぎる。 私の罰もかなり酷くないと釣り合わない。
私はブラをはずしておっぱい丸出しの上半身裸だ。
八重樫くんは硬直したままだ。
「ファーストキスだけじゃなくて、おっぱいまで見られちゃうなんて」
「しっかりしてよ私のおっぱいを初めて見た男になったんだから」
私は八重樫くんの手を握って、その手を私の素肌のおっぱいにあてた。
八重樫くんの手はすっごい汗ばんでいた。
八重樫くんはほぼ放心状態みたいだったけど、ちょっとだけ自分から手に力をいれて私の胸を軽くもんだ。
やっぱり健全な高校男子だ。
「これで契約は終わりよ八重樫くん、絶対誰にも内緒だからね」
「でも八重樫くんのことは私の記憶に一生残るわ」
学校での八重樫くんはちょっとだけ明るくなった感じがする。
彼も「桜小路のおっぱい見たのは俺だけだから勝ってる」とか思っているのだろうか?
そうだとしたらかなりキモい。
だけど、ちょっとだけ嬉しいかも。
なんにしても、あの感じならもうイジめられることはないように思える。
でも本当に恥ずかしかったよ。
中年オヤジの意識なのでそれくらい大丈夫だと思っていたけど、乙女の魂は弱々だった。
ブラを外したときは恥ずかしさで貧血おこして倒れてしまうかと思ったくらいだ。
でも、たぶんこのプロジェクトも成功のような気がする。