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桜小路古都の日常  作者: 雅流
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映像研(4)

約束通りに須賀は二人の映像研を引き連れて放課後に人狼劇の舞台練習を見にやってきた。


千葉くんが飛んで行って3人を桜小路古都のところに連れてきた。


桜小路古都は舞台監督をしている近藤くんと一緒にいた。


「来たわね変態監督。こっちは人狼劇の舞台監督をしている近藤くんよ」


「なるほど君が舞台監督か。それで人狼劇とやらの仕上がり具合はどうなんだ? 娼婦や未亡人が闘うと聞いたが」


近藤くんは事のいきさつがわからず目を白黒させているので桜小路古都が説明した。


「ほら私が留学用に提出するには人狼劇をやったという実績だけではなくて、それがどんな感じだったのかわかるような資料が必要でしょ。」


「それでこの須賀くんに人狼劇のメイキングのPVを撮ってもらうことになったの。 戦隊物好きの変態なんだけど千葉くんが言うには腕はいいらしいのよ」


「撮るとは言っていないぞ、そこのピンクルーが劇を見に来いと言うから来てやっただけだ」


「私はピンクルーじゃなくて桜小路古都よ、ちゃんと名前で呼びなさい「桜小路さん」でいいわ」


「これは失敬した。それではサク。さっそく舞台とやらを見せてくれ」


桜小路古都は珍しく眉毛を寄せて不満そうな顔をしたが、渋々という感じで言った。


「それじゃあ近藤くん、最初から通しでお願いできるかしら」


「わかった。それじゃあ桜小路さんも未亡人役で舞台にあがってスタンバイしてくれる」


桜小路古都は頷いて舞台に向かいながら後ろを振り返って須賀に言った。


「目をかっぽじってよ~く見ておきなさいよ変態監督」


「ふん、顔は整っているが未亡人というよりは娼婦がぴったりなアバズレだな」


千葉くんがあきれたような顔をして言った。


「桜小路さんのことをそんな風に言うと、この学園では生きていけないよ。すぐにファンの男子にとり囲まれてリンチにあいかねないから」


どうやら準備が整ったようで舞台が始まった。


まだ幕は上がっていないけれど舞台の袖から一人の男子学生がでてきた。


人狼を模しているのか獣のような仮面をつけている。


須賀は小さく頷いた。


「ふうん、なかなかいいじゃないか」


幕の前を舞台の中央まで歩いてくると、その学生は人狼ゲームのルールを説明し始めた。


どうやら彼は役者ではなくて前フリの説明役のようだ。


説明が終ると幕があがっていく。


幕が上がると異国の村の舞台装置が現れた。


高校生の演劇とは思えないような気合のはいったセットだった。


そしておもむろに演劇が始まった。


舞台には4人の役者が最初から登場していた。


兵士のような服装をした自警団長の役の学生が話しはじめる。


「大変だ。村の外れで何者かに人間が襲われた。」


もう一人の役者、これは教会のシスターだろう。


「それで、その方は怪我は重たいのですか?」


「いや、もう死んでいる。というか死体さえも獣に食い荒らされたようで誰なのかまったく判断がつかない」



そんな感じで舞台は進行していき、ついに村の広場に生き残った村人たち13人が全員集合した。


話し合いが始まり、未亡人役の桜小路古都が「私が預言者よ」と預言者であることをカミングアウトしたところで、突然舞台の袖からパンパンパンと拍手が響いた。


須賀だった。


須賀は舞台を見上げて桜小路古都に向かって言った。


「サク。もういいぞ。だいたいわかった」


それを聞いて桜小路古都は舞台から降りてきた。


「なによ、人狼劇はここからが面白いのよ。ちゃんと見てなさいよ」


「ふん、さっきの前フリの説明を聞いたからな。面白そうなゲームだということは最後まで見なくてもわかる」


「それに舞台セットも役者の衣装も高校生演劇とは思えないくらいに素晴らしい。 美術担当はぜひ映像研にスカウトしたいくらいだ」


「役者もいい、特に娼婦役のあの女の子と未亡人のお前の演技はなかなかだな」


それを聞いて桜小路古都はやっと表情が柔らかくなった。


隣りで桜小路古都を見ていた千葉くんがウワッと赤くなるほどの素敵な笑顔だ。


「どうやら目はフシ穴ではないようね、それじゃあ撮影はOKしてくれるわね」


「それは断る。私が撮る価値がない」


「なんでよ、今いい舞台だと言ったじゃない」


「高校生の舞台演劇としてはたぶん良い舞台になるだろう、だが映像として撮るとなると別だ。」


「どういう意味よ」


「映像として撮るには演出が地味で動きが少なすぎる、インパクトに欠けるし、期待感も演出できていない」


舞台監督の近藤くんがムッとしている。


須賀もそれに気づいたようだ。


「別に舞台監督の演出を貶しているわけじゃない、舞台の演出としては高校生にしてはよくできていると思う」


「ただし、私がこのサクに頼まれたのはPVだ。映像として視聴者に訴求するためには別の視点での演出が必要だということを言っている」


桜小路古都が言った。


「見てケチをつけるだけなら誰にでもできるわ」


「ふん、それではわからせてやろう。もう一度舞台をやれ。」


「二宮、お前が撮影しておけ私のEOSを貸してやる。」


「明日の放課後、もう一度会おう、今度は私が映像としての演出の例を見せてやる」



そう言うと須賀は桜小路古都の返事も聞かずに体育館を出て行った。

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