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桜小路古都の日常  作者: 雅流
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セイント先生

桜小路古都は夏休みに入って今までは週一回だったオンラインでの英語の個人授業を週二回に増やしている。


先生はセイント先生というアメリカ人のイケメン大学生だ。


以前は英語の個人授業と言っても日常の事を英語であれこれ話しているだけだったのだけれど、最近は桜小路古都が卒業後の進路について留学を視野に入れていることからTOEFLのスコアを上げることに絞って勉強している。


リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4つのスキルをバランスよく習得していかなければならないのだけれど、桜小路古都はリーディングとライティングはとても得意なのだ。


セイント先生がいろいろなトピックを提案してくれて、それに対してササッとエッセイを書いたりするのだけれど、試験と言うより楽しんでできてしまう。


セイント先生も「古都はリーディングとライティングは完璧だね」と言ってくれている。


ただし人を褒めるのがとても得意な先生なので油断はならない。


褒めて伸ばすタイプかもしれないからね。


リスニングではセイント先生が色々なアクセントやスピードで話してくれる英語を理解しなくてはいけないのだけれど、だいぶ慣れた。


たぶんこの分野ではセイント先生に勝る先生はいないのではないかと思えるほど、別人のようにアクセントやスピードを変えて話してくれるのだ。


そして普段はあまり聞かないようなけっこう専門領域的な話題とかについても話してくれる。


色々な国の留学生女子と日々コミュニケーションに励んでいる効果がこんなところに現れているのかもしれない。


とりあえずTOEFLはスコア100点以上を目指しているけれどセイント先生によれば、このまま勉強していけば古都なら大丈夫と言われている。


私が目指しているUSAの大学に入学するためにはTOEFLのほかにSATというUSAの大学を受験する場合の標準化試験のスコアも必要だ。


こちらはリーディング、ライティング、数学の3つのセクションで満点が1600点なのだけれど1400点以上はとらないとダメだとセイント先生に言われている。


模擬試験を試しにやってみたけどはっきり言ってかなりの難関だ。


でもSATは複数回の受験が認められているので、桜小路古都は二年生の冬と三年生の秋の2回SATを受けるつもりでいる。


実は数学もセイント先生に教えてもらっている。


母の紹介とはいえ契約は英語の個人授業なので完全に契約範囲外だと思うのだけれど、セイント先生はめちゃくちゃ優しいので全然なにも文句も言わずに教えてくれている。


実は桜小路古都はセイント先生を最近はかなり見直している。


最初は、はるばる日本まで留学してきて、ひたすら全世界から留学してきた女子大生を食べまくるばかりの爛れた大学生活を送っているチャラ男だと実は思っていた。


けれども話しているうちにセイント先生は語学だけではなくて、かなり広範囲な学問について見識が深いのだということに気がついた。


イケメンのうえに超賢い、日本文化への見識も深いしジェントルで優しい、女子大生を食いまくっているのには、食えるだけの理由があるのだ。


そりゃあ異国にきて心細いところにそんなボーイフレンドができれば留学女子たちも惚れるわけだ。


桜小路古都もなんだかんだで卒業後の進路を留学に決めたのもセイント先生のアドバイスというか影響が大きい。


最初の自己紹介ではカリフォルニアの大学から留学で来た・・とかサラッと言っていたけれど、その大学って間違いなく今、桜小路古都が留学を目指している大学に違いない。


この大学は世界でもトップ3に入るくらいの大学なのだ。


どうりで入学するのに必要な点数の目安とか詳しいわけだよ。


この大学ってシリコンバレーの中心地あたりにあるせいもあって多くの成功した企業やスタートアップが大学発祥のアイデアから生まれていることでも有名だ。


学校の学風とい意味では学際的なアプローチを重視していて、学生に対して異なる学問領域を横断して学ぶ機会を提供している。


たぶんセイント先生は文系理系の両刀使いだ、どうりで何にでも詳しいわけだよ。


ものすごく世界中から教師や先生が集まってくる大学なのでセイント先生はそこで世界中からやってくる女子大生を国際交流と称して食べまくっていたのは想像に難くない。


それにしてもなんで日本に来たのだろう?


セイント先生が留学で来ている大学って日本では一流大学だけれど、セイント先生の元の大学と比べると高級レストランと牛丼屋くらいの違いがあると思うのだけど。


セイント先生は「プラットホームが違うとそこで発生するコミュニケートにも違いが出てくる」とかわかったようなわからないような事を言っていたけど、たぶん日本の女の子に興味があっただけだと思う。


とにかくセイント先生は英語の先生であるばかりではなくて、留学経験者としての先輩でもあるわけだ。


そうか、つまりセイント先生が受験した高校生のときにはSATで1400点以上とっていたということだよね?


もちろん母国語が英語なのか日本語なのかというハンデはあるけれど、卒業までに1400点を超えなければ高校生のときのセイント先生より下ってことじゃん。


そもそも桜小路古都は他人より上とか下とかということを今まであまり考えたことがなかった。


当り前にいつもなんでも一番だったし他人と比べることに何かの意味があると思えなかったのだ。


だけれどもこのチャラいお兄さんが同じ高校生のときに自分よりもSATのスコアが上だったというのは面白くない気がする。


面白くないというより「なんで私のほうが下なの? 私全然勉強してないも同じじゃない」と思ってしまうのだ。


まあでもまだ1年半あるからね、それまでには1400点は超えるだろう。


今は自分とセイント先生を比べると先生のほうがだいぶ賢いと認めざるをえない。


本当にあらゆる分野のたくさんのことを知っているし、ディベートも強い。


いつも桜小路古都をデートに誘ってきて食べようとしているので文句を言うと逆にやりこめられたりする。


「なんで古都はデートに誘っても応じてくれないの?」


「先生とデートするともれなく食後のラブホまでついてくるみたいだからです」


「そうなればもっとお互いのことをよく知りあえるじゃない」


「私は恋人でもない人とセックスとかしたくありません」


「どうして?」


「どうしてって日本ではそうなんですよ」


「物事の善悪にナショナリズムとかカントリーとかは関係ないと思うよ」


「だって愛してもいないのにセックスするなんてふしだらじゃないですか?」


「僕は世界中の人と異文化交流をしてもっと色々な考え方や文化に触れたいと思って日本に来たんだ」


「セックスは普段では気づかない相手のことを気づけるチャンスがあるし、それにとても気持ちがいい」


「友達になればもっと深く相手のことを知りたいと思うし、相手にも気持ちよくなってもらいたいという気持ちも伝わる。コミュニケーションツールとしてセックスはとても有効だと思うよ」


「先生が別の女性ともセックスしていると知ったら、その女性は気持ちが傷つくと思います」


「どうして? 僕は一生あなたを愛します、だからセックスしましょう・・とか言いませんよ」


「まだお互いのことを良く知りもしないうちから独占的な契約を結ぶつもりは僕はないかな」


「相手にはちゃんとそう言うし、君のことをもっとよく知りたいし僕のこともよく知ってほしい、だからセックスしてみないって言ってみるんだ」


「その女性が翌日に他のボーイフレンドと楽しそうに話していても別になんとも思わないよ」


「だっておかしいでしょ僕とセックスしたかしないかと、その男性が彼女にとって話して楽しい相手であるかどうかは関係ない」


「僕たちはまだまだ色々な経験をして色々な人や考え方を知って成長していく段階でしょう?」


「日本人は「つきあう」って言うの? 自分とセックスするなら他の人とは仲良くしてはいけないみたいな独占的な契約だよね」


「その人が色々な人と話したり仲良くして、そういう経験で人間として成長していくのを阻害するようなことは親しい友達としてどうかと思うよ」


「先生のそれは詭弁です」


「古都はセックスした相手が他の女の人と仲良くしているのは嫌なんだね」


「嫌です」


「でも自分以外の女性とのコミュニケートを一律に禁じることは、相手の人間としての成長を妨げることになると思うよ、それってその人のことが好きだと言えるの?」


「先生の話し方はずるいです」


負けている。悔しいけど現時点のデイベートは負けている。


でもまあいいかなと思っている。


これから勉強して留学して今のセイント先生の年齢に私がなるころには今のセイント先生よりも賢いなって思える自分になっていると思うから。


今までもずうっとそうだったし、そうなるだろうということについては桜小路古都はほとんど疑問をもってはいないのだった。





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