表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜小路古都の日常  作者: 雅流
37/47

桜小路古都の事情

私の母親が出してくれたお茶を一口だけ飲んで、桜小路さんは真っすぐにこちらを見て言った。


「それで東野さんはいつから学校に来るのかしら」


夕方に母親が「またあのお嬢さんがきているわよ」というので桜小路さんを通してもらった。


母親はお茶だけを出すと気を利かせて部屋からでていった。


私が誰かに会う気になっただけで安心した気持ちが後ろ姿にもあらわれている。

心配をかけてごめんなさい。


「ごめんなさい、今はいつから行くとは言えない」


桜小路さんはそれを聞いても顔色ひとつ変えなかった。


「それは困るわ、明日か明後日には学校に来てちょうだい」


「どうして桜小路さんに私が学校に来いと言われなければならないの?」


「それは私が困るからよ」


「私なんかいなくても桜小路さんは困ったりなんかしないわ」


「私が困るか、困らないかは東野さんではなくて私が決めることよ」


「それじゃあ私が学校に行くか行かないかも桜小路さんじゃなくて私が決めることだね」


「それはその通りね、だから出てきてほしいとお願いにきているのよ」


「どうして私が休んでいるか聞かないのね?」


「東野さんが休んでいる理由を聞いても仕方がないわ、それで私にどうこうできる問題じゃないでしょうから」


「でも理由はどうあれ貴女に学校に来てもらわないと私がとても困るのよ」


桜小路さんにも困ることがあるのだろうか?


この世の中に桜小路さんが困ることがあるというのがあまり想像できない。


だって桜小路さんはなんでもできる人だから。


「私が学校に行くことのほうが桜小路さんには迷惑だと思うわ」


「そうよね、私もそう思ってたのよ、だから最初は東野さんがお休みで実は喜んでいたの」


桜小路さんは正直だ。 でもたまにそれはムカッとする。


確かに私は小学生のときのお取り巻きと同じ、だからいなくなってせいせいしたんでしよ。


「でも貴女がいないと人狼劇の練習が全然進まないのよ、それでは私はとても困るの」


どういうことだろう? 私の役のところだけ代役の人に代わってもらえば問題ないと思うけど???


「私がいないだけで、どうして練習が進まないの?」


「東野さんがいないとみんなが練習に出てこないのよ、いつも半分も人が集まらないわ」


桜小路さんと一緒に文化祭の劇をやるというのにどうして人が集まらないのだろう?


みんなあんなに喜んでいたのに?


「それ以上に困ったこともあるのよ、貴女がいないと色々な人がどうでもいいようなことで話しかけてくるの」


やっぱり私がみんなが桜小路さんと話をすることの邪魔になってたんだな。


でも安心して、もうお取り巻きは桜小路さんの周りから去るから。


「私がいなくてみんなと桜小路さんが直接話すことが増えたのならよかったじゃない」


「全然良くないわよ、みんな東野さんみたいに必要なことか不必要かなんて考えないで何でも話してくるのよ」


「でもそれがお友達っていうものでしょ」


「私はお友達はいらないわ面倒なだけよ」


「そうだね桜小路さんはお友達はいらないって決めてたんだよね」


「そうわかっているのは東野さんだけよ」


「東野さんが間に入ってくれないと毎日がとても大変だとよくわかったわ、だから学校に出てきてちょうだい、そうじゃないと私が困るのよ」


「でもそれじゃあ小学生のときと同じにならない? 私が桜小路さんのお取り巻きで今度は私が迷惑をかけるかもね」


桜小路さんは珍しく少し不機嫌な表情になった。 


「小学生のときのことは思いだしたくもないし話したくもないわ」


やはりあれは桜小路さんのトラウマなんだな、でも今は私がまたそのトラウマになろうとしている。


「今の私ってあの人たちと同じだよね、桜小路さんを囲いこんでいる」


桜小路さんは目を見開いた。


珍しく驚いた表情がこの世のものとは思えないくらいにかわいい、困ったひとだ。


「あの人たちと東野さんは違うわ、だって東野さんは私のお友達でしょ」


えっ。。。


「私が桜小路さんのお友達ってこと?」


「何よ。そうじゃないの?  私にはお友達は必要ないけど東野さんは私のお友達だと思ってるわ」


「どうして?」


「だって皆さん自分のために何でも私に近寄ってくるのよ、自分には何の利もないのに私のためになるからとなんだかんだ言ってくるのは東野さんだけだわ」


「みんな桜小路さんのためを思ってると思うよ。。。」


「そんなことはないわ、なんで私みたいな偏屈と仲よくしたいのか全然わからないけど、皆さん自分が私と仲良くしたいから寄ってくるのよ」


「東野さんは文化祭だとかハロウィンだとか色々と面倒くさいことを私に押し付けてくるけど、東野さん自身には全然いいことなんかひとつもないわ」


「だってそれで一番面倒なことを全部しょいこんでいるのは東野さんだもの」


「小学生のときのことを知られてるから、言うこときくしかないと思ったけど、やってみたら意外となんでも楽しかったわ」


「東野さんは自分にはひとつもいいことなんかないのに出無精な私をひっぱりだして、それが私にとってもいいことだって判ってたのよね、おかげで一年生のクラスの人たちとも仲良くなれたわ」


「自分にいいことはなくても相手のためにいいと思うことをしてくれるのはお友達でしょ」


やばい、なんか涙でてきそう。


「私がみんなと桜小路さんの間に入るのは嫌じゃないの? 小学生のときみたいじゃない」


「嫌じゃないわ、寧ろそうしてくれないと困るのよ」


「あの方たちと東野さんは全然違うわ、だって東野さんは私のためを思ってやってくれていることは知っているから」


「でも私がなにかやらかしたら、また桜小路さんまで迷惑がいくかもしれないよ」


「私がやらかすことはあっても東野さんが何かやらかすことはちょっと考えにくいわね」


「それでも東野さんが何かやらかしても別にいいわよ、ちょっとやそっとのことじゃ私は困らないから」


だめだ、とうとう涙が出てきちゃった。


鼻声だ。


「でも三枝さんだってお友達でしょ」


「秋良はお友達とは違うわ」


「でも桜小路さんにしては珍しく仲良くしてたのに」


「う~ん、秋良はあえていうならセフレかな」


えっ。


えっ、えっ。


「セフレって、いわゆるなんていうかセフレ?」


「そうよ、キスしたり、一緒にお風呂入ったり、指入れたりとかね」


え~~っ!!!!


「あの。。。桜小路さん、なんていうか男の子より女の子のほうが・・な人だったの?」


「違うわよ、たまたまお酒飲んで酔っ払ってそういうことになっちゃっただけよ」


「桜小路さん、お酒飲むんだ?」


「それも違うわよ、母のものをジュースと間違えて飲んでしまったのよ」


「なるほど~、そういうことか」


「何がなるほどなの?」


「いや、あの、桜小路さんにしては珍しく名前呼びとか馴れ馴れしい感じだったから」


「しょうがないでしょ弱み握られちゃったから、でもまああっちも同じ弱みだけどね」


「弱みって。。。今も三枝さんとはそういう関係なの?」


「そんなわけないでしょ、酔ってあの時だけよ」


「でもお友達ができてよかったね」


「だから違うって言ってるでしょ、秋良は自分がしたいからしただけで私のためじゃないわ」


「私のために何かしてくれるのは東野さんだけよ、だから早く学校に出てきてちょうだい」


「わかった、まさか桜小路さんがそんな風に思ってくれてたなんて知らなかったから」


「脅してくるのだけは困るけどね」


「脅してなんかいないよ~」


「東野さんが来ると次は何をやらされるのかと身構えてしまうわ」


「ふふっ」


「やっと笑ったわね、それじゃあ学校はでてきてくれるわね」


「わかったわ、私が行かないと桜小路さんが困るんでしょ」


「その通りよ、人狼劇も全然進まないしね」


「人狼劇、すごいこだわってるよねえ、そんなに人狼が好きなの?」


「人狼は面白いわ。 でもまあ飽きるわね」


「でも私にもいろいろと事情があるのよ、だから人狼劇が滞るととても困るの」


「桜小路さんの事情って?」


「言いたくないわ」


「私は聞きたいわ」


「また脅してくるのね」


「脅してなんかいないよ、だって小学生のときのことなんてそもそも桜小路さん悪くないし」


「私はみんなにバラされると困るのよ」


「で、どんな事情なの?」


「やっぱり脅してるじゃない、いつもは天使のくせに気に入らないわね」


「でもそういう言い方をするときは教えてくれるんでしょ」


「仕方ないわね、ほかの人には内緒にしてよ」


「うん、もちろん内緒にするよ、小学生の時のことだって誰にも言ってないでしょ」


「やっぱり脅してるじゃない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ