人狼ゲーム 東野優子side(5)
ずっとベットにいるのに眠れないのは何故なんだろう。
もう一週間くらいはこうしている。
母が部屋の前に置いておいてくれたお粥をときどき食べているけれど味はよくわからない。
目をつむると頭の中に小学生のときのイジメっ子たちが女の子をいじめていた光景がでてくる。
子供なのにひどく意地悪い顔をしたいじめっ子たち。
いつのまにかその顔が私の顔に変わっている。
一人の人形のーように可愛らしい女の子がそんな私を見ている。
桜小路さんだ。
私の顔をしたイジメっ子が桜小路さんを見て、にいっと笑う。
すごく悪い笑い顔だ。
桜小路さんは表情を変えないで冷たい目でそんな私をじっと見ている。
頭の中に悲鳴が響いてくる。
桜小路さんの悲鳴? イジメられている子の悲鳴? 違う。私の悲鳴だ。
突然、目の前が真っ暗になって、ハッと目が覚める。
だから全然深くは眠れない。
今朝は少しは気分がいい、あまり吐き気もしないし頭も痛くない。
母がものすごく心配してくれているのはわかっている。
「どうしたの、なにがあっても私は味方だから何でも話して」
母はそう言ってくれる。
でも私に話せることなんて何もない。
自分でもどうしてこうしているのかさえわからないのだ。
ただわかっているのは自分はすっごく気持ちの悪い人間だということだけ。
今日は下に朝食に行こう、食べられるかはわからないけれど行くだけで母が少しは安心する。
母親にまでこんなに心配をかけて、つくづく私はどうしようもない人間だ。
降りていくと、母が何事もなかったように「おはよう」と挨拶してくれる。
食事の用意がされているけれど、やっぱり食欲はない。
「おはよう、朝食ありがとう。ごめんなさいでもちょっと食べられないかも」
母は笑顔でいいのよと言ってお茶をいれてくれた。
「昨日も夕方にお友達がきていたわよ」
「そう」
たぶん三枝さんだろう、母が小さくて少年みたいな女子が来たと何日か前にも言っていた。
「優子も会えばいいのに、2日も続けて来てくれるなんて、いいお友達ね」
「それにしても随分きれいなお友達ね、芸能人かと思っちゃったわ」
思わずお茶を落としそうになった。
桜小路さんだ。
なんで?
桜小路さんにあわせる顔なんて私にはない。
なんで桜小路さんが来るの? 誰かに頼まれた?
でも桜小路さんは誰かに頼まれたからって自分の意に染まないことをする人じゃない。
桜小路さんが2日も続けてここに来たというなら、理由はわからないけれどそれは桜小路さんの意志だ。
桜小路さんはなんでも自分の考えで決める人だから。
どうしよう。
私に引導を渡しに来る? おとりまきはやめてくれと言われる?
でもそんなことを桜小路さんが言うかな?
言わないよね、それこそ私の思い上がりだ、桜小路さんは私のことなんか歯牙にもかけていない。
じゃあ何で来るのだろう?
無駄だよね。考えるだけ無駄だ、桜小路さんの考えていることなんて一度もわかったことなんてない。
でもわかることもある。
2日続けて来たのなら、桜小路さんはたぶん今日も来るだろうってことだ。
桜小路さんは何の理由もなしになんとなく行動したりはしない。
目的があって行動しているなら、その目的が達成されるまで桜小路さんはあきらめないだろう。
桜小路さんはそういう人だ。
どうしよう、会わないわけにはいかない。
ほかの人なら放っておけばそのうちにあきらめるかもしれない。
でも桜小路さんにはその手はきかない。
私が会うまで毎日、何日でも来るだろう。 それはわかる。
だから会わないわけにはいかない。
でもどんな顔をして桜小路さんに会えばいいんだろう。
わからない。
わからないけれど謝るしかない。
「もう桜小路さんにはまとわりつきません、ごめんなさい」って。
なんだか、そう考えたら気持ちが少し楽になった気がする。
そうだ認めてしまえばいいんだ、私は嫌な子なんですって本当のことを。
でも会いたくない。
でも会わないわけにはいかない。
絶対、今日も来るよね桜小路さん。
小学生のときにイジメられていた子のことを思いだした。
あの子も今の私と同じことを考えていたのかもしれないな。
目的を果たすまで桜小路さんは何か月でも何年でも毎日来そうだって。
鏡を見てみた。
髪はボサボサだし、我ながら酷い顔色だ。
こんなじゃ桜小路さんには会えない。
顔を洗ってメイクだけでも少しはしよう。
3日も続けて桜小路さんは追い返せない。
どんなに嫌でも会わないわけにはいかない。
何を言われるかはわからないけれど、私は桜小路さんに会うことに決めた。




