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桜小路古都の日常  作者: 雅流
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人狼ゲーム(4)

桜小路古都は考えていた。


人狼会議の練習が滞っている。

このままでいくと近藤くんと自分が期待しているレベルの人狼劇は文化祭までには無理だと思う。


原因は最初はよくわからなかったけれど、よくよく考察してみると東野さんが休んでいることに起因しているという結論に至った。


東野さんがなぜ学校を休んでいるのかは知らないけれど、桜小路古都は最初のうちはしめしめと思っていた。


東野さんには弱みを握られているので目の上のタンコブがなくなったようなものだ。


できればこのままフェイドアウトしてくれてもいいのだけど、などと虫のいいことまで考えてしまった。


けれどもどうやら東野優子は人狼劇の完成のためには欠かせないパーツであることが段々と桜小路古都にも理解できてきた。


桜小路古都はプロデューサーとしての自分の仕事には自信を持っていた。


適材適所にそれぞれの役割にあった人材を配置できているし、舞台監督としての近藤くんも優秀だ。


それぞれの係の担当者のモチベーションも高いし、一体感もある。


これで物事がうまく運ばないはずがないと思っていたのだ。


でも今はこういう大人数で行うプロジェクトにはそれだけでは足りないのだと理解し始めていた。


車が走るのにはエンジンとタイヤがあればいいのではない。


目に見える重要な部品の他に潤滑油やラジエーターというような目立たないものが重要な役割を果たしている。


人狼劇ブロジェクトの場合には東野優子がまさにそれだった。


全員のスケジュールを把握し、最も参加者が多くできる練習日程を設定し、参加できない者の役割を誰か他の者に前もって依頼し、悩んでいる者にはこちらから声をかけて相談に乗る。


気難しいプロデューサーと舞台監督のかわりに役者や担当者たちの話を聞いて橋渡し役になる。


アシスタントディレクターと言ってしまえば簡単だけれど、東野優子がいなければプロジェクトは一歩も前に進みそうもないことが次第に明らかになってきていたのだ。


「これはなんとかしなければならないわね」


桜小路古都は珍しく独り言をつぶやいていた。


三枝秋良が東野さんの家にお見舞いにいったけれど会ってもらえなかったと言っていた。


他人任せばかりにしておくわけにはいかないだろう。


東野さんがどうして休んでいるかに興味はないけれど、東野さんにいつまでも休んでいられると人狼劇に支障がでる。


こういう場合はとにかく率直に「私が困るのだ」ということを伝えるしかないだろう。


そういう結論に達して桜小路古都は東野優子のところに話にいくことにした。


昨日、今日と学校が終わってから運転手の片桐玲子さんにお願いして東野さんの家を訪ねている。


東野さんの家は昨年のハロウィンの時に衣装をもっていったので知っていた。


東野さんには会えずに東野さんの母親が玄関で話してくれた。


東野さんは部屋に籠ったままで、友達がきたことを伝えたけれども返事がないとのことだった。


2日連続で訪問は無駄になったわけだけど、これは仕方ないだろうと桜小路古都は思う。


東野さんには東野さんの都合がある。


相手の事情を無視して押しかけてきているのは桜小路古都のほうなので、東野さんのほうには私に会わなければならない理由がない。


私には東野さんに会って話さなければならない理由があるけれど、相手には理由がない。


こういう場合には相手が会いたいと思わないのであれば、会ってもいいと思ってくれるまで訪問し続けるしかないというのが桜小路古都の考えだ。


それが嫌ならばあきらめるしかない。


幸い、私の場合は運転手の玲子さんがいるので毎日訪問するといっても大した苦労はない。


桜小路古都は、会ってくれない相手でも毎日訪問し続ければそのうちに会ってくれるということを経験的に知っていた。


まあ、なんだかんだ言っても私とは違って東野さんは基本的に天使だ。


そのうちに会ってくれるだろう。

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