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桜小路古都の日常  作者: 雅流
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人狼ゲーム(2)

「えっ、ちょっと待って桜小路さん、村人チームの勝ちじゃないの?」


最初に人狼に襲撃されて退場してしまった東野さんが訊いた。


「残りは3人、人狼が2人、人間が1人。人狼の数が人間より多くなったからルールにより人狼チームの勝ちで間違いないわ」


桜小路古都が表情も変えずに言うと、やっと状況を理解してクラス中が「つまり近藤が人狼ってこと?」などとザワザワしはじめた。


「だから俺が本物の預言者なんだって言っただろ。近藤が人狼なんだよ」


最初に処刑されてしまった本物の預言者役の徳永くんが言った。


最後に残ったうちの一人、白沢さんがびっくりしたように言う。


「それじゃあ三枝ちゃんも人狼ってこと? え~っ全然わかんなかった、騙されたよ~」


三枝さんが笑いながらふざけて両手を挙げて白沢さんに襲いかかる真似をした。


「ガオ~、白沢ちゃん食べちゃうぞ~」


それで一気にクラス中の騒ぎに火がついたようになった。


みんなしきりに「近藤すげえ~」とか「三枝すげえ~」とか盛り上がっている。


桜小路古都はそんな様子をすまして眺めていたけれど、そろそろいいかという感じで話し始めた。


「皆さん、どう? 人狼ゲームってどんな感じかわかったかしら。私はとても面白いと思うのだけれど文化祭の出し物にするのには向かないと皆さんが思うのなら無理にとは言わないわ」


徳永くんが遮るくらいにすぐに言い返した。


「そもそも桜小路が提案してる時点で反対する奴なんていねえって、それより今のはちょっと勝手がわかんなかったんだ、もう一回やろうぜ」


「ずるいぞ徳永は一回やったんだから、今度はほかの者にやらせろよ」


あちらこちらから同じような意見が聞こえる。


クラス委員長の東野さんが収拾するように提案した。


「みんなちょっと静かに。とりあえず文化祭の出し物は「人狼」で決まりってことでいいわね」


「それから、これってけっこう時間かかるし、今日はあと2回だけということにして、また明日も試してみましょう」


東野さんはここでちらっと桜小路古都のほうを見た。


「桜小路さん、T大の受験勉強があるんだよね? 今日だけもうちょっとだけつきあってもらえるかな?」


桜小路古都はいつも最後の授業が終わると一目散に帰っていくのだ。


でも東野さんには小学生のときの悪事を知られているという弱みがあるのでなんにしても断りづらい。


「私が言い出したことだからね、これについては練習するときは何時まででもつきあうわ」


それを聞いてクラス中の温度がふっとあがったような感じがした。


それから参加者を変えて2回同じように試しのゲームをしてお開きとなった。



次の日、クラスでは誰もが人狼ゲームの話でもちきりだった。


昼休みには、あちこちで自主的に人狼ゲームが始まっている。


そんな様子にまったく関わりなく、いつものように休み時間には本ばかり読んで近寄るなオーラを出し続けているのは桜小路古都くらいた。


放課後にまたクラスでの相談が始まった。


クラス委員長の東野さんが、練習を始める前に進め方の相談をしますと宣言した。


「人狼ゲームについてはみんな理解したと思うけど、文化祭の出し物にするということで今回の提案者の桜小路さんから進め方の提案があるそうなので聞いてください、それじゃあ桜小路さんお願い」


桜小路古都は前に進んで東野さんの横に並ぶと話し始めた。


「みんな、私の提案に賛成してくれてありがとう。」


「文化祭ではこの人狼ゲームを13人で舞台の上で演劇としてやります。ただ人狼ゲームをやるだけではなくて、例えばここは辺境の村で登場人物は13人、村長と教会の神父とシスター、それから居酒屋の亭主とか設定を決めて、その人物になりきって演じながら人狼ゲームをするってことね」


「つまり観客には演劇を見ながら同時に人狼ゲームの推理を楽しんでもらうってこと」


「ここまでで何か質問とかある人はいるかしら?」


何人かが手をあげる。


「それって観客にも誰が人狼か役職者かを教えないでやるってこと?」


「台本とかなしで、ライブでぶっつけでやるってこと?」


「それってちょっと難しくないかな」


桜小路古都はひとつひとつ丁寧に答えていった。


「そう夜のターンは全て舞台裏でやるから観客にも誰が人狼か役職者かはわからない」


「ぶっつけでやるから観客はもちろん出演者も自分が人狼をやるのか舞台の開始直前までわからない」


「どういう展開になるかわからないから、そこも含めてドキドキ感を楽しんでもらう感じかな」


桜小路古都の説明を聞いて、ちょっと難しそうだなと、みんな不安そうな顔になった。


「みんな不安になるのはわかる、でも秋の文化祭まで時間はありすぎるほどあるから、それまでいっぱい人狼をやって、舞台の上でも自然にできるくらいになりましょう」


「私が提案者なので責任をもって最後まで仕上げると約束します。配役や台本とかを決めたりとかの全てを取り仕切るプロデューサーは私がやらせてもらいたいと思っているんだけど誰かほかに立候補者はいるかしら」


桜小路古都が立候補しているのに反対する生徒など一人もいるわけがなかった。


それでも手をあげる者がいた。


「それじゃあ桜小路さんは舞台には出演しないってこと?」


「いいえ私も出るつもりよ、舞台を華やかにするのに例えばバニーガールとか何かセクシー役も入れたいと思っているんだけど、それは他の方には無理に頼めないので私が引き受けるつもり。プロデューサーと兼務ね」


「それじゃあ桜小路さんばかり大変すぎない?」


「そうね私だけでは無理かも、なので舞台監督を別の人にやってもらいたいと思います」


「舞台監督って何するの?」


「舞台監督は、まず人狼ゲームの練習の指導、それから演劇のほうの監督もお願いする」


「私はプロデューサーとして人選や衣装とか必要な手配をするんで実際の舞台については、舞台監督が責任者でみんなその人に従ってもらう」


東野さんが訊いた。


「舞台監督もけっこう大事そうね、誰にするか桜小路さんに何か考えはあるの?」


「実はプロデューサーは初めからやるつもりで、監督とか出演者は考えてきてあるの」


東野さんがみんなに言った。


「プロデューサーは桜小路さんに任せるってことでいいね? それじゃあプロデユーサー権限で監督と配役を桜小路さんに発表してもらいましょう」


「それでは。まず舞台監督は近藤くんにお願いします。」


「次に役者だけど、男子から徳永くん、海老沢くん、佐伯くん、星野くん、藤野くん、本田くん。 女子からは東野さん、三枝さん、白沢さん、阿川さん、持田さん、和田さん、それから私、桜小路」


「それから申し訳ないのですが3人補欠で高宮さん、瑞原さん、篠倉さん」


「補欠は文化祭の日に出演者が体調が悪い場合の代打と、それから練習もいつも全員が揃うとは限らないので欠席の人のかわりに入ってもらいます」


「出演者と違って、誰の替わりをやるかわからないし練習でも色々な役をこなさなくちゃならないから大変なわりに、実際の舞台には出られないので、嫌だったら正直に言って」


「ううん、人狼ゲーム楽しいから補欠でも全然OKだよ」


三人とも快く了解してくれた。


「あとはスタッフだけど、できれば立候補でお願いしたいのがそれぞれ2~3人で、音楽担当、照明担当、美術担当、監督補佐っていうところね。あとは進めてみて必要に応じて増員ということで」


「それからこれはご指名なんだけど千葉くん、私の補佐でキャラクターデザインを頼みたいの」


いきなり名前を呼ばれて千葉くんが目を丸くしている。


彼は漫画研究会という非公式団体をやっている正真正銘のオタクくんだ、自分でも漫画を書いていることは調べがついている。


「クラス全体で作り上げたいから、役者や係に選ばれなかった人もできるだけ練習を見て、ここはこうしたほうがいいんじゃないか・・みたいな意見があったら近藤くんに教えてあげてね」


「ただし監督は近藤くんだから彼が決める。意見が採用されなくても拗ねないで協力してちょうだい」


みんな、頷きながらきいていたけれど徳永くんが手をあげている。


「ほかは特に文句はないんだけどさ、なんで近藤が監督なわけ?」


桜小路古都は当り前だという顔ですぐに答えた。


「それは、舞台で演劇として人狼をやるっていうのが実際に見た人でないと想像できないと思うからよ」


「T大の学園祭に近藤くんと行ったときに大学生の演劇部がやっていたのが凄く良かったのよ」


「でも私がプロデュースするからにはそれに負けないものにしたいから、この中で人狼に一番詳しくて、大学生がやってた人狼劇のクオリティがわかっている近藤くんしか監督に適任はいないと思ったの」


それを聞いてクラス中がザワザワと騒がしくなった、みんなヒソヒソ声で何事か囁きあいながら近藤くんのほうをチラチラ見ている。


東野さんが周囲からの圧力に押されて桜小路古都におそるおそるという感じできいてきた。


「桜小路さん、それって近藤くんと二人でT大の学園祭に行ったってこと? もしかして桜小路さんと近藤くんつきあってるとかいうことないよね?」


「近藤くんのお兄さんがT大にいるので、近藤くんに学園祭の案内をお願いしたのよ」


「つきあっている・・というのが具体的にどういうことを言うのかわからないけど二人で学園祭に行くのが「つきあっている」ということになるならそうね。」


「男と女で相思相愛でキスやセックスをしているかということなら、そんなことはないわ」


東野さんは桜小路古都のちょっとあけすけな表現に少し顔を赤くしながら言った。


「そうだよね、桜小路さんがつきあってるとかないよね」


桜小路古都は周りを見回して、それ以上は質問がなさそうなのを確認して話を続けた。


「それじゃあ、私が考えてきた配役を発表するわね」


「まず設定なんだけど、大学のでは海賊船が舞台でみんな海賊みたいな設定だったけれど、あれは演劇部で役者が上手だから成立している感じで、もっと誰が誰かよくわかる配役でないと私たちには難しそうだと思ったの」


「なので普通に。この世のどこかにある架空の村ということにします。 なので配役はみんな村の住人たちね」


「それじゃあ次は配役行きます」


「村長役 佐伯くん」

「神父役 星野くん」

「自警団長 徳永くん」

「酒場店主 海老沢くん」

「鍛冶屋 藤野くん」

「医者  本田くん」


「シスター 東野さん」

「髪切り(美容師) 白沢さん」

「踊り子  持田さん」

「パン屋  和田さん」

「金貸し  阿川さん」

「未亡人  三枝さん」

「酒場の娼婦 桜小路」


「みんな、自分の役はわかったかしら」


「私と持田さんは役柄の設定上ちょっとセクシー系の衣装になるかもだけど持田さんはいい?」


持田さんが笑いながら答える。


「セクシー系って新体操のユニフォームよりも露出多いとか?」


持田さんは新体操部なのだ、男の子たちのエッチな視線なんていつもガン無視でやっている。


「そんなことはないわ、それじゃあ持田さんもOKね」


「ほかには何か不服のある人はいないかしら」


三枝さんが手をあげて口を開いた。


「未亡人って何? ほかは職業だから判り易いけど未亡人ってどういう設定よ? なんかエッチくない? なよなよ系なら私にはあわない気がするけど」


「未亡人は村を守るために旦那が軍に出て戦死したの、なよなよ系じゃなくて男勝りの気の強い未亡人でもOKよ、役作りはそれぞれに任せるわ」


「気の強い未亡人か、笑えるな。それならOK引き受けた」


そのあとは照明や音楽などの担当を立候補や推薦などで決めて、その日の学級会議は終了した。

最後に舞台監督になった近藤くんが言った。


「それじゃあ明日から練習始めるけど、みんなそれぞれの役のキャラクターについて考えてきてね、三枝さんみたいに「気が強い未亡人」とかね。 それから自分が人狼や預言者などになったときにどんな作戦どんな立ち回りをするかとかもできたら幾つか考えてきてみて」


クラスのみんながワイワイと話しながら帰っていく。


東野さんが桜小路古都のところによってきて言った。


「桜小路さんはまた娼婦とか悪女の役なのね、レベッカはよかったけど、今度はもっと素敵な役をやればいいのに」


「東野さんが私のかわりに娼婦の役で胸の谷間とスリットから太ももの付け根まで見せる衣装でやりたいって言うなら考えてみるわ」


固まっている東野さんを残して、何事もなかったように桜小路古都は教室を出ていった。






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