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桜小路古都の日常  作者: 雅流
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近藤くん(2)

模擬店には数人の大学生の男女がたって呼び込みや客の対応をしているけれど、お世辞にも繁盛しているという感じではない。


桜小路古都が近藤くんと手をつないで歩いていくと、向こうのほうが先に気がついた。


売り子をしている男子の一人が手招きして呼んでいる。


「おい、誠二。こっち、こっち」


ということはこれが近藤くんのお兄さんということだろう。


アオハル学園の生徒会長だったらしいけれど顔は見たことがあるような、ないような。。。


まあ桜小路古都にとってはプロジェクト対象以外の男子なんて道端の石っころのようなもので興味の対象外だからそれは仕方がない。


二人が近づいてくると近藤兄は本当の商売人が手もみでもするようにして笑顔で話しかけてきた。


「桜小路さん、こんにちは。よく来てくれたね」


自己紹介もなしにいきなり「よくきてくれた」かよと思いながら、とりあえず返事はする。


「ええと、どちらさまでしたかしら?」


「いやだなあ、生徒会長していた、誠二の兄の近藤京一だよ」



「生徒会長というとアオハル学園のですか?」


「そうだよバスケ部のキャプテンもしていたから試合とかで見てくれたこともあるんじゃないかな」


「バスケ部ですか? アオ学は陸上とか射撃とか国体に出ているクラブも多いですが、バスケ部って全国何位とかでしたかしら?」


桜小路古都がやってきてからずっと必要以上に笑顔だった近藤兄が、ここにきて不愉快な顔になる。


「地区の準決勝までだったから全国には行けなかったけど、この地区は全国一の激戦区だからね」


「あらそうでしたか、バスケ部のキャプテンとわざわざおっしゃられたので全国で活躍されたのかと思ってしまって。失礼なことお聞きしてしまいましたわね」


「いや別にいいですよ、ところで今日は誠二となんて桜小路さんに失礼がなければいいのですが、言ってくれれば僕がお迎えに行きましたのに」


桜小路古都は結んでいた手を離して、これみよがしに近藤くんと腕を組んで言った。


「あら私から近藤くんにエスコートをお願いしましたのよ、他の方のお誘いでしたらこんな学園祭になんて来てはいませんもの」


「こんな・・とはまいりましたね。一応は最高学府とか言われているんですが、ははは」


「でもせっかく桜小路さんに学園祭に来ていただいたのだから、ここからは僕が案内しますよ。桜小路さんも来年は本学に入学される予定なのでしょう?」


ふざけたことを言う男だこと、私がどこへ進学しようと貴方の知ったことではないと思いますわ。


なので、さらに近藤くんにぐっと深く腕を絡ませてやる。


そこそこ豊かな胸が近藤くんにわざとらしく押しつけられているのは誰の目にもあきらかだろう。


「私は近藤くんにエスコートしていただくのが楽しみで来ましたから、他の方のエスコートはけっこうですわ」


「来年こちらに進学するかはどうでしょう。両親はこちらの大学の出身なのですが私には「こんな」ところではなくハーバードかMITに進学したらと薦めてくれているので」


近藤兄は「こんな学校」と言われて、今度こそ露骨にムカっとした表情になったが、桜小路古都はまったく相手にしなかった。


「それでは近藤くん行きましょうか、兄弟だから近藤くんがわざわざご挨拶に来てあげたのに弟にまともな挨拶のひとつもできないなんて、がっかりなお兄様だわ」


そう言って後ろも振り返らずスタスタと歩きはじめた。


近藤くんは深く絡まった腕を胸からはずそうと無駄な努力をしているけれど離してはあげない。


「桜小路さん、その。。ちょっと、別に変な気はないんだけど、胸がふれてるから・・ごめん」


「あら、嫌なの?」


「嫌なのって。。。嫌じゃないけど、桜小路さんは嫌じゃないの?」


「嫌いな人なら嫌だけど、好きな人なら別に嫌ではないわ」


「好きなって、桜小路さん、僕なんかのこと好きなの?」


「好きなの?って、どういう質問なの? 私が好きでもない男子と学園祭なんか見に来ると思ってるわけ? そんなに暇ではないわ」


「そうなの。ても、なんで僕なの?」


「近藤くん、誤解のないように言っておくけど今の「好き」は特別な「好き」じやないからね」


「他にもたくさんいる好きな人のうちの一人ってこと、嫌いじゃあないっていうことね」


「あっ、そういうことね、そうだよね、桜小路さんが僕なんかってびっくりしちゃった」


「なんか勝手に納得しているみたいだけど、好き、嫌い、関心なし。男子に対してはこの三つのどれかしかなくて、ほとんど80%くらいは「関心なし」だから、特別な「好き」じゃなくても、そもそも私にとってはそれなりに大事なお友達のつもりよ」


「そうなんだ、それじゃあやっぱりなんで僕なんかをお友達って言ってくれるのかわからないなあ」


「そんなの私だってわからないわ、理由なんかなくたって好きなものは好き、それだけよ」


「例えば近藤くんのお兄さんは理由なんかないけど好きではないわ」


ちょっとだけ後ろを振り返ってみると、遠く小さく近藤兄が未練たらしくずっとこちらを見ているのが見えた。



「さて近藤くん、次は人狼会議だったかに行くわよ、まだ時間も早いし、君がルールを教えてくれる約束だったわね」


特設されたフリーの飲食スペースを見つけて近藤くんは詳しく人狼ゲームのルールを教えてくれた。


「まず13人の参加者がいて、その中に3人の人狼がいるんたげと、それが誰なのかは人狼本人以外にはわかりません」


「13人でなんでもいいから色々と会話をして人狼以外の人は誰が人狼なのかを見つける、そういうゲームです」


「ふうん、確かにそれって簡単そうにみえて難しいかもしれないわね」



「ゲームには昼のターンと夜のターンがあります」


「例えば昼のターンを5分と決めたら、5分間フリートークで話して、時間が来たら一人一票で人狼と思う人にそれぞれ投票します、一番たくさん投票された人が処刑されます」


「処刑されるってどういうこと?」


「処刑された人はゲームから外されます、つまり退場だね」


「これで昼のターンは終わり、そして夜のターンになります」


「夜のターンは参加者は全員、目隠しして耳をふさいで、何も話せないし、見れないし、聞けない、つまり誰も何もできません」


「夜のターンの間に人狼は一人だけ襲撃する人を決めます、襲われた人はゲームから退場」


「襲われるってどういうこと? 」


「参加者が全員目をつぶって耳をふさいでいる間に人狼の人が審判に「××さんを襲います」と伝えるってこと、審判が××さん襲われたので退場!って宣言して皆に知らせます」


「なるほど、それで誰が人狼かはばれないってことね」


「そういうこと、夜のターンはそれで終わりで次の日の昼のターンになります」


「つまり二人減って11人で次の日の会議が始まるってことだね」


「それを繰り返していって人狼が3人とも処刑されていなくなるか、人狼の数と人間の数が同数以下になったらゲーム終了です」


「人狼がいなくなれば人間チームの勝ち、例えば6人残りになって人狼3、人間3なら人狼チームの勝ちになります」


「なるほど大体わかったわ、でも人狼が誰かなんてわかりっこないし、それだと人間チームが勝つのは難しそうな感じがするわね」


「実はそうなんだよね、それなので人間チームには役職者というのがあります」


「13人のうち人狼が3人だから人間は最初は10人なんだけど、その中に3人の役職者がいます」


「預言者、霊媒師、狩人という3つの役職があって10人のうちの誰かにその役職が与えられている」


「但し、本人以外には人狼にも他の人間にも誰が役職者なのかは知らされません」


「預言者は夜のターンの間に誰か一人を指定して、その人が人狼なのかそうではないのかを審判に教えてもらうことができます。」


「霊媒師は夜のターンの間に昼のターンに処刑した人が人狼だったかそうではなかったかを教えてもらうことができます」


「狩人は夜のターンの間に一人だけ守る人を指定できる、守られている人は人狼に襲われても死にません、つまり退場しないということね、ただし狩人は自分自身を守る対象に選ぶことはできません」


「なるほど、ちょっと複雑になってきたわね、ちょっと考えさせて」


桜小路古都は尋常ではないほどに賢い、一度ルールを聞いただけでゲームを理解したようだ。


「自分が人間チームだとすると、預言者に人狼を見つけてもらって処刑して勝ちを目指すわけね」


「でも占いで人狼を見つけたとして、処刑は多数決で行われるのだから自分一人の力では処刑できない。つまりその事実を皆に伝えなくては人狼は処刑できない」


「でも皆に伝えると人狼に自分が預言者だとバレるから、邪魔な預言者である自分が真っ先に襲撃されるでしょう? そうなると二人目の人狼を見つけることができない」


「自分が預言者だとバレることなく、それとなく皆がその人に投票するように仕向けることができるかしら?」


「難しそうよね、だってみんなからは自分が預言者だってわからないんだから、誰かを処刑しようって提案したら、自分が人狼で人間を処刑しようとしていると思われかねない」


「なるほど面白いわね」


「どう? だいたいどんなゲームかわかってきた?」


「そうね、たぶんこんな感じかな。預言者は人狼を見つけたら自分が預言者だとカミングアウトして人狼を公表する、そして皆で処刑する」


「狩人の人は絶対に自分が狩人だとバレないように気をつけて毎回、預言者の人を守る」


「人狼は狩人に守られている預言者は殺せないから、先に狩人を殺してから預言者を襲撃する」


「つまり人狼が狩人を見つけて殺すのが先か、預言者が人狼を全部見つけるのが先か? そういうゲームかしら」


「一回も人狼ゲームを見たことがないのにそこまで考えられるなんてさすが桜小路さんだね」


「難しくなるからあとで説明しようと思ったけど、それじゃあ他のルールも全部話しちゃうね」


「まず人間の中に役職者のほかに狂人という人が一人います、役職や人狼と同じで他の人には誰が狂人かはわかりません、狂人は人間だけど人狼チームです、つまり人狼チームが勝てば狂人も勝利」


「でも狂人はカウントは人間なので例えば残りが狼狼狂村村、(村っていうのは村人つまり役職の何もないただの人間って意味ね)ってなった場合、人狼チームのほうが多いけど狼が2に対して人間は3人なので、まだ人間チームの負けではない」


「人狼同志は人狼がわかるけど誰が狂人かはわからない、狂人からも誰が人狼なのかはわからない、なので協力するのは難しいのだけど狂人は陰ながら人狼に有利になるように働く」


「狩人は2晩連続で同じ人は守れない、つまり誰が預言者かわかってもずっと守り続けるってことはできない、ただし預言者を守って、次の日は別の人、その次の日はまた預言者っていうのOK」


「預言者はゲームが始まるときに既に一人だけ人間を知っている」


「だいぶ難しくなってきたわね、特に2日連続で守れないのは痛いわね、ゲームが始まるまでに考え直してみるわ」


「そうだね、でも実際にゲームが始まってみればわかるけど、桜小路さんの考えているような展開にはたぶんならないと思うよ、それは後のお楽しみで」


「なんだか勿体つけるわね、でも確かになんだか面白そう、ルールも教えてもらえるし近藤くんと来てよかったわ」


そう言ってまたギュッと胸を押し付けるようにすると近藤くんの顔がまた赤くなった。


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