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桜小路古都の日常  作者: 雅流
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お正月

早いもので、もう一年が終わる。


今日は大晦日だ。


桜小路古都が小学生のころは年末年始は毎年、家族でハワイに旅行していた。


ワーカホリックの父も12月30日から正月の三が日の間はゴルフの誘いも断って家族サービスに精を出していたのだった。


年末年始の家族旅行が自然消滅したのは父ではなくて主に母の都合による。


料理研究家として人気が出はじめた母が旅行に行けない年が2年続いた。


どうも料理関係の業界は正月のイベントが多いらしい。


桜小路古都の両親はさっぱりした性格というか夫婦喧嘩などというものは滅多にしないのだけれども、この時は珍しい大喧嘩だった。


前年に母の都合で正月の家族旅行がキャンセルになったので、今年はどうするかというのが早くから家族の話題になっていた。


なんだかんだで両親とも都合をつけて結局はハワイ旅行をすることに落ち着いた。


それが年の瀬もおしせまったクリスマスのころになって母が突然、仕事がはいったので旅行に行けないと言い出したのだ。


急に大手食品メーカーの正月イベントに特別ゲストとして出ることになったらしく、その会長さんだとかCMの関係だとかでどうしても断れないということらしかった。


仕方がない面もあると思う。


それでも父は珍しく声を荒げて怒りを表明した。


なんでも取引先の重鎮たちとオーストラリアだかニュージーだかでゴルフ旅行をする約束を断ってまでスケジュールをあけたのに何だ!ということらしい。


父がどういう誘いを断ってスケジュールを開けたかということと、母がビジネスのステップアップのために、このチャンスを逃したくないという希望とは関係がないないと思うのだけれど、とにかく酷い言い合いになった。


結局は子供の喧嘩のように最後はお互いが不貞腐れて無視するという結論に至り、ハワイ旅行は父と私の二人で行くことになった。


そんな経緯で行ったハワイ旅行だったけれど、実は今までの旅行のなかで一番と言えるくらいに旅行中の父は上機嫌だった。


なにしろ自慢の最愛の娘と水入らずの二人きりを5日間も満喫できたのだ。


私も両親の大喧嘩を目にして、子供ながらに旅行の間ずっと父のご機嫌をとるのに精を出していた。


と言っても単にニコニコして色々とたくさんのおねだりをしていただけとも言えるけど。



それ以来、年末年始のハワイ旅行は消滅した。


そういうわけで大晦日ではあるけれど、いつもと同じように私は一人で過ごしている。


大晦日と三が日はお手伝いの玲子さんもお休みなので本当に一人きりだ。


食料は両親が色々と買い込んでくれているのでその点で困ることはない。


北陸の老舗高級ホテルのおせち料理、四段重を一人でどうしろというのだろう。


たぶんお値段も2桁万円くらいすると思う。

あいかわらずの無駄使い家族だ。


あとは大量の切り餅。

これは近所の和菓子屋さんから届く。


お雑煮用の三つ葉、柚子、ホウレン草とかの野菜類は母の取引先の店から真空パックにしたのがきて冷凍庫にはいっているし、鶏肉、豚肉、牛肉も某百貨店の肉屋から届いたのが冷蔵庫にはいっている。


ちなみに冷蔵庫と冷凍庫は別々で、母が仕事用に買った業務用のバカでかいやつだ。


あとはなんのつもりかわからないけれど特大サイズの越前ガニの姿のままのやつ。

脚を2本くらい食べたらお腹いっぱいになりそうだ。


つまりこれは家族サービスを放棄していることの娘への最低限の誠意なのだろう。

あきらかに方向性は間違っているけれど。


そして今、桜小路古都はまだ正月ではないのに加賀屋のおせちをつつきウーロン茶を飲みながら紅白歌合戦を見ている。


おせちは車エビの煮たやつと鰻がはいっている卵焼きがけっこう美味しいと思う。


紅白は世間ではオワコンとされているけれど以前は演歌ばっかりだったのが最近はサブスクとかで人気の曲も多くなったので案外楽しめる。


それになんといっても石川さゆりを聞かないと桜小路古都は一年が終わった気がしないのだ。


今年は天城越えだ。

桜小路古都は津軽海峡より天城越えのほうが好きなのでちょっとうれしい。


今年は椎名林檎が出場しないのだけは残念だ・・などと考えているうちに除夜の鐘をゴンゴン聞かせる番組が始まって年があけた。


元旦はなかなか食べられないので今のうちにお雑煮を食べる。


お取り寄せの雑煮つゆにトースターで焼いた切り餅をいれて、三つ葉をハサミでチョキチョキして、柚子の皮をちょっと削っていれるだけなので簡単だ。


お取り寄せつゆには鶏肉や椎茸、大根、ニンジンとかも既にはいっている。

これがけっこう美味しい。


有名料理研究家の娘が元旦に食べる雑煮としては、どうかと思うところもないではないけれど本人が満足なのだからまあいいだろう。


腹も膨れてうつらうつらしていると、まだ朝の四時だというのにヘアメイクと着付けのお姉さんがやってくる。


今どき着物で初詣ってどうなのよと思うのだけれど両親が勝手に予約しているので仕方がない。


昼前に迎えの車が来る。


玲子さんは正月休みなので父が予約しておいた運転手さんつきのリムジンだ。

大きくてゆったりなのはいいのだけれど、もう少し目立たない車のほうがいいなとは思う。


初めて一人で初詣に行った年、明治神宮に行った。


初詣を舐めていた。


着物姿で元旦に明治神宮に初詣に行くとか何の罰ゲームだよという感じの強行軍だった。


それ以来、近隣の穴場の神社に行っている。


リムジンから着物姿で降りると見世物のように視線の集中砲火にあうが、慣れているので気にしない。


お賽銭をいれて二礼二拍手一礼。


今年のお願いは「たくさんモブ男が元気になりますように」だ。


それから「家族が全員健康でありますように」


ワーカホリックな両親なので健康だけは神様にお願いしておこう。


それから初詣のメインイベントであるおみくじだ。


末吉だった。 微妙だ。


この神社に集客力がないのはこの辺りにも原因があるかもしれない。

盛大に大吉とかを大量に入れたりしたほうがリピーターが増えるのではないだろうか。


桜小路古都はまだこの神社のおみくじで大吉を引いたことが一度もないのだ。


でも、そこそこの神社なのに混雑しないのと段差が少なくて着物でも歩きやすいのでこの神社が気に入っている。


おみくじは今年も末吉だったけれど来年もこの神社に来る予定だ。


初詣が終わったら着物からも解放されてやっとゆっくりとくつろげる。

まだ暗いうちにお雑煮を食べてから何も食べていないのでお腹がペコペコだ。


まだまだ無駄に豪華おせちは残っている。


明日の1月2日には母が帰宅する予定だ。

なんでも豪華なのが好きな人なので伊勢海老の段はそのまま残しておいてあげよう。


父も3日には帰国する予定だ。


父はつきあいも仕事のうちというのが口癖だけれど、母の純然としたビジネスとはちがって父のは半分は遊びみたなものなのは明らかだ。


さぞや正月は家庭では肩身が狭いだろう。


お取り寄せのお雑煮つゆはまだ一袋あるけれど、お雑煮はもう食べない。


明日はたぶん母がお雑煮をつくってくれるだろうと思う。

カンナで本節を削ったりして出汁をとる本格的なやつだ。


鶏肉とカマボコ、三つ葉とかのシンプルなお雑煮なんだけれどムッチヤ美味しい。


確かに我が母親は料理研究家なんだと実感する希少な瞬間だ。


明日は母に医療脱毛についていろいろ教えてもらう予定だ。


母の知り合いが院長をしているクリニックがあって母に勧められている。


来年のお正月は全身スベスベで迎えたいと思っているのだ。


鰻巻き卵焼きと同じ段のおせち料理、煮物とか焼き栗とかを食べていたらお腹がいっぱいになった。


そんなこんなで桜小路古都のお正月は過ぎていく。




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