高嶋くん(2)
私たち三人は鷹野陽子さんのお店に来ている。
鷹野さんはこのお店のオーナーでありプロのデザイナーだ。
本当のプロフェッショナルで高校生のハロウィンのコスプレを作るような人ではない。
父にハロウィンパーティーの話をしたら私のために気合がはいりすぎて直接に鷹野さんに電話をしてしまったのだ。
実は鷹野さんは子供のころから母の衣装などで我が家に出入りしていたので知らない人ではない。
父からの依頼になぜか鷹野さんも大乗り気で今に至る。
「そうね古都ちゃんは美脚だから、チャイナドレスとかはどうかしら」
「そちらのお嬢さんとペアで赤と青のお揃いとかにしたらエロかわいいわよ」
チャイナドレスか、悪くはないけど。。。
「チャイナドレスだとあんまりハロウィンっぽくない気がするわ」
「そんなことないわよ、けっこうハロウィンでも人気だと思う」
「う~ん、エロかわいいっていうのはいいんだけど、もっとハロウィンっぽいやつ」
「じゃあ修道女はどう? これも人気あるわよ」
「修道女はハロウィンっぽいけど、もうちょっと露出が多いほうがいいわ」
「ねえ、高嶋くんもそう思うでしょ」
「ぼ、ぼ、僕は、しゅ、しゅ、修道女もいいかなと思う」
「高嶋くんはよっぽど私の脚が見たくないのね、文化祭の時もぬっちゃったし」
「そんなことは、な、ないです」
鷹野さんが用意してくれていたカタログから選んでいく。
「ミニスカポリスがいいかなあ、どう東野さん?」
「ちょっとスカートが短かすぎない?」
「そこがいいんじゃない、ハロウィンなんだからいつもより派手めくらいで」
「ねえ、高嶋くんだって東野さんの生太もも見たいよね?」
「えっ、え、え」
何か言おうとしたみたいだけどキャパオーバーかもしれない、頭から煙がでてきそうだ。
「ねえ陽子さん、もうちょっと大人っぽいのないかしらセクシーなやつ」
「はぁ、あまり過激なのだと私が桜小路様(父)に叱られそうですので。。。」
「大丈夫、父はパーティーの日は出張でいないから、私が適当に言っておくから」
「そうですねえ、それではこの天使と悪魔は如何ですか?、お二人お揃いで」
「前から見ると可愛らしい衣装ですけど後ろは腰のあたりまで背中が全開で」
東野さんがあわてている。
「これはちょっと、私、桜小路さんみたいにスタイルよくないし。。。」
「そんなことないよ、高嶋くんもこれ東野さんに似合うと思うでしょ、試着したの見てみたくない?」
「に、に、似合うと思います!」
ふふーん、やっぱり高嶋くんも健全エッチな男子高校生なんだね。
「それじゃあ陽子さん、ミニスカポリスと天使・悪魔、それからこのバンシーもお願い、次来るときまでにできる?」
「3つともですか、仮縫いでも料金かかってしまいますけど」
「父からは許可もらっているので幾らかかっても大丈夫です」
「あらそうなんですか、それでは5着くらい勧めればよかった(笑)」
東野さんはラインナップにかなり引き気味だ。
「ねえ東野さん、もう一人くらい一緒に揃いのコスにしたいと思うんだけど誰かいない?」
「えっ、そう? それじゃあ飛鳥さんとかどうかしら」
「う~ん飛鳥さんは背が高すぎるからちょっとかなあ、他には誰かいない?」
「そうねえ桜小路さんと揃いのコスとかいうとみんな逃げだしそうだけど。。。」
「東野さん広岡さんと仲いいよね? 広岡さんはどうかしら背もちょうどいいし」
「広岡さん誘ったんだけどハロウィンとかは恥ずかしいからって断られちゃった」
「え~そうなの? そういう大人しい人こそハロウィンくらいはじけないとだよ」
「ねえ東野さん、広岡さんもう一度誘ってみて、私が直接説得してもいいから」
「それは、桜小路さんにそこまで言われたら千絵ちゃんも断れないかもだけど」
「陽子さん、それぞれ3着お願いしますね」
今回は4人で来ている。
広岡さんはなんだか緊張しているみたいだ。
同じクラスだけど今まで広岡さんとは話したことは一回もない。
まあ東野さん以外はほとんどそんな感じだけど。
高嶋くんはアルマジロが丸まったみたいに本当に小さくなっている。
女性服の店で女4人に囲まれていては仕方がないかもしれない。
まあこれも君が35歳素人童貞にならないための試練だと思ってほしい。
最初にミニスカポリスを試着してみた。
思った以上にミニスカ制服のスカートが短い、ほんのちょっとでも屈むと中が見えてしまう。
高嶋くんしかいないのに東野さんは顔が真っ赤だ。
普段は大人しい広岡さんのほうが思いのほか乗り気なみたいだ。
それはそうと高嶋くんをとりあえず少しかまってみようか。
「まあまあね、どう高嶋くん、三人で誰が一番似合ってる」
「えっ、えっ、え」
やっぱりキャパオーバーか、まあいいか。
「それじゃあ陽子さん、次は天使と悪魔お願いします」
東野さんと広岡さんは真っ白の天使のコスプレ、エンゼルリング付、私は真っ黒の悪魔のコスプレ、尻尾つき。
どれも後ろはレースのシースルーで背中全開、というかお尻まで見えちゃいそう。
「高嶋くん、どう? 私はこれがいいかなと思うんだけど」
「い、い、いいと思う」
もう少し喋れよと言いたいけど、まあ限界かもね。
最後にバンシーのコスプレを着てみた。
うす緑と黒、うす青と黒、うす紫と黒 の色違いの3着だ。
東野さんと広岡さんは試着室から出るのをかなり渋った。
なぜかというと今度のコスプレはほぼ全身シースルーなのだ。
レース系の生地を何層か組み合わせているのでよくわからないけれど
よーく見ると、見せブラも見せパンも全部見えてしまう。
でもまあ見せブラ、見せパンだから割り切ってしまえば平気だと思うけど。。。
高嶋くんは固まっていたけど、視線はガン見だ。
なんで私なんだ?
ガン見するなら東野さんか広岡さんをガン見しろ。
実は広岡さんが一番エロイと思う。
今まで気づかなかったけど彼女はけっこう胸が大きい。
隠れ巨乳・・・というとオーバーだけど高校生としてはかなり胸の発育がいい。
ちょっと負けた気がする。
それにしても東野さんにこのコス着せたら、東野ファンの吉田くんとかには刺激が強すぎるかな。
陽子さんが笑顔で訊いてくる。
「どれか気に入りましたか? 」
「う~ん、どれもいいけど、ちょっと違うかなあ。。。」
「実は勝手に申し訳なかったのですけど、お予算はいくらでもOKときいて私も商売っ気だして、もう一着作っちゃいました」
「花嫁ゾンビなんですけど試してみますか?」
名前の通り花嫁衣裳なんだけど、あっちこっち破れて穴があいていたり血がついていたりするし、裾のほうがビリビリになっていたりする。
露出は少な目だけど花嫁とゾンビという清純とグロのギャップがなんともいえずハロウィンっぽい。
ゾンビメイクもしてもらったら三人ともすっかり気にいってしまった。
さすがわプロのデザイナーだ、センスがいい。
「ところで高嶋くん、君はコスプレなんにするつもりなの?」
いきなり私に訊かれて高嶋くんは目を白黒させる
「ぼ、ぼ、ぼ、僕はまだ、な、なにも。。。」
「陽子さん、男子のコスプレもお願いできますか?」
「いいわよ、普通のコスプレのカタログだけどここから選んでくれれば私がアレンジして仕上げてあげる」
どうやら陽子さんはガッチリ稼ぐ気まんまんのようだ。
高嶋くんはカタログを見ているけど多すぎて選べないみたいだ。
広岡さんが横から覗き込んでいる。
「ねぇ高嶋くん、このゾンビのはどうかな、ちょっとグロいけど私たちとお揃いだよ」
「ちょ、ちょ、ちょっとゾンビは。。。」
「そうかあ、それじゃあこの執事はどう、けっこう似合うかも」
「い、い、いいかも」
なんだか広岡さんが人が変わったみたいに乗り気だ。
「う~んでもやっぱりハロウィンだからもうちょっとダーク系かなあ」
「だ、ダーク系って?」
「血がついてたりとか、ちょっと怖いかっこいいみたいな?」
「ど、どんなの?」
「やっぱり、この吸血鬼にしなよ高嶋くん」
いつもとは別人みたいに積極的な広岡さんに東野さんが驚いている。
ふーん、なんだ広岡さん誰が水やっていたのか最初から気づいてたんじゃん。
それはそうだよなあ、高嶋くんの優しさに誰も気づかないわけがない。
だけど高嶋くん、そんなに広岡さんの胸ばっかり凝視していると嫌われるぞ。
まあ広岡さんのほうはわざとチラ見させてるんだと思うけどね。
ちっ、高嶋くんも花が枯れるのがじゃなくて、広岡さんが、がっかりするのが可哀相で水をやっていたのか。。。
なんだ相思相愛ってこと? ラブラブじゃん。
二人を見ている東野さんの目が羨ましそうだ。
私たち二人って、もしかしておジャマ?
あーあ、やっぱり今回は最初からプロジェクト必要なかったみたい。
パーティーの日は東野さんの花嫁ゾンビ姿に東野ファンの吉田くんは目がハートマークになっていた。
(忘れるな)お前はすでにフラれている。
北川くんはなんでウルトラマンのコスプレなんだろう?
芸術家のセンスは今ひとつよくわからない。
八重樫くん、私のコスの破れているところばかり凝視するのはやめよう。
35歳素人童貞コースに逆もどりするぞ。
広岡さんはずっと高嶋くんの横をキープして誰にも渡さない。
ハロウィンパーティーは思いのほか盛り上がった。
片付けが大変すぎて家政婦の玲子さんが溜息をついていたのだけは気の毒だったけどね。




