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5・貴族街でのイベント

ソフィーリアがスキル制御の為に魔法協会に出向いた日の夜、部屋に戻ったソフィーリアは頭を抱えていた。


「なんでこんな事に……」


スキルは人生の方向性を大きく変えうるものだ。

戦士系のスキル、農業系のスキル、医療系のスキルなどスキルの種類は多岐にわたるが、そのスキルによって取得できる魔法や得意となる魔法は異なってくる。

『恋は乙女を最強にする』のゲーム内では主人公であるアイリのスキルは聖女とランダムな物がいくつか与えられる。

ランダムなスキルはあくまで補助的な物であり、ストーリーには直接関与しないのだが、ゲーム内攻略キャラの好感度補正や戦闘において有利になるなどの利点があった。

メインのスキルをある程度制御できるようになる事でサブのスキルが発動する仕様なので、スキル制御の為に何度か魔法協会に通う必要がある。

ソフィーリアはほぼ完全にスキルを制御出来ているが、一度だけしか魔法協会に行かないというのはスキル制御をする必要のない天才かスキル制御を諦めた者のどちらかだ。

悪目立ちをしたくないソフィーリアは数回通う事でそのどちらの評価も受けないようにするつもりだった。


「なんであの子、ちょっとしか助言してないのにあんな力を発揮できるのよ!! おかしいでしょ、あれ!! しかも、なんか助言した私も目立ってたし、変な噂とか流されたらどうしよう!!」


枕に顔をうずめ、思い切り今日の出来事に対する恨みつらみを叫ぶソフィーリア。

アイリをわずかな言葉で指導し、そのスキルの力をいかんなく発揮させた。

それがあの時周囲に居た者たちのソフィーリアへの印象であった。

娯楽の少ないこの世界ではそんな噂は尾ひれがついてあっと言う間に広がるだろう。

このままいけば、今現在自分の婚約者であるエスターライヒ王国の第一王子ソレイユ・エスターライヒの耳に遠からず入る事は確実だった。


「どうせ、この次のイベントである貴族街への買い物でソレイユ様はアイリと出会い、一目惚れする事になるのだから、私の変な噂なんか耳に入ってもすぐに忘れてしまうに違いないわよね。放っておいてもいい、わよね?」


ソフィーリアと婚約者であるソレイユは幼少の頃からの縁である。

年齢が同じという事もあり、幼い頃はしょっちゅうエスターライヒ城の庭園で遊び回っていた。

貴族社会のしがらみなど、全く知らず純真無垢だったソフィーリアはソレイユにとってこれ以上ない親愛の対象であった。

それゆえに、ソフィーリアとソレイユの仲を知っている両親たちは二人の婚約を推し進めたのだ。

もちろん、王家と公爵家の繋がりの強化という面もあるが。

だが、今はどうかと言えば、だんだんと公爵家の令嬢という立場や貴族の在り方が染み付いていき、他者に対して高慢で横柄な態度が目立つようになっていたソフィーリアをソレイユは毛嫌いし、あまり近づかず、会っても冷たい態度をとるようになっていた。

そんなソレイユの態度を思い出し、ソフィーリアはため息をつく。


「はぁ、ゲームしてた頃は推しの一人だったのになぁ。塩対応くらうって分かってるけど、きつい物があるわね……」


がっくりと落ち込みながら、ソフィーリアは次のイベントに向けて作戦を考える。

次のイベントは貴族街に王立学校で必要な物を買い揃えるイベントで、アイリと攻略対象であるソレイユとの出会うイベントだ。

このイベントではその場面をソフィーリアが見てしまい、アイリに敵意を持つシーンとなってる。

イベントの強制力を考えれば、この通りに進めてしまうとソフィーリアはアイリへの敵意を強く持つ事になるだろう。


「そうなると、アイリの攻略対象への好感度稼ぎを邪魔する存在になっちゃう可能性があるから、出来ればスルーしたいのよね。でも、今回のスキル制御のイベントを考えたら、恐らく謎の強制力が働いて、出くわすのでしょうね、その場面に」


どうしたものかと思案を重ねるが妙案は浮かんでこず、悩んでいる内に日々が過ぎていき、貴族街の仕立て屋から王立学校の制服が仕上がったとの連絡が入った。

出来るなら侍女なりに取りにいかせたい所だが、制服の盗難などを防ぐ為のマジックアイテムをソフィーリア用に調整しなければならない為、ソフィーリア自身が足を運ぶ必要があるのだ。

ソフィーリアは仕立て屋に向かう馬車の中で、確信にも似た予感を感じていた。

憂鬱な思いで流れていく貴族街の景色を見ていると、案の定見知った顔を見つけてしまった。

アイリとその前に立つソレイユを。


「はぁ、やっぱりこうなりますのね。なんだか無性にイライラするのはイベントの強制力なのかしら」


はぁ、とため息をついて二人の様子を見ていると、不意にアイリがソレイユの頬を平手で叩いたのが見えた。


「何やってるのよあの子!? 止めて、すぐに止めなさい!!」


突然の出来事に焦ったソフィーリアは御者に馬車を止めさせ、慌てて二人の元に駆け出した。

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