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13・買い物の前に甘い物を

貴族街の大通りの前で馬車を停め、ソフィーリアとアイリは馬車から降りた。

御者に適当な所で待つよう伝え、ソフィーリアはさっそうと歩きだした。

その後ろにアイリと侍女が続く。


「さぁ、買い物にいくわよ。制服は採寸済みで完成した物を確認するだけ、家に送り届けさせればいいから後でいいわ。もう昼間なんてとうに過ぎてるからまずは腹ごしらえね。アイリ、それとロテュス、貴女たちは何かもう食べたかしら?」


ソフィーリアの問い掛けに二人は首を横に振る。

朝早くから馬車の準備をさせたり、押しかけて罰を与えるだのと騒いだりしたのだから、そんな暇がある訳ないのだが、ソフィーリアは気にしない。


「じゃあ、今流行ってるらしいパフェでも食べるとしましょうか。貴族街だから行列は出来てないでしょうけど、出来てたら公爵家令嬢の力でゴリ押してあげるわ」


「お、お止めくださいませ、ソフィーリア様!? かような事をされては公爵家の名に泥を塗る事になるかと!?」


「あら、そう? まぁ、その時はその時考えましょう。さ、急ぐわよ」


ズンズン突き進むソフィーリアをアイリとロテュスは慌てて追いかけていった。

目当ての店に到着、運よく行列は出来ておらず席も空いていた。

パフェを注文し、席に座る。


「さてさて、どんなパフェが出てくるのかしらねぇ。タワーオブパフェだなんて名前ですもの、さぞ塔の様に高いパフェ出るんでしょうね」


「は、はぁ……」


どこかウキウキとしているソフィーリアをロテュスは怪訝そうな顔で見ていた。

アイリもどこか落ち着かない様子。


「あ、あのソフィーリア様? 私、パフェという物を食べた事がないのですが、だ、大丈夫でしょうか?」


「えぇ、大丈夫よアイリさん。パフェはグラスの中にクリームやフルーツ、チョコなんかが入った甘い食べ物よ。アイリさん、甘い物お好きでしょ? きっと気に入るわ」


「そうなんですか!? 凄く楽しみです!!」


罰であるはずの荷物持ちをこれからさせられるというのにアイリのこの態度にロテュスは困惑する。

貴族であるならば、荷物持ちなど恥以外の何物でもないはずなのに、と。

少ししてパフェがテーブルに並ぶ。

タワーオブパフェの名に恥じぬ高さのパフェであった。


「こ、これはなかなか凄いわね、まぁいいわ。さぁ、アイリさん遠慮なく食べるといいわ、ロテュスも食べなさい。無理させたお詫びよ」


「い、いえ、私にそのような配慮は無用ですソフィーリア様!! 私はただの侍女でしかないのですから」


「なら、命令よロテュス、食べなさい。それとも私の命令が聞けないのかしら?」


「え、あの、そんな訳はないのですが……。はぁ、畏まりました、ソフィーリア様の命に従います」


「うん、それでよろしい」


ソフィーリアとロテュスのやり取りをアイリは満面の笑身を浮かべて見ていた。

それに気づいたソフィーリアが怪訝な顔をアイリに向ける。


「どうかしたのかしらアイリさん? 妙にご機嫌な顔で。そんなにパフェが嬉しかったのかしら?」


「いえ、そうではありません。あ、パフェも大変美味しそうなので嬉しいのは確かですが。ただ、やっぱりソフィーリア様はソフィーリア様なんだなって思いまして」


「?? よく分からない事を言う子ね。まぁいいわ、早く食べないと、お店を見て回る時間がなくなるわよ。味わいつつも早く食べちゃいなさい」


「はい、わかりました!!」


三人は他愛のない会話をしつつ、パフェを楽しんだ。

さらっと代金を先払いしていたソフィーリアに申し訳ないと言う二人だったが、ソフィーリアは問答無用と次の店へと向かう。

次にソフィーリア達が入ったのは服飾店だった。

貴族御用達の店である以上、店員は誰が客として来たのかをチェックし、店にそぐわない人物であったなら平然と追い出す事もある。

客はさっそく店に入ってきたソフィーリア達をチェックしに来たが、先頭を歩くのが公爵家令嬢であるソフィーリアであった為に店長自らが平身低頭で出迎えてきた。


「これはこれは、イヴァノフ家ご令嬢のソフィーリア様、当店へようこそおいでくださいました。今日はどのようなお召し物をご希望でございましょうか?」


「そうね、私は好きに見てるから、この子に似合う物を見繕ってちょうだい」


そう言ってソフィーリアはアイリを指さす。

指を刺されたアイリはビクリと身を震わせた。

アイリは平民時代は元より、特別貴族となってからも、こんな高級そうな服飾店など入った事はなく、並んでいる服はどれも意匠が凝らされており宝石がアクセントとしてついている物もある。

とてもではないが、自分に似合い物などないと半ば確信しているアイリは大いに首を振り、ソフィーリアに泣きついた。


「ソ、ソフィーリア様!? 私なんかにこのような素晴らしい高級な服が似合う訳ありません!! 私の事など気になさらず買い物をしていただければ!!」


ソフィーリアは自分に泣きつくアイリを軽く無視して、アイリに対し、どこの馬の骨だろうかと、嫌そうな視線を向ける店主を睨みつけた。


「店主、この子は聖女よ。分かるわね、いずれ国を救うと謳われる聖女のスキルを持つ子よ。出は平民だけど構わないわよね? それともこの店は国を救う聖女をないがしろにする店なのかしら?」


ソフィーリアの鋭い目と脅し付けるかのような声に驚きながら、店主は揉み手をしてアイリに頭を下げた。


「そ、そんな事はございません!? 聖女様とは露とも知らず、申し訳ございません。えぇ、ではこちらにどうぞ」


「あぁ、安心なさい。その子にちゃんと似合う服を選んでくれたなら私が代金を払うから。気にせず見繕いなさい」


「畏まりましてかしこー!!」


変な声をあげつつ店主は丁重にアイリの対応を始めたのを見てソフィーリアは一人苦笑いする。

そして、ソフィーリアがアイリの分の服の代金を自分が払うと言った事でアイリは申し訳なさから、それはいけません、とか、そんな事までしていただかなくても、と喚いていたが、ソフィーリアは無視した。


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