報われない魔法少女の君を一番理解しているのは、宿敵であるはずの俺でした~どうして俺はこんなにもお前に肩入れするんだろう?~
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この街を破壊者達の手から守る役割をたった一人で担っている者──それが、『魔法少女』。
桃色を基調とした装束を身に纏い、ステッキを片手に恐るべき破壊者と戦う。
それも全て、この街を──ここに暮らす人々を守るため。
しかし、そんな魔法少女の正体はただの高校生。
普通に学校に通って、普通に授業を受け、普通に下校する。
ただ、魔法少女という役割を与えられただけの……報われない一人の少女。
────本当に、報われない。
「何で……? 何でなの美鈴ちゃんッ!?」
バン! と机を叩く音と共に、そんな少女の悲痛な叫び声が教室中に響く。
叫ぶ少女の目尻には涙が浮かんでおり、今にも溢れ落ちそうだ。
「何でポチを……ポチを助けてくれなかったのッ!?」
「ゴメン、なさい…………」
そう謝ることしか出来ない少女こそが桜木美鈴──この街を守る魔法少女だ。
中背痩躯。長く艶やかな亜麻色の髪に、少し垂れ気味な大きい栗色の瞳。肌は雪を欺くほどに白く、きめ細かい。そして、楚々と整った顔は実に可憐で美しいが、どこか儚げ──そんな少女。
「私、美鈴ちゃんのこと友達だと思ってた! だから、ポチのことも……助けてくれるって……思ってたのにっ……!?」
「本当に……ごめんなさい……」
昨日、破壊者側から街に攻撃があった。
それによって壊された家も少なくはない。
恐らく、美鈴の友達の飼っていた犬か何かのペットが、昨日の攻撃で命を落としてしまったのだろう。
それを、友達は魔法少女である美鈴のせいにしている。
いや、その友達だけじゃない。
教室のあちらこちらから陰口が聞こえてくる。
「うわぁ、可哀想……」
「何で助けてあげなかったの……?」
「魔法少女なんだから、ちゃんと守れよ……っ!」
……等々。
もちろん美鈴の耳にもそんな容赦のない声が届いている。
その証拠に、机の下で固く握られた両拳は震えており、よく見れば瞳は潤んできている。
「っ……もう美鈴なんて友達じゃないッ!」
「…………」
美鈴の友達──いや、元友達はそう言い残して、泣きながら自分の席に戻っていった。
授業開始前の教室の雰囲気は最悪。
まあ、いつものことだけどさ……。
こんな光景を美鈴の隣の席で見せられてる俺の気持ちにもなって欲しいよ、皆さん?
凄く腹立たしいから……いやまぁ、俺が腹立てるなんて筋違いもいいところなんだけれども。
「気にするなよ?」
「あはは……ありがとうございます。カナタ君……」
ったく、魔法少女が──美鈴がいるからこの程度の被害で済んでるってのに、クラスの連中は……。
よし、俺が襲うときが来たら、アイツらの家をぶち壊しに行って差し上げよう。
と、実は破壊者側に所属する俺は、心の中でそう決める。
それも、魔法少女のお隣で。
ただ、本当に報われないよな、魔法少女は……宿敵である俺ですら同情を抱かずにはいられない。
街を守ることで当然感謝もされる。
しかし、全ての攻撃に対して対処できるわけではない。
感謝の数と同じだけ、非情で鋭利な言葉が投げつけられる。
魔法少女はいつも孤独だ────
□■□■□■
その日の夜────
何でこんなことをしているのか自分でもわからない。
魔法少女の心が傷付き、弱くなってくれるなら俺達破壊者側にとったら好都合だ。
しかし、俺はどうしても美鈴のことが気掛かりになって、彼女の家の近くに来ていた。
黒を基調としたローブを纏い、顔全体を覆う仮面を付けた今の俺の姿は、破壊者として変身した姿だ。
魔法少女はそんな破壊者から感じられるオーラのようなものに敏感で、恐らくここに立っていれば美鈴もすぐに────
「破壊者……ッ!」
来た。
美鈴は俺のこの姿を見て、もちろん学校で隣の席の男子などと気が付くはずもなく、どこからともなく右手に銀色のステッキを出現させると────
「変身──」
おお……何回か遠目から見たことはあるが、こうして目の前で見るのは初めてだ。
桜の花弁がどこからともなく吹き荒れてきて、美鈴の身体を包み込む。そして、目映い光にその姿が消えたかと思うと魔法少女として変身した美鈴が現れる。
長い亜麻色の髪の毛は桃色に変色し、いつの間にかハーフアップにされている。
服装も部屋着から、桃色と白色を基調とした魔法少女の装束に変化しており、こちらも宝石のように透き通ったピンク色に変わった瞳を鋭く俺に向けてくる。
「初めて見る破壊者ですね……」
「まあ、俺割と強い方だからな。雑魚達みたいにバンバン暴れまわったりして無駄に姿を晒したりしないんだわ」
「でも、こうして私の前に姿を現したということは……」
「ああ。魔法少女……お前に少し話が──」
「──私を殺しに来たんですねッ!?」
「あ……いや、違う──」
「私はこの街を守るために……死ぬわけにはいきませんッ!」
人の話を最後まで聞いてもらいたいものだ。
話しに来たっつってんだろ?
しかし、宿敵である俺の言葉になど耳を貸さない美鈴はステッキの先端を俺に向けてきて────
「【ブロッサム・スプラッシュ】ッ!」
「──ちょおい!?」
咄嗟に横っ飛びでかわした俺の隣を、桃色の花弁の嵐が吹き抜ける。
そして、後ろの木の幹に着弾し、薙ぎ倒される。
「なんつう破壊力……って、おい魔法少女ッ! 環境破壊だぞ!」
「破壊者が何を言ってるんですか!」
た……確かにッ!?
ただ、美鈴は次々と魔法を放ってくるので、俺は「話を聞け!」と叫びながら逃げ回り、真夜中で人気のない公園までやってくる。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「や……やっと追い詰めましたよ……破壊者……」
俺も美鈴も息が上がってしまっている。
「魔法少女や……話を、聞けッ!?」
「誰が破壊者の言葉になど耳を貸しますかッ!」
「くそ……!」
仕方がない。
取り敢えず話がまともに出来るようにするしかない。
俺は地面を強く蹴り出して、一気に美鈴の懐に入る。
そして、足払いをして美鈴の体勢を崩すと、そのまま身体の下に組み敷く。
「っ……強い……!?」
美鈴がそう声を漏らすが……違う。
美鈴が弱すぎる。
前々から少し思っていた。
昔は魔法少女として覚醒したばかりであるにも拘わらず、異常に強いと思っていた。
しかし、最近ではそんな力は見る影もなく、もっと根本的な『戦意』というものすら感じられない。
「おい、魔法少女。お前は何で街なんか守ってんだ?」
「それが……私の責務だからですッ!」
「守ったはずの人々から、心ない言葉を浴びせられてもか?」
「っ……!?」
どうして貴方がそれを!? とでも聞きたげな顔だ。
その答えはお前の隣の席でいつも聞いているからなんだが、当然そんなことは言えない。
「報われないよな、魔法少女。それでもお前は戦い続ける……なぜだ?」
「…………」
美鈴は俺から視線を逃がして黙り込む。
俺と美鈴の間にしばらく沈黙が流れ────
「どうして貴方が……そんなことを気にするんですか……」
「は?」
「貴方に言ってどうするんですか!? 破壊者の貴方に私の何がわかるっていうんですか!? 報われない? 知ったようなこと言わないでくださいッ!」
美鈴のピンク色の瞳に涙が浮かび、寂しげな街灯の明かりを異様に反射する。
「誰かがやらなきゃいけないじゃないですか……私が役目を投げ出したら、誰が破壊者達からこの街を守るっていうんですかッ!?」
「…………」
何も言えない。
一人の少女に課せられた大きく重たすぎる責任。
そんな少女の悲痛の叫び。
本当に、見ていられない…………。
「え?」
美鈴の身体を解放した俺に、美鈴が不思議そうな声を漏らす。
「これ以上お前とつるんでると、俺の破壊者側としての立場が危うくなるわ……」
「殺さ……ないんですか……?」
なぜか身体の奥底から苛立ちが込み上げてくる。
自分でもワケがわからない。
俺は美鈴の疑問に答えることなく、半ば逃げるようにこの場所から去った────
□■□■□■
「いってぇ……」
別に俺はこの歳になって中二病デビューしたわけではないが、腕や脚に包帯を巻いている。
制服で隠れて気付かれないが、この下は怪我だらけである。
昨日魔法少女を追い込んだにも拘わらず、止めを刺さなかったことが、破壊者側にバレていたのだ。
俺は美鈴と別れたあとに破壊者側のお偉いさん達に呼び出され、タコ殴りにされ、破壊者としての地位を失った。
今の俺は、ただ力があるだけの一般市民だ。
まあ、別に良いし。
好きで破壊者やってたワケじゃないし、これまで街を破壊したことなんてないし。
こんな外傷はすぐに治る。
しかし、隣の席に腰を下ろしている美鈴が負っている心の傷は、そう簡単には治らない。
そして、相変わらず教室のあちらこちらからは美鈴の陰口が聞こえてくる。
それを聞いても、文句の一つも言わない美鈴。
ムカつくな。
非常にムカつく……。
そして、ついこの間まで友達だった女子も陰口に加わっている。
美鈴も、もちろん俺も反応はしない。
だが────
「ほんっと……よく平気な顔して学校来れるよねぇ──」
ガタァーンッ!
突然の音に、教室中の視線が俺に集まる。
つい衝動的に机を蹴り飛ばしてしまった。
前に誰かいなくてよかった……などと考える余裕は今の俺にはない。
今聞こえた言葉だけは、どうしても聞き捨てならなかった。
「平気な顔して学校来れる……だと? お前らさ、いい加減にしろよッ!?」
「か、カナタ君……!?」
隣から美鈴の驚いたような声が聞こえるが、今は取り敢えず無視する。
「本当にそう思ってる奴らは全員破壊者以下のクソ野郎だ!」
教室が静まり返る。
「コイツが昨日どんな顔してたかっ……いいや、いつもだ! いつもいつも文句ばっか言いやがって。ならお前ら街を守るために何かしてんのかよ!?」
反応なんか帰ってこない。返ってくるはずがないのだ。
「でもまぁ……つい昨日まで破壊者側にいた俺から言わせてもらえば、お前らは俺の仲間みたいなもんだ。
だってそうだろ? 魔法少女の精神を日常のなかで削っていってくれるんだぜ? これほど有用な破壊者の協力者はいないね」
「カナタ君……破壊者って……?」
「ああ、昨日まで破壊者側だったんだわ」
その証拠に俺はパパっと変身してみせる。
黒いローブに顔を覆い尽くす仮面。
教室中から悲鳴が上がると共に、美鈴が驚愕のあまり目を見開く。
そりゃそうだろ。昨晩あった破壊者が俺だったことに気が付いたんだから。
そして、狙い通り。
今日この日から、陰口や嫌がらせの対象は美鈴から俺に切り替わった────
□■□■□■
いやぁ……今日も清々するほど陰口を叩かれた。
美鈴が今までずっとこんな扱いを受けてきて、それでもこの街と皆を守るために戦っていたのだと思うと、本当に悲しくなってくる。
でも、何で俺、わざわざこんなことをしたんだろうか。
自分でもよくわからない。
ただ、あれだけ頑張っている美鈴が酷い扱いを受けていて……それを見ていると何か腹立ってて……。
と、そんなことを思いながら下校の準備をし、靴箱に向かうと────
「ん、何やってんの?」
「──ッ!?」
美鈴が俺の靴箱に何かの紙切れを入れようとしていた。
その現場を見られて、美鈴は妙に頬を赤らめてあたふたしている。
「あ……えと、その……置き手紙といいますか……」
「手紙? ああ、人目のあるところで直接俺と話せないもんな。お前の立場的に」
元とはいえ、破壊者であった俺と魔法少女である美鈴が仲良く話なんかしていたら、また美鈴が陰口や嫌がらせの対象にされてしまう。
だが、丁度いいことに今ここに人はいない。
「何か用があるなら今聞くぞ? 人いないし」
「こ、ここじゃダメです! 予定通り屋上に行きましょう!」
よ、予定?
何のことかはわからないが、美鈴は半ば強引に俺の手を引いて階段を上っていく。
そして、屋上の扉を閉めると────
「どうして私のためにここまでしてくれるんですか……? 自分が酷い目に遭うってわかってたはずですよね?」
「……わかんね」
「え?」
「知らないよ。何かお前が文句も言わずされるがままになってるのが無性にムカついたんだよ……」
「で、でもカナタ君……破壊者でしたよね……?」
「別に……好きでやってたワケじゃない」
俺と美鈴の間に微妙な沈黙が流れる。
しかし、美鈴が静かにその沈黙を破る。
「私、カナタ君には感謝してるんです……」
「感謝?」
美鈴はコクリと首を縦に振る。
「皆が私に不満を言う中、カナタ君だけはいつも私の味方でいてくれました……まあ、敵だったんですけどね?」
あははと、自嘲気味に美鈴が笑う。
「いつの間にか私の中でカナタ君は心の支えになっていて……何のために戦っているのかわからなくなりそうなときは、無意識にカナタ君のことを思っていました……」
え、何……これ……?
聞いてると、何か身体が熱くなってくるし、心臓がうるさくなっていく。
「カナタ君が私の敵だったと知っても、私のこの思いは今でも変わりません……」
そう言いながら、美鈴は俺の真正面にまで近付いてきて、恥ずかしそうに上目を向ける。
「いつも私を気遣ってくれる……私のことを一番理解してくれているそんなカナタ君のことが──」
トン……と、美鈴は俺の胸に頭を押し付けてきた。
「────好きです」
このとき、確かに俺の心臓が一際大きく跳ね上がった。
そして同時に、なぜ俺が敵であるはずの美鈴を気に掛けていたのか──その理由を理解する。
いたって、単純明快。
俺は腕を美鈴の背中に回し、強く抱き寄せる。
「魔法少女……その言葉、そっくりそのまま返してやるよ……」
死んでしまいそうなほど恥ずかしい。
でも、なぜか心地良い。
美鈴も俺と同じように思っているのだろうか。
「お前が街を守るなら、これから俺はお前を守るよ……」
「私を……?」
美鈴は上目遣いで俺を見上げてくる。
「ま、お前の戦い危なっかしいしな。おまけに、俺の方が強いし!」
俺は恥ずかしさを少しでも紛らすために、大袈裟に胸を張ってみせる。
「わ、私も強いです!」
「いいや、俺の方が強いね」
「えー、そうでしょうか?」
「な、何だよ……?」
美鈴が何かを企むように微笑む。
「では、今から私の放つ技に耐えられたらカナタ君の方が強いと認めましょう!」
「嫌だよ! 何でそんなことしなきゃ──」
「え、逃げるんですか?」
コイツ……。
安い挑発に乗るのは癪だが、良いだろう。受けてたってみせよう。
俺と美鈴は互いに変身し、一定距離をとる。
そして────
「いきますよ、カナタ君?」
「どこからでもどうぞ?」
「では──ッ!」
美鈴は桃色の残像を残す速度で俺に迫ってくる。
技とは物理攻撃なのだろうか? 間合いは一瞬で消し飛び────
「うわっ……!?」
美鈴が足払いを掛けてきて、俺は体勢を崩し、そのまま地面に倒れ込む。
美玲はそんな俺の身体を押さえ付けるように跨がって────
「──ッ!?」
美鈴の顔が俺の顔に急接近してきたかと思うと、柔らかくて温かなモノが、俺の唇に押し当てられる。
一瞬で俺の頭の中は真っ白になる。
そして、唇を離した美鈴は顔と耳を真っ赤にして、恥ずかしそうにそっぽを向きながら言う。
「ひ……必殺【魔法少女キッス】です……」
ネーミングセンスはともかく、これには勝てない。俺の完敗だ。
恐るべし必殺技……物理攻撃にも拘らず、精神に多大なダメージを与えてくる。
ただ、この足払いからの押さえ込みは……
「あと、あの日の夜の仕返しでもあります……」
やっぱりか。
どうやら美鈴はかなり根に持つタイプらしい。
「俺の負けだな……」
「へへへ……」
「でも、この必殺技……俺以外に使うなよな?」
「あっ……当たり前じゃないですか! それに……初めては一度きりなんですよ……?」
か、可愛すぎるだろ……!?
俺はこのあとしばらく、美鈴と目を合わせられずにいるのだった────
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
いやぁ……これ、ローファンじゃねッ!?
と、作者本人でさえ思ってしまいますが、恋愛要素をやはり中心に考えたので、ラブコメということで!
もし皆さんが気に入っていただけたようなら、この作品のネタを使って、きちんとローファンにでも仕上げてみようかな……と、思ったりなんかしちゃってますっ!
ではでは、他の作品で会いましょう~!




