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選択、そして

残酷な描写があります。

ご注意ください。

「皆!」


ああ、皆が助けに来てくれた。

良かった、これでここを離れてブラックさんを治療できる。


僕がそう思い、皆が僕達の所に駆けつけようとした瞬間だった。


ボルテック「ドレインローヴ!」


「え?」


後ろでボルテックが叫んだ途端、二つ目の魔法陣が発動した。

キイイイーンッ魔法陣が赤く輝きだす、それが僕達と皆を包み込む。


レッド「?!、足が動かない!」


グリン「これは、罠!!?」


イエル「リーンッ!」


カル「か、は、気持ち悪い、床に引っ張られる?!」


タン「お姉さーん、うぐぐぐ?!!」


マリン「やられた!く」


ブラック「ぐああああ!」


魔法陣の中で皆が膝をついて、苦しみだした?!


「ブラックさん?!みんな?一体なにが??」


皇帝「フェッフェッフェッフェッ、よくやった、ボルテック。こうなると英雄とて形無しじゃのう、さて、娘よ」


「娘?!僕の事?」


皇帝「そうだ、お前に選ばせてやろう」


皇帝は、僕のやや左胸を指差した。


皇帝「その❪賢者の石❫をわしに差し出すか、英雄どもを見殺しにするか、好きに選ぶがよい」


こいつ、今、何て言った?皆を見殺しにする?


皇帝「今、ボルテックが発動させた魔術は星魔法力を奪い、破壊魔法の魔力に変換する魔術。星魔法使いはその特殊性から星魔力を持っているが、その星魔力が全て枯渇した時、星魔法使いは確実に死ぬ」


「!!判った、僕はどうすればいい?」


僕は立ち上がって、ブラックさんの所から皇帝の方へ歩いていく。


ブラック「ま、てっ、リ、ン」


僕は振り向いて、ブラックさんに言った。


「大丈夫、必ず助けるから」


ブラック「リ、ン」


僕は皇帝の所に歩いていく途中、ボルテックの前に来てふと、足が止まってボルテックを見てしまう。

ボルテックは不思議そうに僕を見る、僕も不思議そうに見るが何故か懐かしさが沸き起こる。


ボルテック「…………?」


「おとさま?」


ボルテック「!!な、に??ま、まさか」


あれ?僕、今なにか言ったかな?なんかボルテックが目を見開いて震えだした、なんだ?まあ、いいか、僕は皆を助けないと!

僕はそのまま、ボルテックの前から歩きだすと皇帝の所に向かう。


皇帝「来たか」


「さあ、これから僕はどうすればいい」


皇帝「その前にお前に施されている、エルフの秘術について、教えてやろう」


皇帝はゆっくり立ち上がった。


皇帝「宝玉という宝石がある。この宝玉には魔素を魔力に変換し、蓄える事ができる。だが、それを機能させるには生き物の意思が必要だ。だから、生き物の体内に施術し機能させるようにする」


皇帝「生き物が魔力を貯められるようになると、魔力のお陰で生命力が上がる。かつて、ある部族が延命手段として医術として運用した。だが、彼らは宝玉に別の特性がある事を知らなかった。宝玉は生きているのだ。そして、宝玉は生き物の魂を喰らう。喰らい尽くされた者は廃人となり、やがて心臓が停止する。最後は、宝玉も死んで溶けて心臓を結晶化する。まあ、なかにはその者のように全身を結晶化する場合があるがな」


皇帝はお母様を指差す。


皇帝「結晶化したものは、魔石と同じ効果を持つ。お前の母親のお陰で、我らは世界一の魔石を持てる事になった。ありがたいことよ」


経緯は判らないけど、お母様がここに有るのは、マトモな理由ではないはずだ。

?なんだろう、急にボルテックから焦りの視線を感じる?


皇帝「その秘術は封印されたが、封印される前に施術を受けた部族の者の中で、いつまでも廃人にならず生き永らえる人びとがいた。その者達は一様に長寿で美しく、ただ長く生きた者は耳が長く尖っており、不老不死だったという」


「そうか、それが師匠の」


皇帝「ふむ、お前はあの元宮廷魔道師のエルフのクォーターと共に生活していた事があったのだな。そうだ、奴の祖父母のいずれかがエルフだったのだ」


皇帝が魔石(お母様)に手を向けると、魔石(お母様)が輝き次の瞬間、皇帝の手に一冊の本があった。


皇帝「この本はクォーターの奴が、魔の森の別宅の地下に隠していたものだ。これにエルフの秘術の全てが書かれてある」


僕達が、住んでいたあの家に入ったの?!

皇帝はその本をパラパラッと開けると、あるページで止め読みだした。


皇帝「エルフとは施術により宝玉を宿すに至った人びとであり、その魂の大きさにより宝玉に共生を認められた者達とある。エルフとなった者の宝玉は❪賢者の石❫とよばれ、その者の同意を得られれば譲渡が可能であると」


皇帝は読み終えるとニタァッと、僕を見て気持ち悪く笑った。


僕は自分の胸に手を当てた。

そうか、僕の心臓❪賢者の石❫で皆を助ける事が出来るのか。

そう思うと、何だか嬉しくなった。

ルケルお兄ちゃんを助けられなくて、ずっと自分が役立たずだと思っていた。

だけど、今日は僕が皆を助けられる。


僕は、後ろを振り向いた。

皆は、魔法陣の中で苦しんでいるままだ。

時間がない。

僕は皆に大声で話した。


「僕は皆の事を本当の家族だと思っている。だから、家族を助けられる僕は嬉しく思ってるよ。本当に、本当に今までありがとう。僕は皆の側に居られて、とっても幸せでした」


レッドさんが必至に皇帝を睨みながら、床から立ち上がろうとするが倒れこむ。


「リーン?!やめろぉ!!」


グリンさんは、全く床から立ち上がれない。


「ぎ、ぎ、ぎ、リ、ン 、だめ、だ!」


イエルさん、カル君、タンちゃんは、床にうつ伏せ状態で必至に立ち上がろうとしている。

マリンちゃんも、うつ伏せだ。


「リンち、ゃん、だ、め、やめ、て」


ブラックさんは、座り込んでいる。


「皇帝ーっ、やめろぉ!!」



僕はにっこり皆に笑って、皇帝に向き直った。


皇帝「選択出来たか」


皇帝は、いつの間にか短剣を持っていた。


「約束だ、皆を解放して」


皇帝「譲渡が先だ、宣言しろ!石を我に、皇帝フィリップ▪フォン▪ギガールに譲渡すると!」


「僕、リンレイは❪賢者の石❫を皇帝フィリップ▪フォン▪ギガールに譲渡する」


その途端、僕の左よりの胸が仄かに虹色に輝いた。


皇帝が短剣を振り上げる、ああ、みんな、さようなら。


ボルテック「娘に触れるな!!」


「え?」


ボルテックが皇帝に飛びかかる。


皇帝「バカめ!貴様が裏切るのは判っておったわ」


ボッ、皇帝の手が輝き、強力な風がボルテックを壁に叩きつける。


ボルテック「ぐはぁっ!」


ハベル「やろう!」


ゲール「貴様!」


倒れたボルテックを、ハベルとゲールが取り押さえる。


皇帝「フェッフェッフェッフェッ、この魔石のお陰でこの城の中では、我は世界最強の魔道師、何人も我に触れる事敵わぬ」


皇帝が、改めて短剣を掲げる。

ああ、今度こそ、おしまいだ。

家族のみんな、だ▪い▪す▪き





ドシュッ


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