舞台は武闘大会へ
「武闘大会?」
朝食の食後のデザートに手を伸ばしていた僕に、お兄ちゃんが話しだした。
「そうだ、先日完成した闘技場で来週開催する。私と出席してほしい。無理にとは言わないが」
「命の取り合いはしない?」
「木刀か木槍での勝ち抜き戦、領の兵力の強化のための優秀な傭兵の選定が目的だ」
「面白そう、審査員をすればいいんだね」
「シンサイン?」
「その人の人柄とか、信用できる人かどうかとか」
「そうだな、なら、頼めるか?」
「うん、お兄ちゃんの為だもん」
なんか、わくわくするな。こんなイベントみたいなの、前世以来だよ。
そうだ!
「僕も出てみようかな」
「それは止めてほしい」
「だめ?」
お兄ちゃんは僕に近づき、頬に手を置いた。
「私を応援してほしいからだ」
「!お兄ちゃん、出るんだ?!ん、分かった。全力で応援するね」
お兄ちゃんのカッコいいところ、見たい、見たい。
「あと、優勝者には賞金が出るが、そなたから花束を渡してほしい」
「花束?僕から?でも、もっと美人のお姉さんからの方がよくない?」
「そなたがいい」
お兄ちゃんの青い目に見つめられ、なんか恥ずかしい。
「はい、任されました」
チュッ
お兄ちゃんが僕の髪にキスをする。
いつもの事で、慣れっこだ。
最近、イライザさんが居ないところでは素で話してる。
だって、令嬢言葉って面倒だもん。
お兄ちゃんも素の方がいいって言ってるし。
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◆カル視点
メイサ「カルー!」
リム「うお!あそこで手を上げてるのってメイサじゃん。おおい!ここだ、ここだ!」
おれたちはようやく中央都市ハルージヤに到着した。
武闘大会の二日前だ。
メイサ「カルー、やっと逢えたよ」
メイサはリムの前を素通りしておれの前までくる?
リム「おい、おれもいるんだけど!」
メイサ「なにリム、あんた居たの?」
リム「なに、この塩対応?!」
ここはハルージャの冒険者ギルド前、冒険者ギルドには冒険者同士で連絡を取り合える伝言掲示板がある。
これが庶民の連絡方法。
よく、マリンさん達が使っていた魔道レターの方が便利だって分かっちゃいるけど、一通で金貨一枚もしたらとても使えない。
「ミンは?」
メイサ「いろいろあって今はお兄さんといっしょよ、たぶん裏町の食堂ね、奥が獣人達の隠れ家なのよ」
リム「そうか、知り合いを探すって言ってたの、兄ちゃんの事か」
メイサ「あんた、あんまりミン様の事、ずけずけ言ってると首が飛ぶかもね」
「「ミン様?」」
メイサ「あら?言ってなかったかしら、ミンちゃんは獣人国の王女様でタンちゃんは王子様よ」
リム「はい~??!」
「はは、凄いな」
なんだ、ただの平民はおれだけか。
なんだか、またリンが遠くに行ってしまうような気がするな。
ジャイアントベアーと別れる時、堪えきれなくなっておれの胸で声を殺して泣いていたあの子の温もりは、まだ確かにおれのここに有るのに。
メイサ「それで?これからどうするの」
だとしても、あの子が苦しんでいるなら必ず救いだす。
「武闘大会にエントリーする」
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シン視点
部屋の温度が半分は激しく燃える炎のごとく高温に、もう半分は凍えるほどの猛吹雪のごとく低温になってしまった。
ことの発端は少し前にグリン殿下たちからの魔道レターが届いた時に遡る。
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ピーッ、鳥の形をした魔道レターが届いた。
たぶん、グリン殿下だ。
マリン「あら、マデリンではなく、グリンからだわ」
「グリン殿下はなんと?」
マリン「待って、…………リンちゃんを見つけた?!」
ガタッ、ゴトッ
殿下とタンが立ち上がる、それをマリン様が手で制して止める。
マリン「え?、な、なによ、それ!…………な」
マリン様が真っ青な顔で絶句している?私はレッド殿下と顔を見合せた。
魔道レターが床に落ち、マリン様が親指を口に咥えてなにやら震えながらぶつぶつ呟いている!?
私はレターを取り、声に出して読みだした。
「ベルタ公爵邸にてリンレイを発見。ルケル王太子に拘束されている?!」
レッド「兄上がリンを拘束?!そんなばかな!」
「待って下さい!続きがあります。リンレイの首に奴隷の首輪を確認?、また、洗脳の症状もある様子、隷属の首輪の可能性有り?!!直ぐの解放は困難と」
ダンッバキッ
殿下が机を真っ二つに割ってしまった?!タンがおろおろしている?うう、続きを読みたくないが、仕方がない。
「二人は武闘大会に出席する様子、ルケル殿下はその大会優勝者と最後に手合わせするとの事、その時にルケル殿下をねじ伏せ、リンの解放を宣言させるしか方法はないと?!以上です」
う、背中側の気温が急に下がった?いや、前からなにやら熱気が?!
顔を上げるのが怖い、が、やむを得ない、私が恐る恐る顔を上げると、そこには背から炎がみえる気がする鬼の形相をした殿下と離れて震えるタン、そして後ろを振り返ると猛吹雪の幻影が見える気がするマリンさま、勘弁してください。
レッド「…………………」
マリン「ふっ、ふふ、ふ、私の大事なあの子を奴隷にした?しかも、洗脳まで?ふふ、ふっ」
早くこの部屋から逃げよう?!




