公爵邸
「ほら、これも食べなさい。美味しいぞ」
「あ、ありがとうごさいます?ルケル様」
「ルケル様ではない、お兄ちゃんだぞ、ほら、口を開けなさい」
「大丈夫、自分で食べられ、もごっ?!」
「ほら、旨いだろう?」
モグッモグッモグ
「これも旨いぞ、口を開けなさい」
「まだ、食べてる、もごっ?!」
「まだまだあるぞ、どれがほしい?」
モグッモグッモグ
「これか?それともこれか?なんでもいいなさい」
「モグモグ、ゴクン。ま、待って、もう、お腹いっぱいで、す。ルケル様!」
「お兄ちゃん、と、もう、呼んでくれないのか?」
クゥ~ン
は?目の錯覚かな。今、ルケルが落ち込んでる子犬に見えたんだけど??
「……………お、お兄ちゃん?」ニコッ
「!!ああ、オリビア!オリビア!私のオリビア、私の唯一の家族!」
ギュッ「?!!」
く、苦し、僕はベッドの上でルケルに抱きしめられた。
あれから、僕は三日も意識が無かったらしい。
よくわからないけど、死にそうになっていたらしい。なんでだ?
それで目が覚めたら、ルケルが僕の❪お兄ちゃん❫だ、って言ってくるし、やたらお世話してくるし、この人、もっと怖い人だったよね?なんかほんと、今はただの弟想い?の良いお兄ちゃんなんだけど。
ええっと、それからなんか、専属侍女を付けられたんだけど、それが親子なんだよね。
僕が命を助けたらしい?んだけど、全く記憶がないんだよ。
エテルナ「エ、エテルナと申します、こ、この子はエミリーです。どうか、よろしくお願いいたします。聖女さま」
二人がお辞儀をして控えている。
「よろしくね、聖女さま?」
エテルナ「あ、いえ、失礼しました。オリビア様」
「お前達!」
また、ルケル殿下が足早にドアから入ってくる。
「オリビアに命がけで助けられたのだ、平民とはいえその恩に報いるに命がけで仕えよ。わかったな!」
エテルナ「は、はい。分かりました」
エミリー「………はい…」
また、この人、めっちゃ上から目線なんだから、ほら、エテルナさんは真っ青になってるし、エミリーちゃん、十歳位かな?震えてるし、あと、なんかルケルを睨んでる?!
「ル、お兄ちゃん、後はぼ、わたくしがお話ししますわ。おまかせください」
ルケル「そうか?そなたの侍女だからな、まかせよう。早く元気になれ、オリビア」
ルケルは僕の右手にキスを落とすと、また、足早に部屋から出ていった。
一連の動作がキザだなーとか思うけど、イケメンは様になるよね。
あれ?前はスッゴく嫌な感じだったけど、毎日されてるせいか、自然に受け入れてる自分がいる?なんでだ?
「ごめんなさいね、おに、殿下が厳しく言ったけど、わたくしは普通に接してもらえればいいですので」
エテルナさんとエミリーちゃんが僕のベットの端に来て、跪いた。
エテルナさんが僕の手を掴む。
エテルナ「聖女様、本当にありがとうございました。貴女様のお陰でこの子を一人にしないですみました。聖女様に頂いたこの命の限り、誠心誠意、仕えさせていただきます!」
「は、はい」
エテルナさん?目が真剣で圧が凄いです。
茶髪くせ毛なエミリーちゃんが両手を合わせて、祈りのポーズで僕を見る?
エミリー「聖女さま、お母さんを助けてくれてありがとう、今度は私が聖女さまを助けるね」
「はい、お願いね、助ける?」
エミリー「聖女さま、あいつに無理やり捕まえられてるって!」
確かに拘束されてるけど、なんで知ってるの?!
「ええっと?それは誰かに聞いたのかな?」
エテルナ「エミリー?」
この反応、エテルナさんは知らなかった?
エミリー「男の人!後で皆、助けるって!」
??レッド達かな、ここにいるって気づいてくれた?!
「エミリーちゃん?その人とは何処で会ったの?」
エミリー「言えないけど、時々会えるから」
???誰?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
公爵邸別館の一室
「それで?帝国はどうしたいと?」
「へぇ、改めて引き渡しを要求してますぜ」
「それは聞けん。魔獣兵器の開発が遅れてもいいのかとでも言っておけ!」
「いんですかい?先日の一件でここに聖女がいるのはバレバレですぜ?」
「くく、たかが隣国の宰相ごときが王太子である私に命令できるとでも?」
「…………話はわかりやした。それで、そろそろあっしにも魔獣兵器のノウハウを教えもらえんですかい?」
「何故だ?何故知りたがる、お前は命じられた事だけしていればいい」
「分かりやした…………」
立ち上がったハベルは、会釈し部屋からでていった。
◆◆
公爵邸を出たハベルは、とある裏町のある小屋に入っていく。
そこにロープを着こんだ男が待っていた。
「首尾は?」
「駄目でさ、どうやら殿下はもはや、帝国の力は必要ないみたいでさ」
「ち、時間稼ぎにつかわれたか」
「共同開発を持ちかけて、人も物資も場所も提供したのに、結局、今も生きているのは最初に殿下が送ってきた魔獣のみですからね」
「奴は王太子になった時点で、我らの支援は必要なかったのだ。兵力を蓄える時間があればよかったのだからな」
「ノウハウも一部の開示だったって事ですからね、帝国はいいように手玉に取られたって事ですかい」
「貴様、わかっているだろうが我らを裏切るなよ、裏切り者は」
「へいへい、わかってやすよ。あっしもまだ死にたくないんで」
「それで?聖女はどうなのだ?」
「細工はしてやす、あとはタイミングだけですや」




