オルトブルクの奇跡
暖かい、白い光の世界。
どこまでも清らかで、でもこの温もりは昔、誰かにもらったものに似ている。
遠くになにか見える。
滑り台だ。
ああ、大宮市のバンビー保育園側、公園の滑り台。
ふと、手を見ると随分小さな手だった。
胸にさくら組の名札、そこに平仮名で(りんたろう)って書いてある。
回りを見てみると、沢山の小さな机とイスがある。
でも、誰もいない。
すごく静かだ。
ふと、何かに気がつく。
誰かが僕の右手を握っている。
顔がはっきりしないが間違いなく知っている人、忘れてはいけない人、でも、とっても髪が白い?あれ?その人は髪は黒いはずなのに、なんで白い?
「この魔法は禁忌の魔法、貴女に負担が大き過ぎた」
そうなの?だから使うと血反吐をはいて苦しいのかな?
「貴女は今、生死の境にいる」
そうなの?でも、ここは気持ちよくてずっとあなたと居たいな。
それにね、この滑り台は保育園に迎えに来てくれた、兄ちゃんといつも遊んでいたんだ。
だからとっても楽しいんだよ。
「駄目よ、りんちゃん!!ここは、まだ、来ては駄目よ!」
りんちゃん?懐かしいな、日本語のりんちゃんか、ああ、じゃあ、あなたは日本人?
ぽたっ、ぽたっ
水が顔に落ちてくる、なんで泣いてるの?
「あなたに何もしてあげれてない、あなたは幸せになってほしい」
僕は今、幸せだよ。ここはとっても楽しいんだよ。
タッ、タッ、タッ、タッ
「こんな楽しい遊びを一人で遊ぶなんて、あんたずるい、だから、どいて!」
ドンッ
?!!???
突然、黒髪の小さな女の子に突飛ばされた?はい?!
なにするの!そこは僕と兄ちゃんの大事な場所なのに!
「きゃははは、たーのしーい」
やめて!そこは僕だけの思い出の場所なのに、ひどい、ひどいよ!うう
「泣いてるの?しょうがない。なら、あたしはあんたになる、あんたはあたしになる」
僕になる?僕が君になる??
「ね!それならあんたの思い出はあたしの思い出、あたしの思い出はあんたの思い出だよ」
僕が君で、君が僕?君と僕は一人なの?
女の子はニッコリと笑って、後ろで泣いている白髪の人に振り向いた。
「あなたの大切は、あたしが守る。だから、今は泣かないで」
「ありがとう、リンちゃん。これを」
白髪の人が手に虹色の光の玉を女の子に渡す。
「これは?」
「これは、りんちゃんの魂の力。異世界人の魂はこの世界のすべての理を凌駕する。その力はこの世界の神にすら届きうるものなの。りんちゃんの力を手に入れる事は世界を手に入れると同義よ。だけど過度な力に器が追いついてない。だから、これに力を封印した」
女の子は受け取った玉を、じっと眺めた。
「綺麗」
「りんちゃん、それと、リンちゃん、その力はもう、使っては駄目、貴女の身体は限界なの」
うん、わかった。僕は使わない。
「あたしも、使わない」
「…………でも、いちどだけ、………いちどたけ、貴女がその力を本当に必要とした時、私の名を呼びなさい。私の名は▪▪▪よ」
スゥ~ッ、回りの景色が消えていく。
白髪の人も薄くなる。
「さようなら、私の愛し子、どうか幸せになって」
白髪の人は景色と共に消えていった。
後には僕と女の子だけだ。
女の子が僕の手に自分の手を重ねる。
「僕の名はリンレイ」
気がつくと僕は、一人で大きな鏡に両手で触れていた。
ピシッ
鏡にヒビが入っていく。
ピシッ、パリッ、ビシッ
パリンッ
鏡はついに粉々になった。
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ルケル視点
「なんだ!?これは?!!」
オリビアが虹色の光に包まれ、死んだ母親と共に一メルほど宙に浮いた。
辺りが強い光に包まれた。
「女神よ禁忌を許したまえ、世界の力よ、今ここに!スターリザレクション!!!」
カッ、ピカッ
全域が一瞬、目映い光に包まれた。
◆◆◆
間もなく光が消えて、二人がゆっくりと地面に降りてくる。
魔法?!なのか?ありえない。
これほどの天変地異を起こせる魔法など、ありえない。
この世界の魔法使いは普通は一属性しか使えず、二属性持ちは稀だ。
さらに攻撃魔法や物理干渉ができる魔法力となると、英雄意外では世界に数人程度だ。
オリビアは街を照らす魔法と宙に浮く魔法を同時に使っていた。
つまり、英雄並みの魔法力が有るという事。
生まれ持った資質、❪魔法使い❫か。
私がそれが無い為にどれほど苦労しているか、お前には分かるまい。
私は沸沸と怒りが沸き上がるのを止められない。
母親は橫になったまま地面につき、オリビアが目を瞑ったまま地面に足をついた。
苦しめてやる、私は憎々しくオリビアを睨み、勝手をした仕置きをするつもりで腕輪に手を伸ばし
ゴフッ
「?!!!?」
激しく血反吐を吐いて崩れ落ちていくオリビア、私は咄嗟に抱き抱えていた。
ヒューッ、ヒューッ、ヒューッ
まるで虫の息だ?!
オリビアの手から体温が下がっていくのが分かる。
その時、毒を飲んで死んだ母の遺体とオリビアが重なって見えた。
死なせるものか!
「お前達!オリビアを馬車に!公爵邸に魔道レターで医師の手配を!!急げ!」
従者「母親と娘はどうしましょうか?」
何故か従者が真っ青な顔で聞いてくる?
「捨て置け、死体に用はない」
従者「い、生きております」
「なに?」何をいった?
従者「生き返りました、ひぃ?!」
母親「あれ、?私はなにを??」
娘「お母さん!?よかった」
母親が何事も無かったように起き上がる、ありえない、私は夢でも見ているのか?!確かに従者の剣が胸を貫いていたはず!?
母親が起き上がるのを見ていた人々が、口々に叫ぶ。
「奇跡だ、母親が生き返った?!」
「聖女様が降臨された!」
「オルトブルクの奇跡だ!!」
民衆が激しく騒ぎたてる、もはや収拾がつかない!仕方ない。
「親子も馬車に、丁重に扱え!」
「は!」
私は従者に指示し、急ぎ公爵邸に向かった。
◆◆◆
「心の臓が弱くなっております。今夜が峠かと」
「なにがなんでも助けよ!」
「最善は尽くしました、後は神の思し召しのままに」
何故だ、また、失うのか?母上のように?!
「にいちゃん………」
「?!」
オリビアがうわごとを言っている!にいちゃん?兄の事か?!
❪兄上❫、かつての幼少の頃のレッドの声とだぶる。
私はオリビアの右手を持ち、話しかける。
「兄は、にいちゃんはここだ!ここにいるぞ、目を覚ませ!オリビア」
オリビアはうっすらと青い目を開き、私を見て呟いた。
「に、いちゃ、かぞく、だいすき」ニコッ
ドクンッ、
な、なんだ?!胸がくるしい?笑顔?わ、私に笑顔だと?かぞく、家族?、家族?!!だいすき?大好き?!!
ガクッ気絶した?!
「オリビア!しっかりしろ?そ、そうだ、にいちゃんだ、にいちゃんはここにいるぞ!」
「オリビアーっ!」




