解放(マリン視点)
「いつか言おうと思っていたけど、本当にあなた、デリカシーがない大馬鹿野郎ね。あの子がこの数日でいっぱいいっぱいだったの、気が付かないなんてね?」
私は泣きつかれたように眠っているリンちゃんをベットに運ぶレッドに付き添いながら、ブラックを睨んだ。
「………すまん、反省している」
「子供達の胸に宝玉が仕込まれている。宝玉は常識的に世界でもっとも硬い鉱石っていわれていて、だから壊すのは普通は無理。リンちゃんは知らなかったようだけど」
私は、ため息をしてから皆にいう。
「とりあえずは、私とマデリン、カル君、タン君だけここに残ってあとは一旦、部屋から出ていく。ああ、誰か、侍女に飲み物をほしいって伝えて。なんだか喉が渇いたわ」
リム、シン、ブラック、が部屋から出ていく。
「ほら、あなたも、大丈夫だから後は私に任せなさい」
出ていくのを躊躇しているレッドに、私は出ていく事を促す。
「……………」
レッドはリンを少し見つめていたが、振り返って出ていった。
私はタン君に向き直る。
「さて、タン君、君はまだ能力をかくしてるかな?」
タンは俯いていたが、パッとマリンを見て言った。
タン「ごめんなさい、実は元々、近くなら念話が妹のミンと出来ていたんだけど、さっき念じたら繋がったの」
「!」
カル、マデリン「!」
タン「あと、さわってわかったんだけど、その人の能力がわかるみたい………」
「なるほど、そんな力があれば怖がられる、だから黙っていたのね?」
タン「うん」
カル「なら、おれの能力をみてくれ!まだどんな力かわからないんだ」
「たのめる?」
タン「うん、やってみる」
タンはカルの手をとって、しばらく目を瞑る。
数分後、目を開けたタンは皆に言った。
タン「直接または間接に触ったものを❪破壊❫する力」
「「「「!」」」」
リンレイ「本当に?!、カル君、その力を使えるならお願いだ。子供達を」
バタッ
目が覚めたリンちゃんが、ベッドからズリ落ちて床に倒れる。
「リンちゃん?!」
マデリン「リン様!」
カル「リン!」
タン「お姉さん!」
私とマデリンがリンちゃんを支える。
リンちゃんは、そのままカルにすがりつく。
リンレイ「お願い、カル君!僕にできることならなんでもするから、だから子供達を、子供達を助けて」
カル「?!リンっ!わかった、わかったから!」
ポロポロ涙を流して懇願するリンちゃん、かなりまいってるわね。
これでカル君の力で治せなかったら、不味いわ。
カル君は一番近くにいた茶髪の子の手を取り、目を閉じる。
私達が固唾を呑んで見守る。
カル「………感じる……硬い物、あ、判るけど、この後は?」
タン「あたまに次になにをすればいいか、おもいうかべて」
しばらくして、カルが急に右手を拳にして子供の胸に合わせる。
カル「砕けろ!スターブレイク」
カッ、パキン
カル君の右手がオレンジ色に輝き、何かが砕ける音がした。
「「「「!!」」」」
「ここは?」
そこにはなんども瞬きをして、回りをキョロ、キョロさせている茶髪の女の子がいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今、タンから念話がきた。すごい、カルさんが星魔法使いになったって!」
「本当に?」
「うん、あとタンもだって!」
「はゎーっ、なんかみんな出世しちゃって」
メイサは、お菓子をポリポリ食べながらミンの話しを聞いていた。
ここはランス王国王都の騎士宿舎。
グリンとイエルの案内で、皆はランス王国王宮に来ていた。
「そんで?ポリッ、リムは?まさか」
「だめだったみたい」
「だよねぇ、あれが英雄だったらあたしは聖女になっちゃうよ」
「え?…………」
「どうしたの?ポリッ」
「…リムさん、魔法使いになってたら……」
「?なってたら?ポリッ」
ミンが顔を赤らめて言った。
「ご褒美に聖女様に、エッチな事をお願いしようとしてたみたい…」
パキッ
メイサは、思わず大きめの菓子を両手で真っ二つにした。
「あのばか!」
「それとメディさん?無事、助けられたって」
「え、本当に?やったーっ、これで皆と合流できたら依頼達成だね!」
「……!ただ問題が」
「問題?」
「メディさん、記憶喪失だって」




