監禁 (レッド視点)
リンレイ「ねぇ、だれかいないの?!」
「…………………」
ドアの向こうでリンが呼んでいる。
だが、応えることはできない。
これ以上、リンが血を流す行為を見過ごすわけにはいかない。
たとえ、彼女に罵倒され憎まれるとしても。
俺はドアに背中をつけたまま、その場に座りこんだ。
ドンッ、ドンッ、ドンッ
リンレイ「ねぇ、鍵が間違ってかかちゃったみたい!誰か、お願い!開けてください!」
「……………………」
俺は英雄失格だ。
一人の少女を助ける為に四人の子供達を見殺しにするのだから。
だが、今はそれでいい。
彼女を守る為なら俺は鬼畜に堕ちてもかまわない。
ふと、見るとカルとタンが立っていた。
二人は俺の目を見ると、ゆっくりと頷き俺の左右に座った。
どうやら二人は俺と同じ考えの様だ。
俺は小声で二人に言った。
「止めておけ、彼女に憎まれるのは俺一人でいい」
カル「あんた一人にそんな役目を背負わせるわけにはいかない」
タン「ずっといっしょ」
「……………………」
どうやら覚悟は固いようだ。
しかたがない。
ドン、ドン、ドン
リンレイ「お願いいたします。誰か!、マリンちゃん、シンさん!、ブラックさん!」
「「「……………………」」」
リンレイ「マデリンさん、リム君!」
「「「………」」」
リンレイ「カル君、タンちゃん!」
「「!」」
「…………………」
リンレイ「レッドさん!!」
「っ!」
最愛の少女が俺を呼んでいる。
応えられないのが、胸に苦しい。
リンレイ「誰か!誰か!誰でもいいからここを開けてよ。早く子供達の所へ行かせてよ、でないと、子供達が死んじゃう!」
カル「レッドさん、リンが泣き声に…………」
タン「お姉さん」
「くっ!」
俺の手が震える。
ドアノブに目をやってしまう。
リム「あんたら、なにしてんだ?」
ブラック「………………」
突然に声をかけられた。
見るとリムとブラックが立っていた。
リンレイ「あ!その声はリム君?!お願い、ドアに鍵がかかってるみたいで開けてくれる?」
リム「あ?ああ、今、開けてやるよ、って、?!な、なに、レッドさん!」
「っ!」
俺はドアに近づくリムに、思わず槍を向けた。
リンレイ「レッドさん?レッドさんもいるの?」
カル、タン「「!」」
「近づくな」
ブラック「やめろ、レッド!気持ちは分かるが早まるな!」
ブラックが前に出てくる、俺は槍を構えた。
リンレイ「な、なにがおきているの!?」
「ここは誰も近づかせない」
ブラック「ソードミスト」
シュウゥゥッ
左右に広げたブラックの手に黒い霧が集まり、黒い剣が出来上がる。
「ブラックの剣を見たことがなかったが、双剣使いだったとはな」
ブラック「ふん、見せる機会がなかっただけだ」
その瞬間、ブラックの姿がブレた。
ガキィンッ
一瞬で間合いを詰め、槍を横にして防ぐ俺に肉薄する。
ブラック「槍は間合いを詰められたら終わりだ」
「くっ!」
カル「ブラックさん、待ってよ!」
リム「な、なにがどうなって!?」
タン「っ!」
リンレイ「戦ってない?ちょっと誰か、説明をしてほしいんだけど」
ブンッ
俺は力まかせに槍を押し上げる。
ブラックはステップで間合いをとる。
マリン「貴方達!馬鹿なの?止めなさい!!」
ふと見るとマリンの結界が、俺とブラックを閉じ込めていた。
ここまでか、俺は槍を降ろし、ブラックは剣を霧に戻した。
マリンがドアノブに手をかけた、俺は反射的にマリンに詰め寄るが結界に阻まれ進めない。
「やめろ、リンを殺す気か!」
マリンは俺をキッっと睨む。
マリン「あなたはそこで、頭を冷やしているといいわ」
ドアを開けたマリンはそのまま部屋の中に入っていった。
「!………………」
ブラック「は、余興は終わりだな」
ブラックは床に腰を降ろした。
もう、この結界では何もできない、俺も床に座り込んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ドアが開いたと思ったらマリンちゃんに抱きしめられていた。
あれ?ドアの前にいたのってレッドだよね?!
「マ、マリンちゃん!子供達の所に行きたいんだけど」
「いいわ、いっしょにいくから。その前に聞いてほしい事があるの」
「子供達は?」
「落ち着いて、子供達は今、見てきて大丈夫だったから」
でも、安心できない。
急に呼吸が乱れる子がいたから。
マリンちゃんの事は信じているけど、今は一刻も早く子供達の所にいかないと!
「ごめん、マリンちゃん。やっぱり子供達の元に行きたい。」
「だから、落ち着いて」
「マリンちゃん、ちょっとどいて、ドアを開け」
パンッ
「え?」
なにがおきている?え?マリンちゃんがぶった?僕の頬を?なんで???
僕はマリンちゃんを見る、目に涙が溢れてる。
「リンちゃん、ごめんなさい。今のあなたはすごく動揺してる。落ち着きなさい。今のあなたは死に急ぐ兵士のようよ、見て!ミラースクリーン!」
マリンちゃんが魔法を唱えると、僕の前に大きな鏡が現れた。
この世界、鏡は貴重品な事もあり貴族でもない限りほとんど見る機会はなかった。
ふと、僕の姿が写る。
ボサボサの黒髪、ヨレヨレなネグリジェ、綺麗な青い目なんだけど、目の回りが赤く腫れてる感じで目の下にうっすらとクマがある。
透きとうる様な白い肌だけど、白過ぎて人形のよう、幼さを感じる凄い美少女なんだけど、これが自分だと思うとなんだかよくわからない。
ただ、昔に見たことあるような気がする。
この疲れた感じ、そうだ、僕が麟太郎だった最期の朝に洗面台の鏡で見た自分にそっくりなんだ。
「…………わかった、ごめんなさい。……僕、無理してたんだね」
「こっちこそ、はたいてごめんなさい。痛かったわよね?」
僕は首を振った。
マリンちゃんは僕の事を思っての行動だし、もしかしてドアの向こうの皆の騒ぎも?
「あのね、マリンちゃん。ドアの向こうの皆の騒ぎも僕の事で?」
マリンちゃんは、ふっ、て笑ってドアを見ながら少し?いや、かなり大きな声で言った。
「だいぶ暴走した馬鹿どもがいたけど、リンちゃんは気にしないでいいのよ。後でたっぷりお灸をすえるから」
マリンちゃん、薄笑いしてるだけなんだけど、なんか部屋の温度が下がった様な?!
ガタッ、ガタン
ドアの向こうで音がしたけどその後、静かになったな、大丈夫かな?
「それでね、女神神殿の神殿長から魔道レターで連絡があったの」
「女神神殿、向かう予定だった?」
「そう、それで神殿に神託が降りたそうよ」
「神託?!」
マリンちゃんは一息いれると、その金の目で僕を見つめた。
「あなたの❪星の巫女❫の力で今一度、星の力を発現させる事。星魔法候補は貴女の近くにいる。そしてその新たな星魔法使いこそ、子供達の病を治す事ができると」
「!!それって?!」
マリンちゃんは頷く。
「私達の中にその候補がいる」




