宝玉
エンペリア大陸中央山脈の中にエトナ山がある。
オリポス神の降臨したとの伝説の聖地であり、宝玉と呼ばれる宝石の産地である。
この宝玉、百年に一度の❪星降りの夜❫と呼ばれる流星群の後でないと見つける事が出来ない。
丸くて虹色、最大で一セムの宝玉、一度の流星群で見つかる宝玉は百個ほどである。
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「ほう、これが加工された宝玉か、なかなかに美しいな」
「はい、近年思うような入手が困難になりまして一セム級は当店ではこちらのみになっております」
ルケルは手に馴染むように手のひらで転がして眺めた。
「よかろう、買おう。代金は後程、領館に取りに来るがいい」
「ありがとうございます。では、私めはこれで」
宝石商が出ていく。
コン、コン
「入れ」
入れ替わりに一人の武官が入ってくる。
「すみません、だんな」
「殿下だ、馬鹿め!何度言ったらわかる?!」
ルケルは武官を振り向き、怒鳴った。
「殿下、すみません、見つけやした」
「!確かなのか?」
「へい、ただ」
「ただ?」
「見失いやした」
ダンッ、ルケルが銀髪を乱して机を叩いた。
「馬鹿め、そんな報告はいらん!」
「火の魔法使いと一緒でした」
「!っ、くっ、くっ、くっ、くははは」
ルケルは俯むき、髪を振り乱しながら笑いだした。
「?」
「そうか、そうか、あやつがいたか!なら、間違いないな、ははは!」
ルケルはしばらくして平静を取り戻し、武官を見た。
「奴から女を奪え、これを」
武官はルケルから、首輪のような物を受け取る。
「これは?奴隷の首輪ですかい」
◆(奴隷の首輪、命令に従わないと痛みが続く)
「もっと強い、隷属の首輪だ。」
「ヒューッ、御宝じゃあないですかい!」
◆(隷属の首輪、意思を奪い思うように操れる)
「そうだ、宮廷魔術士に作らせた。だが、意志の強い人間は操れん。そのかわり」
ルケルは机の引き出しから、腕輪のような物を出した。
「これは意志伝達の魔道具だ。その首輪と組になっている」
「へえ、そんでどうしやす?」
「お前達に依頼した魔獣捕獲の件だ」
「?へえ、島には言われた通り生きた魔獣を送りやしたけど」
「まだ、送っていない魔獣がいるだろう、ええい!わからん奴だな!」
ブンッ、パシッ
しびれを切らしたルケルが腕輪を投げ、武官が受け取る。
「おっと!だん、殿下、壊れちまいますぜ。わかりやした、これで魔獣を操れるってことで」
フーッ、「やっとわかったか、一つしかない!一番強い魔獣に使い襲わせよ。その間に女を奪うのだ。奴は城に適時に連絡しているはず、すぐに位置は知れる」
「最近捕まえた奴にしやしょう、人懐っこい魔獣で簡単に捕まえやしたが本来は強い魔獣で」
「どんな魔獣だ?」
「ジャイアントベアー、それも成獣でさ」
「災害級か、よく捕まえたな?」
「へえ、信じられねんですが、どうも人に飼われてたぽいんで、この人形をみせたらおとなしく付いてきやして、今はオリに入ってやす」
「ほう?」
ルケルは人形を受け取る。
それは、三頭身リン人形だった。
「それで女を捕まえたら予定通りギガールに送るんで?」
「知らん」
「へ?いんですかい」
「こっちは結果は出している、それに老人のおもちゃにはもったいない」
「へへ、まったくで」
隷属の首輪が怪しく光った。
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「幽閉?!どういうことなの?」
獣人A「お気を確かに、ミンさま」
ここは裏町のとある食堂の地下室、そこにミンとメイサはいた。
獣人A「急進派の反乱です。首謀者はマンダム伯爵です」
「お父様とお母様が!」
メイサ「ミンさま?の父ちゃんと母ちゃんだから王様とお妃様か、二人が牢屋に入れられたって事?!」
獣人A「そんなことあるか!後宮に閉じ込められたのだ」
「………早くダンケ兄さんを見つけないと」
ガヤガヤガヤ
獣人A「?なんでしょう、上が騒がしい」
バタンッ、いきなり地下室のドアが開いた。
「「「!」」」
ダンケ「ミン!」
「ダンケ兄さん?!」
そこには銀髪、碧眼、狼耳のイケメンがいた。
ミンとダンケは抱き合う。
「よかった、あの時に捕まって別れてからずっと心配だったの」
ダンケ「すまなかった、助けに行って捕まった私を許してほしい」
「ううん、とにかく逢えてよかった」
A獣人「王太子殿下!よくご無事で、どうやってここまで?」
ダンケ「彼らに助けられたのだ」
ダンケが振り向いた先には、グリンとイエルが立っていた。




