王国の城へ潜入、暗躍しちゃうよ⁉ って言うとカッコイイけどその顛末は?
「おやつの時間だ」
と、ぽこざる。ひこざるは、らっぱえびせん持ってきた。
2匹で均等に分ける。どう見ても、ぽこざるの方が多い。ひこざるはため息をついた。
おやつが終わると、ぽこざるが、
「カラオケ行こうよ」
とひこざるを誘った。どうせやることもないから、ひこざるは付き合った。
最初にぽこざるが歌う。
とんでもない声だ。ガラスが割れて壁にひびが入った。それでもぽこざる、歌い続ける。でたらめの歌を。
ひこざるは耳が爆発して、逃げ出した。そのとたん、カラオケボックスがほうかいした。
ほろびの歌だ。やっと歌い終わったぽこざる、今夜もひこざるんちに泊まる。
そして朝。めずらしく早起きだったぽこざるは、ひこざるの耳を引っ張って、料理長の家が見えるとこまでやって来た。
料理長が家を出た。
丸見えの落とし穴をよけて、ひもをまたいで、くぐって、橋まで来た。
ぽこざるの目玉がにょきーとのびて、口が足の指までがーと開く。なにせ、がんばって仕かけたイタズラを、いとも簡単に突破されてしまったのだから……。
「まだ、イタズラは残ってるぞ!」
と、どこからか持ってきたのこぎりで橋を切ろうとした。
石の橋だった。これじゃあ、切れるはずがない。
仕方がないから、タルを積み重ねたところに行って、タルをけとばした。
坂道じゃない。タルが転がらない。意味がない。
ぽこざるは、がっくりと、肩を落としてしまった。そして、大声で泣いた。
「ううぇええええん‼」
周りの木が根こそぎ飛ばされる。ひこざるも飛ばされる。周囲の家もふっ飛ばされた。
そのまま夜になった。また、涙の川になったらたまらない。
ぽこざる、泣くのをやめて、料理長の家に向かう。
マジックで、家に落書き。
料理長の上品な家は、おさる王国一の下品な家に変身した。
最後に、昨日書いた画用紙をガムテープではりつけた。
『悪のぽこざるのせいで、料理長は恐怖のどん底に!』
次の日から、ぽこざるは近くの川へ行って、そこにある丸い石にツバをはくのが、くせになった。
だれもわけを知らない。ひこざるは気になって仕方がない。
ある日、ぽこざるについて行って、わけをきいた。が、教えてくれない。
そのうちに日が暮れてきた。ぽこざるが帰ろうとしたので、ひこざるも続く。
ところが、ぽこざるは帰るのではなく、近くのしげみにかくれた。ひこざるは、わけがわからない。
そのうち、なんと料理長がやって来た。
ぽこざるが、やっとわけを教えてくれた。
「料理長の家に落書きしたときにね、窓からね、いっぱい、まん丸の小石が見えたんだよ。料理長の趣味は、きっと丸い石を集めることなんだよ。だから、料理長の集めそうな石にツバはいて、イタズラしてるんだよ」
やがて、料理長は懐中電灯で、あたりを照らし始める。いくつか小石を拾った。全部、ほぼ丸い。
ぽこざるがツバをはいた石も拾ったようだ。
「よかったね、ぽこざるくん……」
ひこざるが横を見ると……。
「うひゃあああ、オバケだあ!」
夜中なのに、とんでもない大声で悲鳴をあげた。あまりの大声で、料理長はビックリぎょうてん、逃げ帰ってしまった。
しかしよく見ると、それはオバケではなく、幽霊のような顔で笑っているぽこざるだ。
ひこざるはこしを抜かして、
「もう、びっくりさせないでよ」
と、べそをかいた。
そんなことがあった次の日、なんだか知らないけど、
「ひこざる、ぼく、お城に行ってくるよ」
と、ぽこざる、潔く言った。
「でも、クビになったんじゃ……」
「いつも料理長に直接イタズラしてないでしょ? たまには、痛い目にあわせてやんないと!」
「どうなっても知らないよ?」
ひこざは行きたくないようだ。ぽこざるは1人で、お城への道を歩き出した。
こけた。
「わーんひこざる、痛いよーう!」
ひこざるはあきれて、
「あんなんで大丈夫かな」
とつぶやいた。ぽこざるは、手をふってかけ出した。
途中で、道が横断歩道に変わった。信号は赤。トラックが止まっている。
なんと、お城に食材を運ぶトラックだ。
悪のぽこざる、トラックにしがみつき、屋根の上にのぼって、ニヤリ。
そこにマジックで、『悪のぽこざるのせいで、料理長は恐怖のどん底に!』と書きこんだ。犯行予告というやつだ。
楽にお城までたどり着いた。
トラックのサルとお城のサルにまぎれて、お城に侵入。
そのまま更衣室に。背の低い、掃除のおじちゃんに化けた。
そして、調理室に向かう。
なつかしさがこみ上げてきた。でも、今はそんな場合じゃない。
「えー、料理長はどこに行かれたかな」
ちょっとしゃがれた声で、コックの1人に質問。
「今、トイレだよ」
ぽこざるはトイレに突進した。
料理長発見。
バケツに水を入れて、料理長に、バシャああああっとぶちまける。
すばやく逃げる。
料理長、びしょぬれ。
「い、いったい何だ?」
と、ハンカチで体をふいて、しぼって、またふいている。しまいに、料理長室にかけ込んで行った。
新しい服に着がえて出てきた。それから調理室へ。
ぽこざるは料理長室に侵入。
料理長のバックの中身を全部ひきずり出す。壁にかけてあるぐしょぐしょの服を代わりにつっこむ。
あげくのはてには、料理長室の中で暴れ出した。
しばらくすると、料理長室の前にお城のサルたちが集まりだした。
「やばっ」
ぽこざるは、窓から外に出た。トイレの窓から再び侵入。大成功。
そのまま、今日のこんだて表を探した。
調理室の前にあった。シチュー定食になっている。タコ焼き1つに書きかえた。
そのうち、料理長室がめちゃくちゃなのが騒ぎになりはじめた。
しかも窓が開きっぱなし。これはお城の外のサルのしわざだ、ということになっている。
料理長室に近よってみた。料理長が話している。
「こないだ、私の家に落書きがしてあって、どうやら、この前クビにした、ぽこざるのしわざのようなんですよ。きっとまた、ぽこざるかもしれません。なんてったって、城の外のサルですもんね」
最強にマズすぎる。
もう、十分復しゅうもした。おさる王国から立ち去ったほうがいい。その方が、だんぜん安全だ。
ぽこざるの考えはすぐに決まって、またトイレへ向かう。
窓から出る。
掃除のおじちゃんの服をぬぎ捨てて、お城から逃げだす。
そのままひこざるの家まで走る。
そして、ひこざるにわけを話した。
あっさり運命共同体になってくれたひこざる。
2匹は、必要なものを準備して、浜辺に向かう。
いかだを作り、大海原に乗りだした。
クジラのじいさん、現れた。
ぽこざるがわけを話す。
じいさんは大口開けて、中に入れてくれた。
ぽこざるは、愛用のマジックで、持ってきたメモ帳の最初のページに、『悪のぽこざる日記』と書きこんだ。
「このメモ帳、ぼくのイタズラ日記にするんだ」
ごきげんだ。
2匹はあらためて周りを見わたした。天井の高い洞くつという感じ。このじいさんは歯がないらしい。いかだは、舌の上に乗っかっていた。
悪のぽこざるは、親友のひこざると、クジラのじいさんとともに、旅立った。